お喋り枝とドワーフ
フィリは案内人の枝を手に入れ、鏡の迷宮の出口まであと少しの所まで来ていた。
「魔蟲の森と魔蟲の洞窟は同じ主が支配しているのね」
「そうでござる、主人様はなんと異世界人なのでござるよ!」
「へぇー、それで、他には?」
「主人様は凄いでござるよ、考えた物を作り出す想像生成というスキルを持ちなのでござる!」
「ねぇ、さっきまで忍者だから情報は話さないでござるとかなんとか言ってなかったっけ? 勝手に主の情報話していいの?」
「大丈夫でござる。知られたとて、お主が主人様に勝てるわけないでござるからな」
「まぁ、話を聞くと色々と凄いわね、結魂なんて久しぶりに聞いたし、想像生成だっけ? そんなスキル鍛治家なかせじゃない」
「主人様が作る武具は最強でござるからな! あらゆる魔法付与を考えただけで武具に付与可能!」
「本来なら何年も魔法技術を学んでからじゃないと出来ないんだけどな」
「お主は鍛治師なのにどうしてこんな場所に来たのでござるか? もしや! 魔石を掘りに来たのでござるか!」
「魔石があるのか?」
「そりゃもう! 魔蟲の洞窟には大量の魔石があるでござる。しかも、とても珍しい精霊、魔石精霊様が2体もいるのでござるよ!」
「ま、魔石精霊!? それって本当なのか!!!」
「やけに食いつくでござるな、拙者がこの状態で嘘を言うわけないでござるよ」
「まじか、うわっ、まじかぁ、なぁ、魔石精霊を見てみたいんだけど、何処に行けばいいんだ?」
「ア様に会いたいなら、主人様の家に行けば会えるでござる。氷月様なら、人間の国に行けば会えるでござるよ」
「人間の国?もしかして、アスラスム国か?」
「うーん、多分、そうでござる」
「人間に捕まったのか?」
「いいや、奴隷となった魔人、亜人種を助けに行っているのでござる。拙者も虫人となったら、弱き物を颯爽と助けてあげたいでござる!」
「忍者は暗殺者なんだけど、そこは理解しているのか?」
「拙者は弱き物を助ける最強の忍者なのでござる!」
「ダメだこれ、あたしの話を理解していない」
「あっ、出口でござるよ!」
雑談している間に鏡の迷宮を攻略したフィリ達は次の罠へと向かった。
「次の罠は大量の落とし穴でござる。その後は遊園地があって楽しいでござるよ。拙者のお勧めはジェットコースターでござる!」
「遊園地?ってなんだ?」
「楽しい遊び場でござる! 拙者は学校が終わったらよく七福とヤングと一緒に遊びに行くでござる。まぁ、ヤングは罠作りばかりやって一緒にあまり遊んでくれないでござるが、ヤングが作る罠は面白い物ばかりでござる!」
「ヤングっていうのが罠の元凶なんだな」
「えーと、まぁ、そういうことでござるな!」
「じゃあ、ヤングって言うのを締めれば簡単に出られるってわけか」
「ち、違うでござるよ、ヤングは罠を作っているだけで、この洞窟を支配しているのは蝋梅妃様でござる」
一方、モニターで侵入者を確認していた主人様達は、シャドウが何もかも話しているので、どうやって口を閉じさせるか悩むはめとなった。
「シャドウ何もかも話しはじめちゃいましたね」
「はぁー、シャドウには宿題を10倍に増やして欲しいってカストルさんに話さなきゃ」
すると、主人様と真白の前に猫次郎とガールゥダがやってきた。
猫次郎はガールゥダの手から逃れようと足をバタバタさせて抵抗しているが、ガールゥダに効くわけがなかった。
「にゃ!悔しいにゃ!!! カワネコちゃん写真なんかいつの間に持っていたのにゃ!」
「とある蜘蛛から買い取った。あの蜘蛛は頭がキレる蜘蛛だな」
「くそぉ、後でそいつを踏み潰してやるにゃ!!!」
「女よ、このクソ猫がトイレで糞をしなかった。このクソ猫に罰をやってくれ」
「猫次郎、またトイレでしなかったの!」
「にゃ〜、ちゃーんと、ガルガルの足に入れたから大丈夫にゃ!」
「そういう事をするから、ガールゥダさんに嫌われるのよ」
「スケルトン達は全員、俺のトイレだからにゃ」
「やはり、このクソ猫は地中深く埋めた方がいいな」
「にゃ!!!!! やめろにゃ! 俺がいなかったらお前はずっと動かない骨のままだったにゃーよ!」
「それがどうした、クソ猫のお守りをするぐらいなら、戦士として死んだ俺のままでよかった」
「まぁまぁ、ガールゥダさん猫次郎を離してあげて、罰はそうねぇ」
主人様が猫次郎の罰を考えている時、ヤングがやってきた。
「主人様、主人様、お願いがあるのです」
「ヤング、どうしたの?」
「シャドウじゃ何もかも話してしまうので、罠が全て発動しない可能性があります。なので、あの少女を怒らし、翻弄できる人の手助けが欲しいです!」
「怒らせて、翻弄できる人? そんな、適任者いるかしら?」
ヤングはガールゥダに捕まっている猫次郎を見た。
「猫次郎さん、その役を受けてくれませんか?」
「ん? 俺がやるのかにゃ?」
「そうです。猫次郎さんなら、あの少女を激怒される事など容易であり、ましてや、少女を翻弄する事など朝飯前じゃないですか」
「それって、俺が、普段人を怒らしているような物言いだにゃ」
「事実なのでは?」
「そんにゃ事ないにゃ、俺は人を怒らせたり、からかって遊んだりしないのにゃ」
「カストル先生をいつもからかっていますよね? ガールゥダさんにはいつも怒られていますし、他にも、バーン、真白、黒常などにもよく怒られていますよね?」
「真白と黒常はからかいやすいのにゃ〜」
「真白、やっぱり、あいつ嫌いです!」
「にゃ、にゃ、にゃ、叶うはずのない夢を追いかけ続ける弱者をいたぶるのが楽しいのにゃ」
「やはり、猫次郎さんは最低なゴミクソ猫ですね。やはり、今回の役に適任ですね」
「どうして、お前にそんな悪口言われなきゃいけないのにゃ!」
「悪口ですか? 私は褒めた、だけなんですが」
「褒めた? いや、悪口だにゃ」
「いや、クソ猫には十分な褒め言葉だな」
「そうです! ヤングもっと褒めてあげてください」
「そうですか? なら、猫次郎さんは」
「やめろにゃ! 直接言われるの嫌な気分になるにゃ! 分かった、やるにゃ! やってやろうじゃないかにゃ!」
こうして、猫次郎はヤングの手助けをする事となったのでした。
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