ドワーフと鬼 魔蟲の森の町
金色丸に宿に案内された2人は周りの光景に驚いていた。
翼人達が奴隷となった人達を共に荷車に乗せて何処かへ運んでいるのである。他には宿の周りは奴隷だった人達が一時的に商いを行い、出店によって宿の周りは周りは小さな町のようになっていた。
「森の中に町が出来てる」
「フィリお腹すいたからご飯買おう! パンケーキって言うの我食べてみたい!」
景雹は勝手にパンケーキの屋台へ向かった。
「ちょっ、オラから離れないで欲しいだ」
「ごめんなさい、あのバカ連れ戻しに行ってくる」
「いや、腹が減ってたら仕方ないだ。よし、今回はオラが奢ってあげるだ」
「え? いいのか?」
「子供が腹を空かしているなら仕方ないだ。そうそう、甘いもの好き?」
「うん。甘いもの好きだけど」
「ならパンケーキ買ってくるだ」
金色丸はパンケーキの屋台でフィリと景雹の分のパンケーキを買った。
「立って食べるのは食べにくいから、あそこに座るだ」
パンケーキの屋台の前には机と椅子が並べられ、きちんと座って食べられるようになっていた。
「いただきまーす!!!」
「めっちゃ甘い匂い!!!」
「オラもこれ好きなんだ」
3人はパンケーキを頬張った。
「美味しい!!! この甘さが疲れた体に染み渡るぅうううう!!!」
「なぁ、このパンケーキの作り方教わってもいいか? 帰ったら作ってみたい」
「オラには作り方分からないから、主人様にお願いすればいいだ」
「その、主人様ってどんな方なのですか?」
「ブギィィィ!(優しい人だよ!)」
「オラ達を束ねる強い主人だぁ!」
「どうして、森の中に町があるんだ?」
「それは、人間の国で捕まってた奴隷を魔王軍に渡す為に宿とか主人様やオラ達が手伝って建てただ。そしたら、すぐに帰れない人達が暇だからって店を始めたんだ」
「へぇー、魔蟲の森はエンデューブとの交流があるんだな」
「エンデューブ? ってなんだ?」
「エンデューブは魔族の国の名前だけど、知らずに交流してたの?」
「オラは魔王軍しか聞いてないだ。そうか、魔族の国の名前はエンデューブなんだ。教えてくれてありがとうだ」
「どういたしまして、でも、こんな辺鄙な場所でどうやってエンデューブ側と接点ができたんだ?」
「それが、イデアおじちゃんが主人様の夫なんだ」
「イデア、イデアって八翼の一人、イデア・ラヴァーズ!?」
「そうだ。食べ終わっただね。よし、宿に行って主人様が来るまで休むだ」
「全ての女性の憧れ、イデア様の妻だなんて、我もこうしてはいられない、フィリ我と結婚しよう!!!」
「なんで、そうなるんだよ」
こうして、金色丸に宿に案内された2人は同じ部屋に宿泊することとなった。
「じゃ、オラは見回りに出るから、大人しくしてるだよ」
「金色丸さん、色々ありがとうな」
「どうってことないだそれじゃあ」
金色丸は森の見回りに向かい、2人は部屋で話し合った。
「景雹、この事をどうやってギルドに報告しよう」
「ありのままを全て話せばいいんじゃ?」
「禁足地には、魔族、亜人、虫型魔物が共存している町が出来ているなんて、言えるわけないだろ!!! そもそも、金色丸の様な新種の魔物の報告までしないといけないし、金色丸と人型の蜂の魔物のランクは最高ランクのS級確定だな」
「我だって、S級だもん」
「何に張り合っているんだよ。はぁー、今確認できたのは2人、だけだけど、それを束ねる主人様って言うのは、より一層強力な魔物に違いない。そうなると、はぁー、あーーーーもうーーー!!! なんて伝えればいいんだよ!!!」
「でも、主人様って人が悪い人じゃないって事はこの町を見れば分かるね」
「まぁ、そうだけどさ、イデア・ラヴァーズが認める魔物って事でもう大物だし、まぁ、女って言うのはこれで確定したけど、群れをなす魔物は基本雌が強い場合が多くてな、特に虫型魔物はそれが如実なんだ」
「まぁ、フィリも女性ながら強いし、女は強しってね」
「なぁ、景雹、主人様が来る前にこの町を調べたいんだけど、透明化をあたしにかけてくれないか?」
「え!? フィリ外に出るの!?」
「だって、このままここで、待っているのはあたしの性に合わないからね。それに、瘴気の匂いがするんだよな」
「瘴気? 我、何も感じなかったけど」
「もしかしたら、瘴気が発生しかけているのかもしれないし、その辺も確認したいんだ」
「うーーん。分かった、我も一緒に着いていく! で、留守番は零鐘よろしく!」
「ブギィ!?(俺なの!?)」
「零鐘なら主人様と面識があるみたいだし、来たら我に思念でいつでも伝えられるだろ」
「ブゥギィ(そうだけど)」
「それじゃ、フィリ! デートへ向かおうか!」
「デートじゃない!!! これは、仕事だ!」
景雹は自分とフィリに透明化の術と静音の術をかけて、2人は町を調査し始めた。
『フィリ〜、この町、道も建物も整っていて、過ごしやすそうな町だね。知らないものも沢山あるし、フィリ、ギルド辞めてここで我と一緒に暮らそうよ』
『まぁ、それも悪くないって思えるほどいい町だな』
『フィリ!!! 我の提案を受け入れてくれるなんて、やっぱり、フィリは我の事を好きなんだね!!!』
『いや、この町がいいだけであって、景雹は要らないから』
『そんな、我!傷ついた!!!』
『はいはい、ん?』
2人は町外れに行くと、町から森へと続く道があった。
『森の中に道がある。行ってみようか』
『え、流石に帰った方がいいんじゃ』
『まだ、零鐘から連絡来てないだろ』
『フィリって探検好きだよね。まぁ、そんなフィリも可愛いけど』
『なぁ、あっちに洞窟があるぞ』
フィリが指を指した先には洞窟があり、その入り口には、看板が立てかけられていた。
『ちょっと、気になるから行ってみよう』
『何々? この先、危険、腕に自信がある者しか入れないだって』
『この先、ほんの少し瘴気の匂いがする。もしかしたら、この先が瘴気の発生源なのかも』
『なら、フィリ戻ろう。洞窟に瘴気が発生するのはよくある事だし、もうそろそろ主人様が来るんじゃない?』
『でも、気になるんだよな。なぁ、少しだけ行ってみないか』
『えー、でも、危険って書いてあるよ。我、危険は嫌いだな』
『じゃあ、あたしが1人で行くよ』
フィリは1人で洞窟に入って行った。
『フィリ!!!あーもう、我も着いていく!!!』
こうして、2人は立て看板が立て掛けられていた洞窟へ入って行ったのでした。
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