凪、外に出る
凪はダンジョンの外に出る為に3ヶ月間特訓をした。そして、その成果と言うと。
居間で凪の姿を小さくした人形がアとオセロ対決をしていた。そして、3回戦を終え、オセロ対決は凪の勝利となった。
人形から自分の体へ魂を戻して、凪は横たわっている体を瞬時に動かした。
「やったー!!! やっと勝てた!!!!しかも!30分活動出来たわよ!!!」
「筋肉痛もそれほど辛くないようね」
「これなら、王様に謁見出来るかもね」
「でも、人間の国に人形を送り込まないといけないのよね。あと、距離が遠いから、遠くでも動かせる練習を1ヶ月はして欲しいわね」
「遠くでもか、うーーん。藍介にこの子を送るのがいいんじゃない?」
「それじゃあ、楽しみがなくなってしまうじゃない。そうねぇ」
アはふと庭を見るとクティスが庭でカストルと共に猫次郎にお灸を据えようとしていた。
「ガウガ! ガウグルルガ!(お前!凪に甘えすぎだよ!)」
「にゃ〜、おっかにゃいにゃ〜。怖いにゃ〜」
「猫次郎、凪さん、から、離れろ」
「にゃっにゃっにゃっ、カスカスは主人様に甘えられないのが悔しいのかにゃ〜? まぁ〜、俺の可愛さに主人様と女性陣はメロメロだからにゃ〜。俺がモテるのは当たり前のことだにゃ〜」
「こいつ、ウザイ、殺すべき」
「ガウルルガ!!!(手伝うよ!!!)」
カストルはクティスと会話する事は出来ないが、この時だけクティスが何を言ったのかカストルには分かったような気がした。
「ありがとう、こいつ、懲らしめよう」
「ガウ!(やろう!)」
ジリジリと猫次郎に詰め寄るカストルとクティスを前に猫次郎は必殺技を使うことにした。
「こうなれば、これしかにゃいにゃ! すぅうううう!!!!! 主人様!!!! 助けてだにゃ!!!!カスカスとクスクスが俺をいじめてくるにゃ〜!!!」
猫次郎は必殺技の主人様を呼ぶを使った。
「ガウガウ、ガウグルルガウガ!(無駄無駄、凪が来る前にお前を潰す!)」
「凪さん、呼ぶの、卑怯、やはり、猫次郎、殺すべき」
猫次郎の必殺技は余計にカストルとクティスを怒らせてしまった。
「にゃ〜、これはまずいにゃ〜」
猫次郎は必死に逃げたが、角に追い詰められてしまった。
「くそぉ、こいつら強いにゃ」
猫次郎が観念しかけた時、救いの女神がやってきた。
「クティス!クティス! 手伝って欲しい事があるの!!!」
「ガウ! ガウガ!!!ガウガァー!(凪! 呼ばれちゃった!!! 今行くよー!)」
クティスは凪に呼ばれてルンルンで彼女の側に向かった。
残されたカストルは猫次郎の首根っこを掴もうとした時、猫次郎はカストルの顔面に目掛けてお尻から瘴気石を噴出した。瘴気石が顔面に当たりカストルが怯んだ時、猫次郎はその隙をついて逃げることに成功した。
「にゃ〜!!! ざまぁ!!!だにゃ〜!!!にゃっ、にゃっ、にゃっ!!!」
「あの、くそ、猫、殺す」
「あら、カストルさんこんな端っこで何しているの?」
クティスの尻尾が巻き付いた状態の主人様がカストルに話しかけた。
「いや、その、猫次郎、の奴、悪戯、された、から、やり返したかった」
「また逃げられちゃったのね」
「あいつ、許さない」
「まぁまぁ、猫ちゃんはそう言う性格だから仕方ないわよ。それで、カストルさんにお願いしたいんだけど、ちょっといいかしら?」
「お願い? 俺、何をすればいい?」
「それがね、アさんが作った魔法陣を描いて欲しいのよ」
「魔法陣、得意」
「さすがカストルさん!」
「それ、ほど、でも」
カストルは主人様に褒められてとても嬉しそうにしていた。
「ガウガァ〜。ガウグルルガウルルル?(なぎぃ〜。僕は何をすればいいの?」
「クティスにはこの人形をイデアさんに渡して欲しいのよ」
「ガウガッ! ガウ、ガウグルルガウ!!!(帰るの! いや、帰りたくないよ!!!)」
「イデアさんに限界がきているからね。もうそろそろ帰ってあげなさい」
「ガウ!ガウグルルガ!(嫌! 絶対に帰らない!)」
「クティス、ここに来て何もないのに死んだことあるでしょ。それってつまり、イデアさんが過労死したってことでしょ」
「ガゥ、ガルルガウガ(まぁ、そうだけどさ)」
「イデアさんを助けてあげられるのはクティスだけなのよ。それに、この人形があればいつでも私と遊べるわよ」
「ガウガァ〜。ガウグルルガウ(そうだけどさぁ〜。イデアに取らちゃいそう)」
「それは、無いわよ。何故って、私が動かすから、イデアさんから逃げ出すことも可能よ!」
「ガウガウガァ〜。ガウ(分かったよぉー。はい)」
クティスは口を開いた。
「よろしくね」
凪はクティスの口に人形を入れた。
「ガウグルガウガ。ガウ、ガウガウガグルルガ(行ってくるね。でも、すぐに帰ってくるからね)」
「うん、行ってらっしゃい!」
クティスは人形を咥えてイデアの屋敷へ向かった。
「よし、それで、次はカストルさんね」
「魔法陣、描く」
カストルはアが作った魔法陣を床に描き、その上に主人様は布団を敷いた。
「これで、準備完了ね!」
「凪ちゃん、くれぐれも帰ってくる時は魂の線を意識してね」
「うん! 行ってくる!」
凪は布団に横たわると、眠りについた。
凪の魂はクティスが咥えている人形へ入り、人形が動き始めた。
「真っ暗で何も見えないわね」
「ガウ!? ガウガ!(凪!? びっくりした!)」
「驚かせてごめんなさい。今どこら辺にいるの?」
「ガウガ、ガウグルルガウ(さっき、魔蟲の森を出た所だよ)」
「ほんと!ちょっと外見てみたい!」
「ガウガァ、ガウグルガウガ(いいけど、落ちないでよね)」
クティスはゆっくりと口を開けた。そして、凪は離れ行く魔蟲の森を見た。
「やっと、私、出られたんだ。クティス、ありがとう。私、やっと、やっと、外に出れた」
凪は感極まり、人形の姿では涙が出ないが、彼女の本体が涙を流したのでした。
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