主人様の提案
漆黒の空に飛ばされた氷月は無重力を楽しもうとしたが、誰も見てくれないこの状況に寂しくなり、地上に戻ろうとしたが、アが付けた手枷のせいで魔力を扱うことができず漆黒の空を彷徨ったのでした。
そして、灰土は地上に降りるとスケルトン達に事情を聞くことにした。
「さっきの魔法を放ったのは誰なんだ?」
「俺」
ウィザードスケルトンは横たわりながらも手を上げた。
「そうか、ありがとう。貴方のおかげでここが消し飛ばずに済んだ」
「あの、魔法、恐ろしい、人間が扱える、魔法、じゃない」
「にゃ〜、あいつは魔石精霊だからにゃ〜。魔法にかんしちゃ最強だにゃ〜」
「ん? そこの猫のスケルトンビーストは話せるのか?」
「初めましてだにゃ〜」
「猫次郎だ、さっきの奴、こいつに、名前つけた」
「やめろにゃ〜!その名前ムカつくにゃ〜!!!」
「猫次郎か、よろしく。それでなんだが、俺達は人間の国の冒険者ギルドでパラディンボーンの討伐依頼を受けた」
「にゃ!パラディンボーン様に手出しさせないにゃ〜!シャァー!!!!!!」
猫次郎は灰土に威嚇した。
「依頼を受けたからには達成しなければいけないからな」
すると、空から緑癒の声が聞こえてきた。
「灰土さーーーん! 氷月を捕まえられましたかー!」
上空には紫水を抱き抱えた、緑癒が空を飛んでいた。
「うわ〜、あそこモヤモヤしてる〜」
「肉眼で確認できるほどの瘴気、あのままにするのは危険ですね」
「灰土〜、体〜、大丈夫〜!」
「ああ!!! 俺はなんともないぞ」
緑癒と紫水は地上に降りた。
「ふぅ、紫水を運ぶの疲れますね」
「緑癒〜ありがとう〜。水使って〜、飛ぶことも〜、出来るんだけど〜、めんどくさくなってさ〜」
「めんどくさいで僕を使わないでください! と、うっ、瘴気強すぎますぅ」
緑癒は金色の鱗粉を辺りに振りまいた。
「綺麗な粉だにゃ〜」
猫次郎が金色の鱗粉に触れた瞬間、触れた部分がジュッと消えた。
「ぎにゃぁぁぁあ!? 俺の体が溶けたにゃ!」
「いえ、浄化したから消えたのですよ」
「ぎにゃぁぁぁぁあ!?!?!?」
猫次郎は慌てて金色の鱗粉から逃げた。
「危なかったにゃ〜、成仏しちゃうところだにゃ〜」
「俺、まだ、消えたくない」
「それにしても、話せるスケルトンですか、成仏したいですか?」
「嫌にゃ!!!」
「俺、嫌だ」
「そうですか、うーん。でも、ここの瘴気をこのままにしとく訳にもいきませんし」
「ねぇ、それなら、私の方にその瘴気とその子達を運べないかしら?」
突如、主人様の声が聞こえ、灰土、緑癒、紫水は驚いた。
「主人様!? どこに!?」
「あ〜!!!! その水晶だよ〜!!!」
「主人様!? 話を聞いていたのですか!?」
灰土が持っていた水晶から主人様の声が出ていた。
「アさんから話は聞いたわ。氷月には宇宙で頭を冷やしてもらいましょう。で、少しだけ会話を聴かせてもらってたんだけど、瘴気とスケルトン達を魔蟲の森に連れてくるって事はできない?」
「そんな事をしたら魔蟲の森にスケルトンが生まれ続けてしまいますよ!」
「だって、彼等なら対話する事ができるでしょ? それなら、成仏したい人はさせてあげて、嫌がる人達にはこっちで暮らして貰えばいいんじゃない? そうすれば、依頼も完了って事にできるんじゃない?」
「それは、嘘をつくという事でしょうか」
「その場所からパラディンボーンがいなくなったんだからいいんじゃない?」
「それもそうですが、この瘴気が無ければスケルトン達は成仏します。どうやって瘴気を運ぶのですか? あと、瘴気があると仲間達の健康面が心配なのですが」
「それなら、一区画を彼等の居住区にしてその場所を隔離すればいいんじゃないかしら? 中央に瘴気を溜めてそこから離れていくと瘴気が薄くなっていけば虫達にも健康被害はないと思うのだけど」
「その隔離をどうやるんですか」
「そうね、アさん、瘴気を隔離する事ってできるかしら?」
「できるわよ。それに、そのスケルトンビーストの力を使えば外に漏れ出た瘴気を浄化する事ができるわよ」
「にゃ〜? 俺のことかにゃ〜」
「貴方、魂猫に進化できるでしょ」
「にゃ〜、なんで分かったのかにゃ〜!?」
「私も魔石精霊よ。精霊系統のステータスなら簡単に覗く事が出来ちゃうからね」
「そんで〜俺はにゃにすればいいのかにゃ〜」
「私と凪ちゃんで森の一区画を魔石囲って、瘴気を封じるわ。その瘴気と貴方達の移動は、私が直接出向いて転移魔法で運べばいい訳だし、貴方の力である、瘴気吸収と瘴気石生成を使えば瘴気を無限に吸収可能って訳だから。私と凪ちゃんの魔石壁から漏れ出た瘴気を貴方が吸収する事で瘴気を封じる事ができるわ」
「大役だにゃ〜!」
「そうよ。貴方達がひっそりと暮らすためには猫次郎の力が必要なのよ」
「ふっふっーんにゃ! にゃ〜が主人公だにゃ〜!」
「猫次郎、脇役、俺、主人公」
「にゃんだと! 俺が主人公だにゃ〜!」
「俺、転生系、小説の主人公、いける、だから、俺、主人公」
「んなわけにゃいにゃ!」
「よし! 灰土、緑癒、紫水! それでいきましょうよ」
「了解〜。主人様が決めたなら〜俺はさんせ〜い〜」
「主人様の提案。こんなの断れる訳ないですよ!」
「だが、一度、俺はパラディンボーンと手合わせをしたい。主人様、パラディンボーンと一度だけで良い、戦ってもいいですか」
「それは、私に聞くのではなくて本人に聞いた方がいいんじゃない?」
「分かりました」
「それじゃ、私とアさんで受け入れ準備するから、こっちが終わったらアさんが行くからよろしくね」
「分かった〜」
「かしこまりました」
「承知した」
こうして、成仏をしたくないスケルトンは魔蟲の森で受け入れる事となったのでした。
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