偽ダンジョンの侵入者
私は金色丸に案内させた女の子と男の二人組の宿に向かってあけぼのに乗って洞窟を移動していた。
「あけぼの今日もありがとうね。そうそう、この前のレースかっこよかったわよ。最終コーナーでの怒涛の追い上げは凄かったわ。まさか、まさかの、5人抜き! 圧巻だったわ」
「そ、そんな、主人様にそこまで褒めてもらえて、嬉しいです」
すると、蝋梅妃から思念が送られてきた。
『主人様!!! 主人様!!! 初めての偽ダンジョンの侵入者が現れたのじゃ!!!』
『侵入者!!! ねぇ、その侵入者の特徴はどんな感じ?』
『女の子と黒い装いを纏った男じゃ、今は最初の罠である。主人様考案の洞窟と言ったら大岩ゴロゴロよ!が出迎えておりますのじゃ』
『その罠名どうにかならないかしら? ちょっと、恥ずかしくなってきた』
『それは出来ぬ。我がもうその罠名であの地に刻んでしまったからの』
『上書きは出来ない?』
『不可能じゃ』
『そうかぁ。そうなのかぁ……。で、もしかして、その女の子大きなハンマー持ってない?』
『えっ! 我が女の子が武器を持っていると伝えようと思っていたのに、主人様はもしや、未来を見通す力を持っているのじゃ!?』
『それが、金色丸が倒そうとした敵に絶華ちゃん所の式神の豚ちゃんが男の方を守ったみたいなのよ。だから、その理由を本人に直接聞こうと思って森の町に向かってたんだけど、まさか、偽ダンジョンに挑むなんて、思いもしなかったわ。ちゃんと看板立てたんだけどな』
『でも、あの文言だと、返って実力を示す為に入ってしまうのではないのじゃろうか?』
『そう? それじゃ、入り口の看板撤去してくれる?』
『かしこまりましたのじゃ。で、この侵入者はどうするのじゃ?』
『丁度いいから偽ダンジョンの最初の侵入者という事で、思いっきり罠に嵌めてあげましょうか。あっ、殺しちゃダメだからね』
『分かっておるのじゃ、主人様も観戦します?』
『そうね、巨大モニターに映そうからしらね』
『そしたら、蟻達に撮影機材を準備させますのじゃ』
『よろしくね』
そして、蝋梅妃と話終えた後、私はあけぼのにUターンして家の近くにある巨大モニターに向かった。
あけぼのから降りてモニターを確認すると、そこに映っていたのは、女盗賊みたいな格好をした女の子とお坊さんみたいな格好の男が転がる大岩から必死に逃げていた。
「よかった、まだ序盤の罠だ」
「あっ!主人様! とうとう偽ダンジョンに侵入者が来ましたね! 真白も罠作り手伝いましたよ!早く、真白の罠に落ちてくれないかな〜ワクワク!」
「あら、真白、魔法の授業は終わったの?」
「それが、ムシムシレースじゃないのにモニターが付いたから、何を映しているのか気になってきちゃいました」
「それは、授業を途中でサボったってことよね?」
「カストル先生から了承を得てます!」
「ならいいけど、私と一緒に見る?」
「いいんですか!!! やったー!それじゃ、真白は主人様の肩に乗りたいです!」
「いいわよ。来なさい」
「わーーーい!!!」
私は真白に手を差し出すと、真白は私の手に乗って、腕をよじ登り、肩まで来た。
「そういえば、真白以外にも、モニターで偽ダンジョンの侵入者が来たって知った七福とヤングとシャドウが自分達も偽ダンジョンに向かうって言って出て行っちゃたんですよ。それで、真白も観に行きたいって言ったらカストル先生授業はやめにするって」
「カストルさん、後で愚痴を聞かなきゃって、映ってたのが偽ダンジョンって真白気づいてたの?」
「あ、いえ、あの3人が動き始めたから、なんかあるのかなって思って、そうそう!カストル先生の愚痴なら真白が聞くので、主人様は態々愚痴を聞かなくていいですよ! カストル先生の事は真白に任せてください」
「そう? なら、真白にお願いしようかしら、カストルさん私と話すのが嫌みたいでいつもフードを被ってでしか話した事ないのよ」
「そうなんですね! 後でカストル先生に伝えておきます! あっ、やっと二つめの罠にハマったみたいですよ!」
「確か、ヤングが考えた柔らか棒アタック! だっけ?」
モニターには柔らかい高さが違う2本の黄色の棒がグルグルと回転していた。そして、黄色の棒が男の頭を直撃、倒れて痛がっている男の尻を叩き、まぁまぁの痛さなので、男が立ち上がると、その顔に棒がクリーンヒット、そして、男はその場で倒れた。
女の子の方は棒を軽快に交わし、出口を探しているようであった。
「黒い服、全部棒に当たってますね!』
男はタイミングよくジャンプして低い位置の黄色の棒を避けたと思ったら、股にジャストヒット、そして、男は股間を手で押さえながら、また倒れたのでした。
「う、うわー、あれは流石に可哀想です」
「あははっはっは!!! もう、面白すぎる、まるでコントじゃない!!!」
私はコントみたいなやられ具合を見て爆笑した。
「あ、女の子が出口見つけたみたいですよ」
「本当だ、あれ、女の子が男の人を持ち上げてる!? しかも、大きい男性をお姫様抱っこしているのに、棒を全て避けているわ!!! あの子、何者なのかしら」
「すごい! 女の子がんばれ!!!!」
モニターの映像を見た虫達は女の子が頑張る姿を見て、女の子を応援する虫達が現れ、モニター前ではムシムシレース並みの盛り上がりとなっていたのでした。
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