王様はウッキウキ
藍介は王城前の門で待つと10分足らずで王城へ入ることができた。
そして、謁見の間に通されると、緑癒と勇者教の司祭と睨み合っていた。
王様はそれを止めずに何やら嬉しそうに笑っていて、宰相はその王様と一緒に藍介が出した料理のレシピ本とペンを持っていた。
「急な謁見を申し込んでしまい申し訳ございません。同胞が粗相をしたようなので、些細ではありますが、最新魔道具、動く人形こと、『こ〜け〜しぃ〜』どうぞ」
藍介はこけし人形を兵士に渡した。
兵士は王様にこけし人形を渡した。
「これは、どんな魔道具なんじゃ」
「首元に小さなボタンがあるので押してください」
王様はこ〜け〜しぃ〜の首元をみてボタンを見つけると、ワクワクしながらボタンを押した。
すると、こ〜け〜しぃ〜が動き出し、王様は床にこ〜け〜しぃ〜を置くと、足が現れ、カタカタと1人で歩き始めた。
「おー!!!! 1人で勝手に動き出したのじゃ!」
「足が出ましたよ!足が!」
王様と宰相は少年時代に戻ったように大はしゃぎしていた。
「父上、ライサルまでも何をやっているんだ」
第一王子は父親と宰相の喜びっぷりに呆れていた。
『ふぅー、王様が私の魔道具のファンという事は調査済みでしたが、まさか、あそこまで喜んでもらえるとは、もしかしたら、話の流れを優位にもってかれるかもしれませんね。ですが、緑癒! 勝手に私の名前を使ったのはいけませんよ! てか、いつまで祭司と喧嘩しているのです! 緑癒らしくないですよ』
『だって、あの人間最低なんですよ。もう、主人様をみた事ないのに勇者様と主人様とじゃ功績が違いすぎるだの、国のルールに従わない人は帰りなさいって言ってくるんですよ』
緑癒はハインズを睨んでいた。
『まぁ、彼は確か、勇者教の祭司の中で敬虔な信徒と言われていますからね。ここでの彼の発言は勇者教からしたら、正しい回答となるわけですね』
『だが、人間すらも奴隷にする事を肯定するのは、流石に黙っていられないな。俺も何度か、人間の奴隷を見たが、どうかのように扱われ、体が痩せ細っていた。彼らがお前達に何をしたんだと問いかけたくなったな』
『今は私のこ〜け〜しぃ〜のおかげで王様の喜ばせる事に成功したので、この勢いで緑癒の提案を呑ませるとしましょう』
『藍介さんが来たら100万力ですね!』
『さっき〜、僕がやっつけるから〜って言ってたのに〜、喧嘩しただけじゃん〜』
『喧嘩なら俺様が参加するぞ!』
『このいけすかない男をぶん殴ってください!』
『いいの〜、なら〜、やっちゃおうか〜?』
『ハッハー!許可が出たのなら仕方ない! 俺様が人思いに首をゴギッとやってやろう!』
『殺しても生き返らせるのでご安心よ。一発きついのお願いしますね!』
紫水と氷月がハインズを殴ろうと動き出した時、灰土が2人の肩をもって止めた。
「おい、これ以上の争いは避けろ」
「は〜い」
「楽しそうなんだがな」
灰土が怖い2人は足を止めた。
一体どうなっているわけ? 私が聖女なのよ。なのに、誰一人私に話しかけもしないし、ハインズは緑癒って言うイケメンとガン飛ばしあっているし、王様は宰相様とキモい人形見てキャッキャウフフしているし、何これ? え? 私ここにいる意味ある? この無意味な時間を攻略キャラの親密度上げに使いたいんだけど、王子もあの父親じゃ色々と大変なわけね。
「それで、私の同胞が何故勇者教の祭司様と睨み合っているのですか?」
「おっと、パラディンボーンとミスリルリザードの討伐報酬として何でも欲しいものを与えると言う事でしたが、そちらにいる緑癒さんは凪教を広める活動がしたいと仰ったので、勇者教司祭ハインズが法に違反するとして反発したのです。こちらとしては、彼のその願いを叶えるには法を変えなければいけないと考えていますが、王はどう思いますか?」
「そうじゃな、藍介は勇者教ではなく凪教を信仰しているのか?」
「はい、私は凪教を信仰しています。そもそも、彼女は私の妻ですからね」
「そうなのか、それなら、法を変えなければな。ん? 藍介、さっき何と言ったのか?」
「私は凪教を信仰しています」
「いや、その後じゃ」
「彼女は私の妻です」
「そ、そうなのか!? 今まで藍介が既婚者なのは知っていたが、その相手は不明じゃったが、まさか、女神と結婚していたのか!?」
「はい、彼女の戸籍も作りましたし、彼女と私は列記とした夫婦なのです」
「女神と結婚とは、もしかして、その才能は女神の力で授かったものなのですか!」
「彼女からの贈り物はこれですね」
藍介はフヨフヨさんを取り出した。
「ほお! これは見事な魔石だな」
「ありがとうございます。それで、凪教を布教する為には国の法を変えなければいけないと仰っていましたが、今回のナギハクルの褒美でそちらは変えてもらえるのでしょうか? 私としても妻の素晴らしさを広めたいのです」
「ここまでそなたに愛されているとは女神様も相当喜ぶはずじゃ、よし、法を変えるとしよう!」
「それは、いけません! この法は勇者様が定めた法なのですよ! それを変えてしまうなんて、教皇様が何とおっしゃられるか」
「我より教皇の方が上だと言う事なのか?」
「いいえ、そのようなことはありません」
「急に法を変えると国民が混乱してしまうかもしれません」
「ライサルそれなら、丁度いい、この機会に奴隷制も撤廃してもいいんじゃないか」
「な! 勇者様が定めた法を2つも変えるのですか!」
「それもいい考えですね。私達は勇者様の法を何百年も守り続けていましたが、治安は悪くなる一方であり、他国からも奴隷制度撤廃を持ちかけられていましたからね。本当にいい機会です。ですが、どちらも簡単には直ぐには変えられないので、時間がかかりますが、藍介さん、ナギハクルのみなさん、私たちに時間を頂けないでしょうか。必ず、この二つを変えて見せます」
王と宰相は親友であり、長年、この国の在り方に疑問を呈していた。だが、勇者教の力と貴族派の癒着により、法を変えたいと願っていたが、叶えられずにいた。が、彼等が法を変える事を褒美として願った以上、国としても脅威を倒した英雄の願い叶えなければいけない。それなら、貴族達を説得することができると二人は考えた。
「この件は教皇様にお伝えいたしますので、私は失礼します」
「えっ!ちょっと、どういうこと!?」
ハインズは聖女を連れて謁見の間から出ていった。
「ふぅー、やっといなくなった。ずっと立ち話も大変じゃから、食事でもどうか? パラディンボーンやミスリルリザードの討伐話を我は聞きたいのじゃ」
「なら、私も参加しますね」
「ライサルは法整備の手続きを進めて欲しいのじゃ」
「嫌です。そんな楽しそうな話、聞きたいに決まっているじゃないですか」
「参加させていただきます」
「水ある〜?」
「コラ!紫水、その態度はなんだ!」
「ハッハー!俺様達の話を聞きたいとは! 俺様とパラディンボーンが戦った話をしてあげようじゃないか!ハッハー!」
「ザマァみろです! あんないけすかない奴、僕は大嫌いです!」
『ねぇ〜、この王様と〜、宰相さんは〜、好きになれるかも〜』
『なかなか、愉快な性格なんだな』
『初めて会った時は威厳に満ち溢れていたのですが、まぁ、人は見かけによらないですからね』
王様に食事を招待されたので、食事に参加するのでした。
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