絶好調の白桜
パーティー当日、会場では白桜が招待した貴族達が出席していた。
白桜は一人一人に挨拶を交わしている時に天井にいる蜘蛛達に誰が付くのかを伝えて、彼等を監視させていた。
天井には3つの魔法が張られ、視認不可魔法、幻影魔法、視認域強化魔法にやって、天井にいる夥しい数の蜘蛛達が視認域強化によって下にいる監視対象を把握する事ができ、監視対象者達は天井を見ても幻影魔法によって豪華なシャンデリアと見事な絵が描かれた天井にしか見えていないである。幻影魔法の効果が効かなかった場合を考え、視認不可魔法も張り、蜘蛛達を守る鉄壁の構えとなっていた。
そして、最初はファッションショーが始まり、当初モデルは紅姫だけとなっていたが、新たなブロマイドのネタとして花茶もモデルとして参加させた。
紅姫が出た途端、男達は紅姫の暴力的なまでのスタイルに釘付けとなり、女性達は嫉妬と憧れの眼差しを紅姫に向けていた。
1着目のドレスは淡い桃色の紅姫には似合わないと思わせるフリル満点のドレスであったが、思いの外、紅姫は着こなし、その次では、紺色の落ち着いた雰囲気を放つドレス、黄色の華やかなドレス、紫色の妖艶さをより一層魅せつけるドレス、そして、最後は紅の体のラインがくっきりと出るドレスで締め括った。
その間、花茶は3着のドレスを着て、観客に手を振りながら楽しそうに踊りながら登場していた。
そして、ファッションショーが終わり、花茶のライブへと代わり、その準備時間中に物販販売が行われ、白桜が手掛けた花茶の応援グッズは飛ぶように売れた。
花茶のライブは観客を大満足させて終わり、控え室で花茶と紅姫が少しだけ休んでいた。
「ふぅー、花茶疲れたー」
「花茶ちゃんお疲れ様、でも、私達の仕事はこれからよ」
「ふぇ〜え〜。花茶疲れたのにー!」
「だって、これから招待客に挨拶をしなくてはいけないのよ。白桜だけには任せられないわ」
「うん。そうだね。花茶はサイキョーだから! 凄く疲れてても頑張れるもん!」
「花茶ちゃんはさいきょーですものよね」
「そうだよ!花茶はさいきょー!なんだよ! でも、ライネルお兄ちゃんに花茶のドレス姿見て欲しかったな」
「あら、花茶ちゃんはライネルの事が好きなの?」
「うん! お兄ちゃんと主人様の次に好きだよ!」
「あらあらあらあら! そうだったのね! ふふふ、花茶ちゃんももう恋するお年頃なのね。藍介さんが寂しくなっちゃうわね」
「ん? どうしてお兄ちゃんが寂しくなるの?」
「ふふふ、それは、今度話してあげるわ。それじゃあ、花茶ちゃん、会場へ戻りましょうか」
「うん! 花茶ー!!!! 頑張る!!!!」
紅姫と花茶は控え室から会場へ向かった。
会場の端にて、白桜は1人今日のパーティーが成功したことを喜んでいた。
『ふふふ、物販も絶好調、服の問い合わせも絶好調、これは、藍介様に勝ったわね!』
『白桜様、本音漏れてますよ』
『あら、失礼、ここまで上手くいくと本音言っちゃいたくなるわよ』
『白桜様、紅姫様と花茶様が控え室からお出になりました』
『お母様はこのまま1人でもお客の対応ができると思うから花茶はあたしと一緒に挨拶巡りをしてもらうわ』
『かしこまりました。到着次第、花茶様と紅姫様に伝えておきます』
『それと、今の所、怪しい人は絞れたかしら?』
『花茶様の物販でかなりの数のブロマイドを買った、本来、招待されていない人がいます』
『そうね、彼は確か、音楽家のプライル・ガルーダだっけ? まさか、この国最高峰と呼ばれる音楽家が花茶の大ファンなんて驚きよ。でも、招待状を送ってないのに、どうやって入ってきたのかしら?』
『メビドゥース公爵家、エビィ様の妹ラス様の招待状をお出しになりました』
『プライルとメビドゥース公爵家とは交流があるって事ね。その辺、詳しく調べたいからこの2人の馬車に4組潜り込ませておいて』
『かしこまりました。彼等の情報は全て我らが調べます』
『よろしく』
『白桜様、第二王子、シューム・アスラスム様がお見えです』
『お母様だけ大変な思いさせる訳いかないからね。彼を攻略して見せようじゃないの!まぁ、彼は余裕なんだけどね』
『白桜様で、大丈夫でしょうか?やはり、紅姫様の方が男性を魅了するのであれぼ適任では?』
『あたしが男を落とせないってわけ?』
『え、いや、そのー、ほら! 白桜様にはとあるものが真っ平!』
『あんた、この仕事終えたら殺すわね。覚悟しておきなさい』
『ひぃぃぃいいいいいい!!!』
白桜の背後にいた黒い蜘蛛はそそくさと天井へ上がっていった。
フワッとした金髪の美男子が白桜の前に現れた。
「白桜さん、主役がどうしてこんな端にいるのですか?」
「あら、シューム様、私疲れてしまって、少しだけ休憩をしていた所なんです」
「そうでしたか、僕も少し、疲れてしまって少しだけでいいので、貴方の側に居てもいいでしょうか?」
「えぇ、もちろん」
「ありがとうございます」
彼は白桜の隣に立つと、彼の耳が少しだけ赤くなっていた。
「あの、ファッションショー素敵でした。でも、僕としては、白桜さんも出て欲しかったです」
「私はお母様のみたいな体型じゃないですし、花茶みたいな可愛らしい人でもないので、私は表舞台に立つよりも裏で暗躍していた方が楽しいです」
「暗躍って、白桜さんは面白い人ですね」
シュームは楽しそうに笑った。
「そう? 私の従業員達は私の事を大暴君とか言ってくるわよ」
「大、暴君、やっぱり、白桜さんは面白い人だ! もう、面白くて、お腹痛くなってきちゃいます」
「まぁ、そんなに笑うなんて、シューム様も酷い人ね」
「ごめん、ごめんって、だって、君が面白い冗談を言うから、笑わざる得ないじゃないか」
「冗談じゃなくて本当に言われた事なんだけど、そうそう、今日のパーティー来てくれないって思ってたのに、どうして、来られたのですか?」
「それはね、聖女の対応を全て兄様に押し付けたからさ!」
「お兄様、お可哀想に」
「まぁ、聖女様のお陰で君に出会えた訳だし、そこだけは、感謝している」
「あの時は本当に驚いたわ。一目惚れしました、結婚しましょう!って、仕事中に言われて、ましてや、聖女様の前で言うなんて、あの時、私は貴方に腹を立ててたわ」
「白桜さんの美しさが僕の心を貫いてしまったんだ。もう、僕は君がいないとダメな男になってしまったんだ」
「私を落とすには、そうね、835年かかるんじゃないかしら?」
「その数字はどこから出てきたんだい?」
「適当に決まってるじゃない」
「ぷっ、やっぱり、白桜さん、僕を笑い殺そうとしてないか?」
「貴方が笑いすぎなのよ。あっ、失礼」
「いいよ。僕の前では敬語なんていらないよ。僕はありのままの白桜さんを知りたいんだ」
「そうなの? そしたら、今度一緒に食事でもしない?」
「え! まさか、白桜さんが僕を誘ってくれるなんて、僕の全ての誘いを断ったのに、僕は夢でもみているのか!? 」
「夢じゃないわよ。今度、藍介様がレストランをオープンするんだけど、話題性が欲しいって言っててね」
「僕が君とそのレストランで食事をしたら、話題性は十分だね。熱愛報道って記事が出るんじゃないかな。それは、僕としても嬉しいな」
「熱愛って、そこは藍介様にお任せするとして、その時に貴方が着る服を私がデザインしたいんだけどいいかしら?」
「もちろんさ! 白桜さんが僕の為に考えてくれた服を着れるなんて、とても光栄な事だ!」
「それじゃあ、私はこれから花茶の側にいないといけないから、今度、詳しい日程は手紙を送るわね」
「文通まで、今日は来て本当に良かった。それじゃあ、またね。僕はもうそろそろ帰らせてもらうね」
「もう帰っちゃうの?」
「僕は王子だよ、色々忙しいんだ、特に、聖女とか、聖女とかさ」
「聖女様しか言ってないわよ」
「まぁね。今日のパーティーとっても楽しかったよ。手紙早く送ってね」
「えぇ、今日はお越しいただきありがとうございます。ささいなプレゼントをどうぞ」
白桜はシューム王子に桜の花びらの形をしたシルバーのピアスを渡した。
「ありがとう。大切に使わせてもらうね」
こうして、シューム王子は王城へ帰っていった。
『ふぅ、これで、彼の内部情報も筒抜けってね!』
『さすが、白桜様、平面でも、男を落とす術をもっていますね!』
『花茶が来る前に一仕事しないといけないわね』
『おや、なんか、どこからか殺気が!?』
天井に逃げた黒い蜘蛛は辺りを見渡したが、仲間の蜘蛛しかいなかった。
『今すぐに降りてきなさい! 八つ裂きにしてやるわ!』
『ひぃぃいい! 私は絶対に降りませんから!あっ!ちょっとやめて!!! ころ、殺されちゃう!!!』
他の蜘蛛達は黒い蜘蛛を担ぎ上げ白桜の元まで持って行こうとした。
『やーめーてー!!!!』
『まっ、今は冗談よ。あんた達、遊んでないで仕事しなさい!仕事!!!』
『はーい!』
蜘蛛達は一斉に散って、それぞれ貴族達を監視し始めたのでした。
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