鬼の相棒
「はっ! フィリ!!!」
ベッドから飛び起きた景雹は辺りを見渡し、自分の部屋のベッドにいる事を確認した。
「我、気絶したのに、ベッドにいるということは、フィリが我を運んでくれたという事だな! やはり、フィリは優しいな!!!」
景雹は身支度を整え、朝食の準備に向かった。
「おはよう景雹」
「フィリ!!! おはよーーーう!!!」
フィリが先に起きて朝食を作っていた。そして、景雹は朝からハイテンションで彼女に抱きつこうとして、まさかの、彼女に抱きつくことに成功したのであった。
「フィリ!!! フィリ!!!!おはよう!!! 今日もかわいいね!!!」
「朝からうるさいな、あと、抱きつくな、離れろ」
「嫌だ! 久しぶりに抱きつけたんだ。フィリの柔らかな体を堪能したい」
「景雹はいちいち、言い方がいやらしいんだよ!!!」
「我はフィリだから言っているからな。他の女性にはフィリの様な愛情表現なんかしない!」
「あたし、これから食べ終わったら買い物行くから、景雹は店開けておいて」
「いいや、我はフィリと一緒にデートに行く」
「連れて行かないって、ほら、ご飯できたから食べるよ」
ご飯には敵わず、景雹はフィリから離れて2人は朝食をとり、フィリは1人で買い物に向かった。
「フィリの後をつけなければ!!!」
景雹は店のドアに休業と書かれた看板を取り付けて、フィリがよく買い物へ向かうアイテム屋に向かった。
景雹は見事アイテム屋でフィリに出会った。
「フィリ!!! やっぱり、ここにいたんだね!!!」
「うげっ、景雹、店はどうした」
「休業の看板ドアにつけてきた! 買い物には荷物持ちが必要だろう、なので、我を荷物持ちとして使ってくれ!!! 夫が妻の荷物を持つのは当然だからな!」
アイテム屋の店主である人間のおじさんは景雹の夫発言に驚いたフリをした。
「暴れん坊にもやっと貰い手に巡り会えたんだねぇ。あの、フィリちゃんが、鬼と結婚か、ん? 何故、俺を結婚式に招待してくれなかったんだ?」
「おっちゃん、あたしは独身だよ! 景雹が勝手に言っていることだから」
「は、は、は、知っているさ、景雹は相変わらずだな」
「そんな、フィリと同棲しているんだから、我はフィリの夫のような存在だろ」
「はぁー、朝から面倒、だから、連れてきたくなかったんだよな」
「フィリ!!! ため息をつく君も素敵だ!!!」
「おっちゃん、こいつに効く薬なんかない?」
「すまねぇな、景雹に効く様な薬はうちには置いてないな」
「はぁー、やっぱり、桔梗国に返すか」
「フィリ!!!我の父上と挨拶を!!! そうと分かれば、今すぐに出発して、婚姻を結ばなくては!」
「なんで、そうなるんだよ」
「は、は、は、フィリは変な奴に好かれるよな」
「笑い事じゃないっておっちゃん」
「まぁなんだ、ここん所、ニース様が恐ろしいぐらい何もしてこないみたいだが、やっとフィリの事を諦めたんか?」
「いや、それがね」
フィリはギルドの依頼をおっちゃんに話した。
「そうきたか、でも、やっと土地問題解決できて良かったじゃないか」
「あたしはパーティーなんか行きたくないんだよ」
「パーティー、パートナー、ニースのクソ野郎、卑怯な手を、許さない、今度、屋敷もろとも氷漬けにしてやる」
「景雹にそんな力あるわけ?」
「我の相棒、零鐘となら余裕で氷漬けに出来るんだが、でも、零鐘を呼ぶとなぁ、妹にバレてしまうんだよなぁ」
「零鐘? 今まで一緒にいたけど初めて聞いた。そもそも、友達いたんだ」
「あ! その、さっきの会話は聞かなかったことにして欲しい。我はまだ帰りたくないからな」
「なら、口を滑らした景雹が悪いね。後でギルドに調査依頼しよーと」
「調査依頼? 何を?」
「その相棒の零鐘っていう鬼を探して欲しいってね」
「やーめーてー!!! ダメ!絶対にダメ!!! もし、妹にこのことがバレたら、我、妹に踏み潰されちゃう!!!」
「自業自得でしょ、ちょうど、ギルドに用事あるしその時に依頼申請しよーと」
「やーめーて!!! フィリお願いだからやーめーて!!!」
「嫌だね、よし、おっちゃん、お会計よろしく」
フィリは会話をしながらも、旅に使うアイテムを選び、購入するアイテムをカウンターに置いた。
「ざっと、全部で金貨2枚だな」
「あれ? 金貨2枚と銀貨7枚じゃない?」
「銀貨はおまけさ、これから、大変なところへ行くんだろ。それなら、その分はおまけで、あとは回復ポーション中もおまけだ」
「そんな、この頃、回復ポーション高いだろ。しかも、効果中って、それだけで、金貨1枚になるじゃない」
「いいってことさ、フィリはお得意様だし、景雹がついて行くなら、そのぐらい持ってもらわないと俺が安心できないからな」
「おっちゃん、ありがとう、でも、こいつは連れて行かないから」
「フィリはそう言っているが、景雹な何が何でもついて行く気だろ」
「フィリが危険な場所に行くんだ、それなら、夫である。我もフィリを守る為について行くにきまっている!」
「あぁ、フィリを頼むな景雹」
「任せろ! もし、本当に危なくなったら、我の相棒を呼ぶからな」
「じゃあ、おっちゃんありがとうね」
「おう! 2人とも無事に帰ってくるんだぞ!」
「分かってるって」
「おっちゃんありがとう!」
2人はアイテム屋を後にして、ギルドに向かい、フィリはギルドマスターに零鐘という鬼を探す依頼を申請した。
一方、その、零鐘はというと。桔梗国で、絶華の兄の居場所を教えろと、草爛と炎燃に尋問されていた。
草爛は炎燃と力を合わせて、零鐘の脚を木に吊るし、その下には焚き火が設置されていた。
「ぷっきゅ、ぷっきゅきゅ(零鐘、さっさと吐きな)」
「ブホォ!ブホォーン!!!(そうだ! さっさと教えやがれ!!!)」
「ブギィィィ、ブギィッブギィッブギィィ!!!(いやだぁぁぁ、丸焼きになっても言わないぞ!!!)」
「ぷっきゅ、ぷきゅぷきゅ、ぷっきゅきゅぷきゅきゅぷっきゅーん!(それなら、火力を上げるまで、焼き豚になりたくなかったら早く居場所をいうのよ!)」
炎燃の鼻息から炎がでて焚き火の火力を上げた。
「ブギィィィ!!! ブギィッブギィィィ!!!(助けて!!!誰が助けて!!!)」
「草爛!炎燃! それは、可哀想ですよ」
盾護が焼き豚にされかけている零鐘を助けた。
「ぷっきゅぷっきゅ!!!(なんで助けちゃうのよ!!!)」
「ブホォン、ブホォ!!!(早くしないと、姫が!!!)」
「ブィ、ブギィィィィ(た、助かったぁ)」
盾護は零鐘を抱き上げた。
「2人の気持ちもわかります。早く景雹様を見つけないと、姫が好きでもない人間と婚姻を結ぶ羽目になる。ですが、焚き火で零鐘を焼こうとするのはいけないですよ」
「ブギィッブギィィィ!!!(盾護ありがとう!!!!)」
「ぷっきゅぅ(ごめんなさい)」
「ブホォオ(ごめん)」
草爛と炎燃もやり過ぎだと反省したのでした。
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