その間、サンザイは
主人様がムシムシ学校で忙しくしている中、白桜の仕事を果たすべく、サンザイは主人様が手配した最高のタクシーと出会ったのでした。
「ガウガ、ガウガァ〜(なぎぃ、久しぶり〜)」
「クティス!? なんかちょっとやつれてない?」
そう、最高のタクシーとはクティスの事であった。
「クティスさんよろしくお願いするでやんす!」
サンザイは車に乗った状態だった。
「ガウ、ガウガガウガグルルルゥ(うん、その前になぎぃ疲れたよぉ)」
クティスは努力の結晶であるインクで真っ赤になった肉球を凪に見せた。
「あら、また肉球が真っ赤じゃない!」
「ガウガ〜、ガウディ〜、ガウエスト!!!」
クティスは頑張ったアピールをした。
「偉いわね。でも、今すぐにサンザイをイデアさんの元に連れて行ってほしいのよ」
「ガウ!? ガウガ!? ガウグルルルルル!(嘘!? 今すぐに!? ここまで大変だったのに帰るの!)」
「ごめんなさいね。クティスより早く着ける子なんていないでしょ。今度遊びに来たら一緒にデートでもしましょ」
「ガーウ! ガウガ! ガウグルガウガ!!!(デート! やる! すぐに戻ってくるからね!!!)」
クティスは嬉しそうに尻尾を振り、サンザイが乗っている車を口に咥え、魔族の国へ走り去った。
「ひぇぇぇえええええ!!! 車が壊れるでやんす!!! 背中に乗せてほしいでやんすぅう!!!」
サンザイの言葉虚しく、魔族の国までクティスが口に咥えた状態で運ばれた。
クティスのデートでのやる気によって、その日に魔族の国に着き、サンザイはイデアと面会した。
「イデアさん久しぶりでやんす!」
「クティス! 私が連れて行くと言ったのに勝手に行くなんてずるいです!!!」
「ガウガァ〜、ガーウ、ガウガ、グルルガウ〜(これから〜、デート、だから、行ってくるね〜)」
「デート!? 行くってまだ仕事が残っていま!」
イデアが止めようとする事を見越していたクティスはすぐに凪の元へ向かったのでした。
「くそぉ! クティスめ! 逃げましたね!!! 私だって、凪さんとデートやキス!を堪能したいと言うのに!!!くそぉ!!!!!! こんな仕事辞めてやる!!!!」
「今イデアさんに辞められると困るのは魔族方なのではないでやんすか?」
「で、凪さんから話は聞きました。藍介さんが奴隷となった魔族達を保護し、人間の国で仕事させて賃金を払っていると」
「そうでやんす。保護されるだけではダメでやんす。働かざるもの食うべからずでやんすからね」
「そして、この前のブロマイドの売り上げが全てその方達の賃金で底をついたと」
「そうでやんす! あっし達が汗水流して稼いだ金がもう底についちゃったのでやんす! そもそも、そちらの国民を保護しているのでやんすから、その分の資金を贈るのは当然だと思うでやんす!」
「まぁ、貴方の言うとおりですね。私達は今、奴隷となった方達の救出が困難な状態。そして、彼らの救出を凪さんにお願いをしている状況です。予算を組み直して、彼らの保護資金の予算編成を急がしている状況です。なので、資金面についてはこちらもバックアップいたします」
「それが当然でやんす!」
「それで、現在、桔梗国の姫にとある国の縁談の話がありましてね」
「とある国でやんすか? それは何と言う国なんでやんすか?」
「すみませんが、その国の事はあまり話したくないと言うか、氷月さんとアさんに関わる問題と言う事なのです」
「それなら今すぐに伝えるべきじゃないんでやんすか!!!」
「デリケートな話と言いますか、仕方ない、少しだけ説明します。現在、その国を支配している方が魔石精霊なのです」
「それなら尚の事ア様に話すべきでやんすよ!」
「魔石精霊ビクトリアは自身を魔石精霊だと風潮し、北方にある人間の国サーエンスを彼女は庇護しています。魔石を作り出すと言われるビクトリアの力によって、その国では魔術ではなく魔工学が発展している国なのですが、他国との交流が全くなく、その国の王族が、何故か鬼の国である桔梗国と交易したいと言う事で、サーエンスの第2王子と桔梗国の姫の絶歌ちゃんとの縁談話があがっているのです」
「それは、エンデューブが絡まない話じゃないでやんすか?」
「いいえ、絶歌ちゃんは魔王様を慕っていまして、現在、絶賛大暴れ中でして、彼女を落ち着かせるために魔王様自ら桔梗国へ向かったのですよ」
「ひぇぇ。大変でやんすね」
「そのせいで仕事が増えるわ増える。縁談は破談になると思うのですが、相手方が強引に推し進めている状態なのですよ。一部の貴族は懐柔されてしまい、王である彼女の父親は必死に抵抗しているのですが、姫という立場それに、王子がいない現在、クーデターを企む輩も出てきていると報告も上がっていまして、もう、大変。同盟国を守るために行ってくるといいながら、魔王様が言ったところで、あの人が解決できるかというと、はぁー、護衛のオビリオンさんが可哀想ですね。まぁ、2人がいなくなって私の仕事が3倍に膨れ上がり、クティスの肉球を借りても終わらぬ書類。私、過労で何度か死んでいますが、私が不死じゃなかったら、他の者が過労で何名か死んでしまってますね」
「いやぁ〜。色々起こっているでやんすね」
「それで、です。凪さんに人手を借りたいと話したら、丁度、書類仕事が上手く、頭がキレる子がいるからそっにに送るわね。と言われましてね」
「おっと、頭がキレるでやんすかぁ、誰でやんすかね?」
サンザイはもしかして自分!? なのでは、と考えていたが、自分の身を守るためにはぐらかす事にした。
「クティスが態々貴方を迎えに行ったのは理由があるんですよ」
「理由でやんすか?」
「そう、身代わりにする為に貴方を連れてきたと言うわけですね」
「待つでやんす!!! あっしは白桜様からお金を稼いでこいと言われているでやんす! すみませんが、あっしはブロマイドを使って荒稼ぎしなきゃ行けないので手伝えないでやんす! それでは!」
サンザイはその場から立ち去ろうとしてドアノブに糸をつけて、全身を使ってドアノブを回して出ようとした時、メルトがサンザイを捕まえた。
「メルトさん離すでやんす!!!」
「サンザイごめんね、サンザイを拘束しているだけで金貨2枚は破格の仕事だよね」
「酷いでやんす!!!」
「さぁ! サンザイ! クティスが逃げた分!働いてもらいますよ!」
「嫌でやんす! ブロマイドで稼いでた方が楽でやんす!」
「そんな事はありません。特別手当も付きますし、給料だって、通常の5倍で支払うと凪さんに伝えましたし、白桜ちゃんからもサンザイなら雑に扱っていいと言われましたので、沢山こき使わせてもらいますね!」
「酷いでやんす! 蜘蛛虐待でやんす!」
「サンザイ、ファイト!」
「頑張りたくないでやんすぅううううううう!!!!」
こうして、サンザイはクティスが逃げた代わりにイデアの仕事を手伝う羽目となったのです。そして、それは青雷にも飛び火して、エンデューブに向かった蜘蛛達はイデア邸でイデアの仕事を手伝うこととなったのでした。
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