奴隷オークション 前編
月日が経ち、藍介は着々と奴隷オークションに向けて根回しや準備を行い万全の状態で奴隷オークションに向かったが、主役の2人は緊張していた。
藍介とライネルとネルガルそして、藍介の秘書のアンナは馬車に乗り、オークション会場に向かっていた。
「なぁ、売られる時ってこんなに嫌な気分になるんだな」
「任務って分かってても怖いよな」
「藍介様、この2人で大丈夫なのですか?」
赤いドレスを着たアンナが藍介に尋ねた。
「2人なら大丈夫ですって、根回しは完璧ですし、2人がキチンと調査をしてくれるかが鍵ですからね。ライネル、ネルガル、頑張ってくださいね」
「今すぐに実家に帰りてぇ」
しばらくすると、馬車が止まった。
「おや、到着しましたね。アンナこの仮面を、ライネルとネルガル健闘を祈ります」
ライネルとネルガルは目隠しをされ、馬車から降りた。
藍介は紺の燕尾服を着て、顔は仮面で隠して、アンナをエスコートしていた。
藍介とアンナはオークションの従業員にチケットを渡して会場に入った。
「藍介様、私はこの辺で」
「えぇ、お願いします」
アンナは藍介から離れ2人は別行動した。
「おや! おや!おや! 藍介様じゃぁー!ないですかー!」
すると、1人の仮面を付けた男が藍介に話しかけてきた。
「ナバン様ですか、この様な場では知り合いでも、名前を呼ぶのはやめて欲しいですね」
「すみません、ここに入るのが初めてなもので…。ですが、その、例の物は本当に入ってきているんですよね?」
「それでしたら、この後渡させるリストを確認してもらえればいいだけの事です。それでは、私は失礼しますね」
藍介はその場から立ち去った。
まさか、私の名前を呼んでくるとは、やはり、あの人はバカなんですかね。まぁ、そっちの方がやり易いですが、アンナには魔人とエルフの落札をお願いしましたし、私は当初の予定通り、希少種族のオークションに参加し、ネルガルさんをナバンに落札させなきゃいけませんからね。彼なら全財産を突っ込んででもネルガルさんを落札する確証がありますが、もしもの時は、私が動かなければ。
奴隷オークション2日前の事、ライネルとネルガルは奴隷オークションに出品される同胞を全員落札して欲しいと藍介に頼んだ。
「それは、無理ですね」
「何でだよ! 全員落札しちまえば一件落着じゃねぇか!」
「出来る限りでいいんだ。仲間達を解放してやりたい」
「あのですね。私だって出来ればそうしてますとも、ですが、出来ないのですよ」
「出来ない理由ってなんだよぉ!」
「まず最初に私達が参加する奴隷オークションでは、独占禁止というルールがありまして、奴隷を10人以上落札する事が出来ないのです。まぁ、1人10人までなら可能ですが、それ以上を落札すると、次回のオークションに出禁となってしまうのですよ」
「そんなルールぶっ壊してやればいいんだよ!」
「皆が納得してルールを守っている以上、私1人の力ではルールを変えるは出来ないのです。私は最初、知らずに片っ端から奴隷となった人達を解放してあげようとしていましたよ。ですが、運営の方に目をつけられてしまうと、次回のオークションから、制限をかけられてしまうのですよ。その制限のせいで、救えたであろう人達を救う事が出来なくなってしまうのです。なので、ルールを守らなければいけないのです」
「でもよ」
「ライネル、本来なら俺達がやるべき事を藍介さんにやってもらっているんだ」
「そうだけどよぉ」
「ネルガルさんありがとうございます。買い取った方達には私の商会で働いてもらっています」
「おい! 働かせてるんじゃねぇかよ!」
「国へ帰る際に無一文で帰るのは大変でしょうから、私の商会で働き、その分として人間の国での通貨と魔族のでの通貨の2種類での給料を払っています。白桜のおかげで魔族の国の通貨は確保できましたからね。まさか、あれほど溜め込んでいるとは思いもしませんでしたよ」
「あー、確か、ブロマイドだっけな?」
「斬新で素晴らしいアイデアですよね。話が脱線してしまいましたが、奴隷の皆さんを全員買う事は不可能だと言う事が分かりましたか」
「そんならよぉ、奴隷商人を片っ端からぶっ殺すって言うのはどうだ?」
「あのですね。水面下での救出作戦をしている中、そんな事をされてしまったら、殺人の犯人が魔人と知られてしまった場合、奴隷として連れてこられた方達の命を危険に晒してしまうのですよ」
「それでも、助け出す事はできるじゃねぇか!」
「目の前にいる人達限定で、です。そして、奴隷商人を殺して次の奴隷商人を殺すとなると、警戒され殺すのがどんどん難しくなっていきます」
「くそぉ、ここに来てからよぉ。奴隷の人達を見てきたが、扱いが悪すぎてはらたつんだよぉな」
「それは、分かるな。ましてや、同族の人間でさえも鞭を打って働かせている時なんか、俺、驚いたな」
「この国の奴隷文化は根強いですからね」
「藍介さんでも出来ねぇ理由が分かった。それで、俺とネルガルはそのナバンって言う奴の所で何を知ららればいいんだ?」
「それはですね。ナバン様は現在、とある大貴族との交流を図っていましてね。その貴族を調べたいのですよ」
「交流を図っていると言う事は、まだ、交流関係では無いって事だろ、それから、調べたい情報を得ることなんて出来ないんじゃないか?」
「ネルガルさんの言うとおりですが、ナバン家はその貴族の系譜にあたる家系である事が私の協力者のおかげで判明したのです。そして、何度か私もナバン家の方と商談をして調査をした結果、彼の情報通りだったので、この計画を立てました」
「で、その大貴族ってぇ言うんのは誰なんだ?」
「メルバン家ですね。公爵家なのですが、何故か表舞台に一切上らない謎多き貴族なのですよ。あのギルドマスターであるライアーさんでさえメルバン家が公爵家だったなんて知らなかったみたいですからね」
「で、俺達にそのメルバン家の情報を調べろって言うんだな」
「そう言う事です。なので、2人には主人様特製スパイ道具を渡しておきます」
藍介はライネルとネルガルに主人様特製スパイ道具を渡して使い方を教え、奴隷オークションの準備に取り掛かったのでした。
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