参戦猫次郎!
ヤングのお願いにより、猫次郎はヤングと一緒にフィリを翻弄するために偽ダンジョンへ向かった。
「俺の活躍を見てろにゃ!」
「それじゃ、猫次郎さんよろしくお願いします。この先は罰ゲーム落とし穴エリアですから、沢山落とし穴に落としてやってくださいね」
「分かってるにゃ、俺にかかれば10個以上穴に落としてやるのにゃ!」
「それでは、頑張ってくださいね」
「ふっ、言われるまでもないにゃ」
猫次郎はヤングと別れて1匹でフィリに近付いた。
「あっ、そこ落とし穴でござる」
「おっと、ここ落とし穴多すぎないか?」
フィリはシャドウのお陰で落とし穴を次々に飛び越えていた。
「ここは、罰ゲーム落とし穴エリアですから、沢山の落とし穴が作られているでござる。そして、その落とし穴に落ちてしまったら、罰ゲームを受けないといけないのでござる!」
「罰ゲームって何やるんだ?」
「そこの落とし穴はカストル先生が考えた罰ゲームで、確か、問題にクリアしないと出られないって言ってたでござる」
「それじゃ、さっき飛び越えた穴は?」
「あれは、拙者の落とし穴で、忍術を10個言えないと出られない罰ゲームでござる」
「なら、あの穴に落ちても余裕だったってことか」
「余裕? もしや、フィリさんは忍術を知っているのでござるか!」
「いいや、枝と一緒に落ちるわけだから、枝に答えさせればいいだけだろ」
「あー、あの、拙者の名前はシャドウでござる。枝呼びは悲しくなるでござる」
「シャドウより枝に改名したらどうだ?」
「枝なんてカッコ悪いでござる!シャドウの方がかっこいい!」
「そうか? あたしは言いやすいけどな」
「枝と呼ばれて嬉しい人なんていないでござる!」
すると、後ろから誰かが二人に話しかけてきた。
「にゃにゃにゃ! 俺にひれ伏せにゃ!!!」
フィリは後ろを向くと誰もいなかった。
「誰もいないじゃないか」
「どこ見てるにゃ、下にゃ下」
「ん?下?って、うわっ!あたしの足に擦り付くな!」
猫次郎は女性には必ず足元に擦り寄る癖があり、フィリの場合でも例外ではなかった。
「にゃ〜、にゃかにゃか綺麗な足だにゃ〜」
「こいつ、もしかして、魂猫か?」
「にゃ? 俺を見ただけで俺の種族名がわかるのかにゃ?」
「そりゃあ、あたしは冒険者と鍛治師だから、魔物の知識は他の奴らよりも知っていなきゃいけないからな」
「そうにゃか、そうそう、連れを置いて先に進んでも良かったのかにゃ?」
「景雹なら七福って言うのがついてるらしいから大丈夫だって枝が言ってた」
「枝じゃない! シャドウでござる!」
「シャドウ、何もかも話すんじゃないにゃ。主人様がシャドウの宿題10倍に増やすって言ってたにゃーよ」
「じゅっ、10倍!? 嫌だ! 宿題増えるのはいやでござるうぅう!!!」
「ベラベラ話すのか悪いのにゃ」
「えーと、それって、さっきまで話してたのは真実だってことか?」
「そうにゃ、会話はすべて聴こえるようになっているのにゃ」
「もしかして、嘘の情報はなかったのか?」
「にゃいにゃ、全部、真実であり、主人様が頭を悩ますぐらいの情報をベラベラ喋ってたのにゃ」
「おい、枝、忍者になるなら、口が固くないとだめだぞ」
「拙者は忍者でござる! 嘘をつくなど、忍者らしくないでござる!」
「枝は忍者向いてないよ」
「そんな事ないでござる!」
「にゃ〜、それで、俺がきた理由は君を罠に嵌める役なのにゃ!えい!」
猫次郎はフィリに体当たりした。そして、フィリは体勢を崩し、足元にあった落とし穴に……。
そもそも、猫次郎の体当たりをくらってもフィリは体勢を崩したりすることがなく、体当たりしようとした猫次郎をフィリは避けて、猫次郎は落とし穴に落ちてしまった。
「にゃ!にゃんで!!!!!」
「急に飛んできたかと思ったら、あたしを落とし穴に落とそうしたな。そこで反省でも、あー、でも、魂猫は珍しい魔物だからな、ここで逃すのは勿体無いか」
「勿体にゃい? それよりも助け出すのにゃ!」
「仕方ない、枝行くよ!」
「降りるのでござるか? 猫次郎は洞窟内でも屈指の嫌われ者でござるよ。相手にするよりも先に進んだ方がいいでござるよ」
「枝はどっちの味方なんだよ」
「拙者は自分の身の安全が第一でござる!」
「やっぱり、枝は忍者向いてないと思うぞ」
そして、猫次郎を助け出す為に落とし穴に落ちたフィリとシャドウは落とし穴の罰ゲームに挑戦するのでした。
一方、未だに鏡の迷宮を攻略している景雹と七福は、景雹がやる気をなくして床に座ってしまった。
「ゔぅ、我もう歩けない」
「景雹! 歩かないとここから出られないよ」
「フィリが我の事を助け出してくれるもーん」
「ねぇ、本当にフィリさんの夫なの?」
「フィリの夫は我だ」
「でも、今の所、景雹の良いところないんだよなぁ。すぐに歩きたくない、助けてー、って、僕がフィリさんなら、夫がこんなに情けなくて、嫌になると思うんだけどなぁ」
「情けない、嫌になる。我とフィリの愛は本物なんだ!」
「そう? それじゃ、景雹はフィリさんが迎えに来るまでここで待ってればいいよ。僕は先に進んでるね」
「え、待って、我を置いていくのか?」
「だって、もう歩けないんでしょ。フィリさんが迎えにきてくれるならそこで待ってれば良いよ。僕は一人で楽しく鏡の迷宮攻略するからじゃあね」
七福は景雹を置いてその場から去ってしまった。
「我、もう、疲れた。フィリなら助けてくれる」
景雹は座り込み、フィリが迎えに来てくれるのを待ち始めた。
七福は景雹から見えない位置で彼を見ていた。
「うーん、座り込んじゃったかぁ。あれだけ言われたら、腹が立って歩き始めると思ったんだけど、逆効果だったかぁ。でも、どうやって尻を叩けばいいんだろう? 景雹が好きなのはフィリさんぐらいしか分からないけど、うーん、よし、これなら、立ってくれるかも!」
七福は景雹の元に戻った。
「景雹! 僕、出口見つけたんだけど、フィリさんがイデアお、さんに話しかけられてたよ」
「イデアお? 誰だそいつ」
「イデアお、さんはとてつもなくイケメンな人なんだ」
七福はイデアとは面識がなく、クティスとなら、よく遊んでいた。だが、この場にイデアの名前を出した理由は、この一枚のブロマイドを見せる為であった。
「こんなカッコいい人に話しかけられたら、頬を赤く染めちゃうのも分かるなぁ」
七福はイデアが獣人のコスプレをしたブロマイドを見せた。
「なっ!? イケメン!? え、本当にこの男とフィリが話していたのか?」
「そうだよ。今日主人様に会いに来ていたんだけど、まさか、フィリさんを口説くなんて僕、驚いちゃったよ。こんなイケメンに口説かれたら、夫がいる人でも、いや、情けない夫がいる人なら余計心移りしちゃうよね」
「そ、そんな、我が一番なのに、こんな顔だけのイケメンなんか我が氷漬けにしてやる! 七福! 我をフィリの元へ案内してくれ! くそぉ!我よりイケメンは氷漬けにしてやる!!!」
「うん! 僕についてきて!」
こうして、七福の手によって景雹は無事に鏡の迷宮をクリアすることが出来たのでした。
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