優秀な奴隷 ライネル
ネルガルを買い、ライネルを押しつけられた貴族ナバンはネルガルを藍介に特注した巨大な水槽に入れ、ライネルはと言うと、メイドに奴隷寮に案内させてそれ以来、ライネルはナバンとは会う事がなかった。
そして、ライネルは沢山の雑用を押し付けられたが、体力と筋力で解決していた。
「凪さん所で家事やっててよかったぜ」
ライネルは今までの働きによって奴隷でも他の従者と一緒の服を着て仕事をしていた。
「ライネル!お昼ご飯は何作ってくれるんだ!」
仲良くなった人間の男がライネルの肩を軽く叩いた。
「そうだな、今日は鶏肉が余るみてぇだから、唐揚げにすっか」
「マジか!よっしゃ!やる気出てきた!じゃあ!唐揚げよろしくな!」
「おうよ!」
すると、それを聞いたメイドがライネルに話しかけた。
「今日って唐揚げなの?」
「そうだぜ」
「ねぇ、他の子達も連れてきていいかしら?」
「いいぜ! おっちゃんにも食べさせるから、多めに作る予定だしな」
「ありがとう!じゃあ、私含めて3人分よろしくね!」
「おうよ!」
ライネルは仕事を済ませると、厨房へ向かった。
「おー!ライネル!鶏肉沢山余ったから唐揚げつくってくれ! 俺よりもお前が作る唐揚げがうめぇんだ!」
「おうよ!おっちゃん!今日はいつもより人数増えてっから沢山使わせてもらうな!」
ライネルは手を洗い、調理を始めた。
「にしても、なぁ、ライネル、厨房へこいよ。お前が来てくれれば、俺が楽できるってもんだ」
「行きてぇのは山々だが、メイド長のおばちゃんがよぉ。足の調子が悪いって言うんで、その仕事も手伝ってるんだよな」
「あのばばぁ、早く仕事辞めねぇかな」
「おや、私に辞めて欲しいのかい?」
「やべっ!」
ライネルは料理長の後ろに立つ老婆に気づいた。
「そりゃあ、そうさ、仕事ができねぇなら潔く辞めるのがふつうだろうよ」
「ほぅー、そうかい、なら、仕事量を増やさせてもらうさね」
「え?」
料理長がゆっくりと後ろを向くと、メイド長の老婆が立っていた。
「な! どうして、ここにいるんだよ!」
「あのね。ライネルの料理が食べれると聞いて来てみれば、あんたがこんなことを言うなんて、早く嫁を見つけてくれれば私も安心して辞められるんだけどね!!!」
「うわ!やめてくれ!これから飯なんだ!!!」
「今日は抜きだよ! ライネル、他の子達の昼食よろしくね」
そう言うと、メイド長は料理長の耳を掴むと何処へ行ってしまった。
「これだから、マリアばぁさんの言う事は聞くもんだぜ」
ライネルは黙々と唐揚げを作り、屋敷の従業員達はライネルが作った唐揚げを美味しそうに食べたのでした。
ライネルは昼食を取ると、ネルガルの昼食である生魚をバケツに入れて、ネルガルが住む巨大な水槽が置かれているホールへ向かった。
「おい、ネルガル!飯だぜ!」
ライネルはネルガルに向かって魚を投げつけた。
ネルガルはサーフィン途中だったが、魚をキャッチして、魚の頭からかぶりついた。
「なぁ、ライネル、たまには魚以外も食べたいんだけど」
「それは無理な話だな、魚人は魚しか食わないって話で、ネルガル専用に新鮮な生魚を高い金払って買ってるって話だからな」
「まじか、それで、ライネル、収穫はあったか? 俺はずっと水槽で泳いでるだけだから暇で暇でしかないって感じなんだよな」
「まぁ、どっかの魚よりかは、俺の方が優秀だからな! もう、奴隷の入手経路、そして、ナバンが誰と繋がりてぇのかわかったぜ」
「それで、どこまで分かったんだ?」
「チッチッチ、それは今は話せねぇな。それで、もうそろそろ、俺はトンズラすっから、あとはよろしくな」
「はぁ!? 逃げるってことかよ!」
「いや、そうじゃねぇんだわ。花茶がな、ライブして欲しかったら俺を連れ戻してこいって我儘を言い始めたみてぇで、あの、白桜が仕方なく、俺を買い戻すらしいんだわ」
「マジか、まぁ、花茶ちゃんにとって急な別れだったからな」
「そんじゃ、俺は先に帰らせてもらうぜ。3ヶ月色々面倒なこともあったが、楽しく探らせて貰ったし、残りの時間は沢山料理でも作ってやろうかね」
「じゃあ、俺の昼食届けるのは一体誰になるんだ?」
「さぁな? でも、ネルガルもやるじゃねぇか、ここの娘さんをたぶらかしたんだろ」
「たぶらかす? 俺が誰を?」
「シルビーお嬢様だよ。やるじゃねぇかネルガル」
「シルビー? もしかして、たまに俺を観にくる女の事か?」
「そうだぜ、おっと、もう時間だから帰るな」
ライネルはネルガルの元から離れて屋敷へと帰り、その数日後に白桜がライネルを買い取ったのでした。
「ライネル!行っちまうのかよ!!!」
「仕方ねぇだろ、俺の主人が変わっちまったんだ」
「でも、ライネル!私、ライネルのことが!」
1人のメイドがライネルに抱きつこうとしたが、ライネルは彼女の肩に手を置いた。
「ごめんな、俺は奴隷だから、そう言うことは普通の人間の男にしろ」
「でも!私!ライネルの事好きなの!!!」
「俺の事は忘れてくれ、それじゃあな!」
屋敷の従業員達はライネルが他の人の元へ行くとなり、皆、涙を浮かべてライネルを送ったのでした。
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