冒険者チーム『ナギハクル』の初仕事
初心者冒険者チーム『ナギハクル』はSランククエストパラディンボーンを討伐しに馬車へ向かっていた。
馬車は荒野を進んでいた。
「紫水のウォータークッションのお陰でお尻のダメージを緩和出来ましたが、まだ着かないんですかね。かれこれ、10日は馬車に揺られ続けていると思うのですが!それもこれも、氷月! 暇だからって勝手に外に出ないでください! そのせいで目的地まで7日は掛からないと言ってたのにもう! 10日目! 本来なら着いているのにどうしてこんなに時間がかかるのですか!!!僕の大切なお尻のハリがなくなって来ちゃってます!!!」
緑癒は自分のお尻を触りながら怒っていた。
「本当に〜?」
紫水は緑癒のお尻を叩いた。
「うわ〜っ!? いつもの〜、ハリがない〜!?緑癒〜、大丈夫〜?」
「ハッハー!緑癒落ち着け。俺様は冒険を楽しんでいるのだ。緑癒も冒険者となったからにはこの冒険を楽しまなければいけないぞ」
「何言ってるんですか!!! 僕は凪教を広める為に人間の国へ出向いただけであって、冒険者はそのついでなんです! あー、主人様が像を送ってくれたみたいで早く教会に行って主人様像を確認したい」
「藍介が〜言うには〜、主人様に〜、とっても〜、そっくりなんだってよ〜。俺も〜、主人様像楽しみ〜」
すると、急に馬車が止まった。
「急に止まるなんてどうしたのですかね。陽は高いですし、止まる理由となる氷月は目の前にいますよね? もしかして、分身を作って外に遊びに行っているとか!?」
「緑癒、俺様をなんだと思っているのだ」
「好奇心旺盛で暴れん坊の大きな子供ですね」
「俺様はお前達よりも遥か昔から存在しているのだぞ!」
「氷月として産まれたのは日が浅いでしょ」
「まぁ、そうなんだがな」
馬車を止めた灰土が馬車のドアを開けた。
「すまん! 緑癒様、瘴気を感じたのだが、外を見てもらえないだろうか」
「瘴気ですか? うーん、僕は何も感じないですよ?」
「いいから出てくれ!」
「仕方ないですね」
緑癒は渋々、外に出た瞬間、強烈な瘴気を感じた。
「ぐっ、何ですかこれは!? ふぅ、ふぅ、外に出ただけでここまで僕の気分を悪くするなんて」
「緑癒〜大丈夫〜?」
「緑癒!? 顔色が悪いぞ!」
紫水と氷月も外に出たが、2人が気分が悪くなることはなかった。
「これは、マズイ、瘴気が濃すぎます」
「う〜ん? 瘴気なんて〜、俺は感じないけどな〜」
「俺様も感じないな」
「俺は瘴気を感じたから止めたのだが、まさか、緑癒様には俺たちよりも瘴気を感じ取る力が強いんだな」
「ふぅー、ふぅー、僕は大丈夫です。僕にはキツイですが、3人にはまだ薄いみたいですね。仕方ない。神の庇護!!!」
緑癒は羽を広げ、金色の粉を辺りに振り撒いた。
「体が少し軽くなったような気がするな」
「灰土さんは瘴気を少し溜め込んでいたみたいですからね。体が軽くなると言うのは瘴気が浄化されたと言うことです」
「ハッハー! 主神の力を使いこなすとはな!緑癒こんど俺様と戦おうじゃないか!」
「嫌ですよ。紫水、貴方の水を辺りに撒いてもらえませんか」
「いいよ〜」
紫水は辺りに水を撒いた。
「ふぅ、これで濃度も下がった筈です。ですが、何故馬車の中ではこれほどの瘴気を感じ取れなかったのですかね?」
「ハッハー! それはな! 俺様が結界を張っていたからな!」
「初耳なんですが?」
「氷月そんな事できたの〜?」
「俺様は魔石精霊だぞ。全ての魔法を使うことのできるこの星で唯一と言ってもいい存在だなんだぞ」
「で、緑癒様ここの瘴気の原因はやはり、この先ですよね」
「えぇ、僕の神の庇護、紫水の浄化水があればこの先も進めますが、はぁー、これは骨が折れる作業をしないとパラディンボーンを倒すことはできませんね」
「骨が折れる作業とは? 何をするんだ?」
「この瘴気を全て浄化するんです」
「え〜、めんどくさそう〜」
「でも、それをしない限りパラディンボーンは倒せません。瘴気がある限り無限に修復しますからね」
「うわ〜。だから〜、誰も倒せなかったんだ〜」
「そう言う事ですね。これは、僕にしか出来ないこと。今の勇者教の司祭達の浄化力など鳥の涙程ですからね」
「そんな奴らじゃ、討伐隊を編成しても死にに行くもんだな」
「それじゃあ、ここで野営の準備をして今日は辺りの瘴気を浄化することにします」
「了解〜」
「この辺は何もないな。ハッハー!それなら、俺様は先に行きパラディンボーンを確認してこよう!」
「氷月!何言ってるんですか!!! 勝手な行動しちゃダメ!!! 灰土さん氷月を捕まえて!!!」
氷月は1人で走り去ってしまった。その後を灰土が追ったが、瘴気がだんだんと濃くなり、灰土は瘴気で気分が悪くなり、引き返した。
「すまない。氷月様を捕まえられなかった」
「凄い瘴気を纏ってます!? 浄化するので、そこに横になってください」
灰土は地面に横になった。
「神を束ねし、全知全能たる主神よ。その力を持って不浄なる物に神の慈悲にて癒したまえ。『神の慈悲』」
金色の光が灰土を包み込み、灰土は全回復した。
「緑癒様凄いです! 体が鉛のように重たかったのに今は逆に絶好調です! これなら、氷月を捕まえてこれる!」
「無理は禁物です。氷月は諦めて拠点を作り、瘴気を浄化する準備を始めましょう」
「あぁ、まぁ、氷月様なら魔石精霊なのだから、大丈夫だよな?」
「あ〜、俺思うんだけど〜、氷月俺たちが来るまで〜、パラディンボーンと戦ってそうじゃない〜」
「今の状態では何度も復活すると思うのですが、まぁ、氷月は死ぬことは無いですよね?」
緑癒達は拠点を作り、辺りの瘴気を浄化した。
一方、1人で先に進んだ氷月は走っていた。
進んでいくと目の前に黒い霧が現れた。
「ほう、目に見えるほどの瘴気。だが! 俺様には瘴気は効かんからな!!!」
黒い霧の中に氷月は入って行った。
「ここは元戦場だったのだな、腐敗し骨だけとなった死体に瘴気が入り込み、スケルトンとして動かしている」
氷月を囲むように大量のスケルトンが地面から現れた。
「だが、お前達じゃ俺様を楽しませる程じゃないな」
氷月は大氷斬を一振りすると氷月を取り囲んだスケルトンが一掃された。
スケルトン達は体が崩れたが、瘴気によって元の姿へ戻った。
「この瘴気面倒だな。だが、緑癒の浄化を待っていたら何年かかるか分からんからな」
氷月は大氷斬を振り回してスケルトンを倒し前へ進んだのでした。
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