暗殺者ギルド『大罪芸術』
王様と宰相は今までの話を整理して改めて話を始めた。
「凪様に頑張ってもらい城へ来るどうかことで、その際に私達との同盟を結ぶという事で、よろしいですか」
「えぇ、でも、頑張るって、私は何を頑張ればいいの?」
「それは、この後話してあげるわね」
「はーい。頑張ります」
「そして、次に英雄一向様には、暗殺者で構成されているギルド『大罪芸術』の討伐を依頼いたします」
「その、暗殺者の討伐か、なぜ彼等を倒さねばならないんだ?」
「彼等の背後には教皇がいます。いや、確証までとはいきませんが、教皇の直属暗殺部隊とも噂されています」
「敵の戦力を削ると言う事だな」
「はい。彼等を探すのも困難ですが、現在、王は教皇に喧嘩を売った為、彼等を仕向けてくる可能性が高くなりました。なので、王の護衛していれば、彼等に出会える可能性が高いと言う事です」
「へぇ〜、王様〜、体張るねぇ〜」
「我も歳だからな、本来なら息子に玉座を渡したかったが、教皇によって暗殺されてしまったからな。孫達には危険な目にあって欲しくないんじゃよ。じゃから、我の代でこの悪しき法を変えてみせる」
「王は威勢だけはいいんですよね。その分、私の仕事が増えるばかりで大変なんですよ」
「宰相様も大変なのですね」
すると、王様の腹の虫が鳴り、皆は料理を食べ、藍介と宰相はそれぞれの考えの擦り合わせを行ったのでした。
とある貴族の屋敷の裏で、翼人族の若い女性が奴隷として働いていた。
度重なる疲労によって彼女は重たい麻袋を持ち上げて飛ぶ事が出来なくなってしまっていた。
「翼人のくせにお前は飛べないのか!!! 早く、飛べ!荷物を運べ!」
翼人の女性に屋敷の使用人は鞭を打ち、彼女の背中は鞭の跡で真っ赤に腫れ上がり、所々、皮膚が切り裂かれ血が流れていた。
すると、派手な服を着て真っ白の仮面を付けた男が翼人に鞭を打つ男に話しかけた。
「おや、珍しい!純白の羽を持つ翼人じゃないか」
「な! エヴィ様! 何故この様な場所に!?」
「僕がここに見学にきてはいけないのですか?」
「いえ、滅相もございません!」
「彼女を買い取りたいんだけど、そうだな、金貨100枚でどうだい?」
「ひゃっく!? こちらの翼人はもう空を飛ぶ力がありませんよ」
「いいんだ、彼女は美しいからね。彼女の価値分、払わせてもらうよ」
「そ、それでは、主に伝えてまいります」
男はその場から立ち去った。
翼人の女性は地面に倒れ、そのまま気絶した。
「あの男はやり過ぎだ。折角の珍しい奴隷がこれじゃ、可哀想じゃないか。ラスちゃん、この屋敷にいる人間の全て解体していいぞ」
「いいの!いいの!解体していいの!」
すると、真っ赤なドレスを着た薔薇の絵が描かれた白い仮面を付けた女性が屋敷の屋根から飛び降りてきた。
「あぁ、珍しい奴隷の区別がつかない、配下なんて邪魔なだけだろ。それに、これほどの奴隷を抱えているんだ、君が暴れたとしても、彼等になすりつければいいだけだしね」
「ありがとう! 私! 沢山! 解体するね! 解体して、解体して、解体して、沢山、沢山! 血を飛ばして! 私が思い描く絵を完成させてみせるね!」
「君の描く絵はとても斬新で素晴らしいからね。今回の作品は何を描こうとしているのかな?」
「天国よ! 絵で使う全ての絵の具はこの屋敷にいる人達で作りたいわ!」
「なら、色が多い方がより、良い作品になりそうだね。それなら、奴隷も何人か使ってみてもいいんじゃないかな?」
「え! いいの! 奴隷も使っていいの!やったー!やったー! 羽が青い子いたからその子にしようかな、肌が黒い子もいたわね。それ、なら!キャンパスも作ってみようかな?」
「君がやりたい様にしていいよ。この子だけは僕が貰っていくね」
「なら! エヴィも!次の題材は天国にしてみない? 私は天国の絵を描くから、エヴィは!」
「僕はそうだな、天国にいると言う、天使でも作ってみようかな」
「いいわ!とっても良いわ! とても美しい作品が出来上がるわ! あー! 楽しみ、楽しみ、楽しみ! それじゃあ、絵の具の材料調達してくるわね。あー!解体して、解体して、解体して、私の作品になろうね!」
ラスはアイテム保存の魔法がかけられている珍しいルビーのネックレスから、真紅の斧を2本取り出し、両手に持つと、走り出し、屋敷にいる人を全員殺し始めた。
屋敷は人間の悲鳴が鳴り響き、屋敷から逃げれた人が何名かいた。
逃げ切った男は必死に助けを求めに森を走っていた。
「なんで、こんなことに、あんな、あんなの、人間じゃない」
「くそぉ、なんで、森の中なんかに屋敷を建てたんだよ。こうなるなら、先に馬小屋に行くべきだったな」
森の中で男性が歌っていた。逃げていた男は彼の声を聞いた瞬間、物凄い眠気に誘われ、興奮状態だったにも関わらず、その場で倒れ、眠ってしまった。
目の下に八分音符のマークが描かれた白い仮面を付けている燕尾服の男は眠った男に近付いた。
「俺の歌を聴いて眠るとは、不快だな。殺すか。どうせ、この屋敷は廃棄されるみたいだし、本当に馬鹿な貴族だったな。エヴィの奴隷を横取りするなんて、まぁ、知らずに買った訳で、エヴィが買い損ねたのが、一番の原因だけどな」
男は眠っている男の心臓を短剣で刺した。
「ふぅーん、何人か逃げているじゃないか。俺の公演は明後日だから、今回は特別に歌ってやるか。今日の特別公演分はエヴィに払ってもらおう」
男は歌い出し、屋敷から逃げた人間、奴隷を眠らせた後に心臓を刺した。
大虐殺が行われること3時間、屋敷は血の海となり、屋敷の広間には大量の死体が運ばれていた。
「あのね! 天国はね! 美しい魂がいける死後の世界なの! だからね! 私の絵で! 貴方達、汚れた人を天国に行かせてあげるね! 私、なんて、優しいのかしら、汚い人を天国へ導いてあげられるなんて!」
ラスは死体を解体して骨を抜き取り、骨をすり潰していた。
「ラス、もう作品を描くのかい? 僕は材料が起きてしまうから先に帰らせてもらうよ」
「だって! 今、とっても! 冴えているの! あぁ! 私の天国を早く、早く、早く! 描かなきゃ!!!」
「ゔっ、ラス嬢の側には近づけないな」
燕尾服の男が広間にやってきていた。
「プライル! こっちに来て! ほら! この絵の具! 綺麗な白になったわ! 見てみて!この黒! とっても素敵な黒になったの!」
「俺は服が汚れるのが嫌だからそっちには行かない」
「そう? 残念ね! あぁ! そうだ! この素敵な絵の具をプレゼントするってどうかしら! みんな喜んでくれるわよね!」
「いや、俺はいらない」
「僕はありがたく頂こうかな」
「エビィは本当に優しいのね!プライルは仲間になったばかりだから冷たいのね! でもぉ」
ラスは骨をすり潰す作業をやめて、一瞬でプライルとの距離を詰めた。
「おっと、急にどうしたんだい」
「プライル、私、怒っているの! 私が折角、作った絵の具をいらないって言われて、怒っているの!」
「俺には絵の具は必要ないからね」
「でも、楽譜を作るとき、黒使うでしょ? なら、この黒、あげる」
ラスは黒く変色した血を入れた瓶をプライルに渡した。
「はぁー。分かった。絵の具をくれてありがとう」
「そうよ!そうでなくっちゃ! 私は絵の具作りに戻るわね! あ、エビィ、ここにはいつまでいられるの?」
「1ヶ月はいられるように手配しておくよ」
「ありがとう! そのぐらいあれば天国を描けるわ!」
ラスは戻り、絵の具を作り始めた。
「ふぅー、殺させるかと思った」
「プライル、彼女には慎重に言葉を選ばないといけないよ。兄だと言うのに、何度も殺されかけたからね」
「それで、どうして今回俺を呼んだんだ? 俺以外にも動ける奴はいただろ」
「動けはするけど、呼んで来てくれる訳ないし、君は優しいからね! 来てくれるって思ってたんだ!」
「で、今回の件はその奴隷を横取りされた逆恨みか?」
「そうじゃないよ。僕がそんな酷いことをする奴だと思うのかい! プライルは酷いな。彼女はついでだよ。本来の仕事は、この書類さ」
エビィはプライルに書類を見せた。
「ふっ、教皇様もなかなかだな」
「魔人を改造するなんて、それは、神の所業だと思わないかい!」
「でも、始まったばかりなのにどうして、こんな書類が下っ端に出回ったんだ?」
「さぁ、それが、出所が分からないんだよねぇ。 この前、訓練された魔人を殺した時、僕はね、何か変だなって思ったんだよね」
「変?何がだ?」
「あそこまで強い魔人なのに、どうして、奴隷商人に捕まったんだろうってね」
「さぁな、騙されたんじゃないか」
「それに、しては、今までの奴隷達よりも賢かったような、気がするんだよね。まぁ、今回はプライルに報告してもらおうかな! 僕は、この子を最高の作品に仕上げなければいけないからね!」
「分かった、教皇様には俺から伝えておく。けど、これは貸し一つと言うことで、エビィに頼みたいことがあるんだ」
「君が僕に頼みたいって珍しいね。それで、僕に頼みたいことって?」
「歌姫、花茶って知っているか?」
静まり返った屋敷に女性の歓喜の声がこだまし、男2人はそれぞれの馬車に乗り、屋敷を後にした。
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