馬車の中で情報収集
パーティーは終わり、来客は皆、馬車で帰宅していた。そして、馬車に潜入した蜘蛛達は情報収集を始めた。
深緑の馬車に潜入したチームは無意味な会話を聞き、やる気をなくしていた。
『この、貴族、ハズレ』
『ハズレ、ハズレ、意味ない会話ばかり』
他のチームも藍介が持つ情報以上の収穫はなかった。
『白桜様、85チーム全てハズレだと言っています』
「馬車での会話で重要な事を話すとは限らないから、引き続き対象者の情報収集をしなさい」
『かしこまりました。引き続き情報収集をお願いします』
『はーい!』
『暇だからトランプ持ってくれば良かった』
『ピクニックじゃないんだから、緊張感を持たなきゃ!』
『ふぁー、僕寝るから、あとはよろしくね』
『おい!寝るなよ!おい!俺を1人にする気か!っておい!』
馬車に潜入している蜘蛛達は思念伝達によって繋がっている為、それぞれの会話が筒抜けであった。
「ソウカツ、情報が集まったら後であたしに報告すること、それじゃあ、あたし疲れたから寝るわね。後はよろしく」
『かしこまりました。あっ、そういえば、ふくよかになる為には、牛の乳を飲めばいいと、ヤングさんが仰っていましたよ。そのヤングさんも不思議な石に聞いてみたら、そう書いてあったみたいです。白桜様の願望を聞き届けてくれたのではないですかね』
「ソウカツ、あんたの代わりは他に沢山いるのよね。ソウカツがいなくなっても、あたしの計画に支障はないって事で、しねぇぇ!!!!!!」
『ひぃぃいいいいい!? 私は白桜様を思って情報収集を行なったと言うのに、死ねなんて酷いです!』
白桜がソウカツを握りつぶそうとした時、ソウカツは白桜の手から逃げ、5分間、逃げ続けた結果、白桜は諦めて眠ることにした。
「明日覚えてなさいよ。あんたの仕事5倍に増やしてやるんだから!」
『はぁ、はぁ、はぁっ、あ、あ、危なかった! 白桜様の体力が並以下のおかげで命拾いしました!』
「こいつ、サンザイといい勝負ね」
『サンザイさんといい勝負ですか? 私はいつのまにサンザイさんと戦っていたのですかね?』
「もう、あんたと話したくないからさっさと出て行きなさい」
『それでは、失礼します。あっ! 明日の朝、牛の乳を準備しておきますね』
白桜は絶対にこいつを握り潰すと心に誓って、眠りについたのでした。
4組の蜘蛛達が潜入したプライルとエビィが乗っている馬車では、プライルがパーティーでの興奮が冷めず、ずっと、エビィに話し続けていた。
「エビィ! 歌姫、花茶のライブ最高だっただろ! しかも、限定ブロマイドも保存用、観賞用分も買えたし、しかも! 花茶の新しいライブ衣装! 最高!」
「僕も彼女のライブは楽しませてもらったさ。でも、僕が一番楽しめたのは、白桜さんが手掛けたドレスかな」
「あぁあ! もう!最高に可愛かったよな!」
「僕も凪教に改宗しようかな」
「エビィ!俺と一緒に改宗しよう! 今の勇者教は面倒事が多いし、それに、聖女、あの女が一番厄介だからな」
「おや、プライルも聖女様に会ったのかい?」
「それが、どうして、攻略対象外の方がイケメンが多いのよって言われてさ、意味がわからないだろ」
「聖女様は男漁りが好きだからね。もう、近くにいる人達は全て味見したんじゃないかな?」
「うわっ、聖女として、それは相応しくない行動だよな」
「聖女じゃなくて彼女は痴女だね」
「エビィがそこまで言うなら、相当って事だな」
「まぁ、彼女に粘着されれば、いろいろな情報を得られるってね」
「エビィも大変だな」
「まさか、第一王子、第二王子、第二騎士団長他にも多数、いるみたいだね」
「第二王子はないんじゃないか? パーティーの時、白桜さんといい雰囲気だったよな」
「彼は僕と同じく粘着されているが正しいのかな」
「だから、早く帰ったのか」
「多分、そう言う事なんじゃないかな? そうだ、聖女を僕の作品にしようかな、題名は、そう、地獄の聖女ってね!」
「それもいいな!そういえば、天使の像を作るとか言ってたけど、完成したのか?」
「いいや、まだだよ。彼女の仕上げはもう少しかかりそうだからね」
「ほんと、ラスよりもエビィの方がエグいよな」
「ん? ラスよりも僕はまともだと思うけど?」
「ラスは殺す時は一撃で終わらすから、ほんの少しの恐怖で済むが、エビィは違うじゃないか、時間をかけて、じわじわと心まで、殺すんだろ」
「そんな事ないさ! 僕は作品に深みを与えたいだけなんだ!」
「深みねぇ、そう考えると、俺がギルドの中で一番、まともだよな」
「いや、一番まともで頼りになるのは、リーダーである。この僕さ!」
「いや、それは無い。絶対にない。まともって話なら、まだ、俺か、そうだな、スゥローストの坊ちゃんがまともかな」
「彼は日頃怠けているから、まともに見えるのさ!彼は僕たちの中で一番、何考えているか分からないからね!」
「崩壊は芸術だぁ!って、変な事を言う以外はまぁ、まともだろ」
馬車の床下で盗聴していた蜘蛛達は芸術と言う言葉に反応した。
『芸術? もしかして、当たりか?』
『あたり?当たった!? 大罪芸術!?』
『なら、もっと、詳しく話、聞かなきゃ』
『おい、待て、人間に見つかっちゃダメだ』
『分かってる、僕達、忍者! 影に隠れる者!』
『調子乗るな、こいつら、他の人間と、違う、慎重、なるべき』
『でも、馬車の中に入ればもっと良く聞こえるよ』
『ダメだ、危険過ぎる。死んだら、情報、もって帰れない、それが一番、やっては、いけない事』
『分かったよ。でも、この人間についていけば、白桜様が望む情報得られそうだね』
『だから、俺達は、人間に見つからないように慎重になるんだ』
『りょーうかい! 僕、疲れたから寝るね!後よろしく!』
『お前もかよ!』
馬車の下に隠れている8匹の蜘蛛は、1匹だけ先に寝て、他の7匹で人間の会話を全て記録したのでした。
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