ギルドマスター『ライアー』
ギルドマスターのライアーは小さな村でスキル『鑑定眼』を持って産まれた。
彼の鑑定眼は精度が高く、見た物全てのステータスを見る事が出来た。その情報量の多さから、彼の幼少期は大変であった。
目に映る物全てのステータスが表示され、その状態が普通だと思っていたライアーは7歳の時に、両親にその事を話した。すると、両親は彼を高値で貴族に売り払った。
貴族に売り払われた幼少期のライアーは12歳となった。当時の彼は奴隷のステータスを貴族に伝えていた。そんな中、とある魔人の奴隷とライアーは仲良くなった。
「アイダ、嘘をついたら、いけないんだよ」
「そうさ、普通は嘘をついちゃいけない。だけど、君の場合は違う、真実とは時に隠さなければいけない時もある。その為に嘘をつく」
「僕はアイダみたいに奴隷じゃないし、ご飯ももらえて、勉強までさせてもらっているんだ。僕は両親がメルバン様に僕を売ってくれてありがとうって思ってるよ」
「子供にそんな事を言われるとはな、メルバン家は君を利用しているだけだ、彼等に忠誠を誓わない方がいい。君はこのままいくと後悔することになるぞ」
「後悔? ご飯も食べれて、綺麗なベッドで寝れて、字の読み書きと魔法まで教わっているのに、後悔することなんてある?」
「なら、いいさ、これ以上、憐れなガキに何言っても変わらないからな」
「奴隷の君にそんな事言われる筋合いはないんだけどな」
そして、2年後、ライアーは魔人の言葉通り、後悔した。両親はライアーを売ったのではなく、特殊な力を持ったライアーを守ろうとしていた。そして、メルバンは彼の両親を殺し、幼い彼に嘘をつき、7年間彼を騙した続け、彼の力を利用していた。
その事を知ったのは、奴隷の魔人アイダが真相を手紙に残し、アイダの死後、彼の元にその手紙が送られて来たからであった。
「アイダ、僕は、どうすればいいんだ」
ライアーは信じてきた人が仇だと知った時、後悔と共に自分自身に絶望をした。
彼は魔法で屋敷から逃げ出した。そして、生き残る為に冒険者となり、やがて彼は20歳と言う若さでSランク冒険者となった。数々の人々と関わり、真実を伝えることは大切だが、時として、嘘をつかなければいけない時もあるのだと知った。
そして、20年間Sランク冒険者として活動し、41歳の時にギルドマスターに就任した。
藍介が冒険者ギルドに初めて寄った際、ライアーは藍介のステータスを見て驚いた。彼のステータスが2つ存在していた。そして、彼の種族が今まで見たことのない種族虫人となっていた。ライアーは藍介を危険視して2人だけで話す場を設けた。
「ギルドマスターである貴方が私に何のようですかね?」
「単刀直入に聞きます。何故、貴方はこの国へ来たのですか」
「そう言うことですか、貴方の眼の噂は聞いていましたが、まさか、主人様の力でさえも貴方を欺く事は出来なかったと言うわけですね。そうすると、この結界よりも貴方の方が精度が高いと言う事になりますね」
「答えてください。さもなくば、私自ら貴方を殺さなければなりません」
「私のステータスを見て、貴方は私に勝てると?」
「そうですね、1つ目のステータスであれば、私が勝てる可能性もありますが、2つ目が本来の貴方のステータスならば、私が勝てる可能性はないですね。ですが、貴方が何をしたいのかを聞く権利はあると思っています」
「そうですね。仕方ない、知られてしまった以上は全てを語るしか無いですね」
藍介はこの国でやる事を全てライアーに話した。
ライアーはスミスと同様、国と貴族に憎しみを抱いていた。
その後、藍介の計画を知ったライアーは計画に参加する事を決め、藍介とは良好な関係を結んだのであった。
灰土達が馬車の旅をしている中、藍介はギルドに尋ねていた。
「ライアーさん私の仲間がやっと来るのですよ。それで、4名に冒険者になってもらうのですが、彼等をSランク冒険者として認定してほしいのですよ」
「急にSランクと出るとは、藍介さんの仲間も強いのですか?」
「私よりも強いですからね。でも、Sランクになってくれるかどうか、灰土さんなら断りそうなんですよね。多分、私がお願いしたとしても、あの人、真面目だから、Fランクから上がって見せますとか言うだろうし」
「なら、Fランクの冒険者カードに細工でもしてみますか?」
「そんな事が出来るのですか? でも、その場合、FランクじゃなくてSランクになっていたら灰土さん怒ると思いますよ」
「ギルドにのみSランクだと分かればいいですし、メタルリザードの群を討伐した場合、ギルドとしてはその方達をSランクとして認定せざるを得ない状況になります。そして! 溜まりに貯まった未達成クエストを消化してもらえるなんてギルドとして嬉しい限りですからね!」
「そして、彼等を商会専用の冒険者とすれば、馬鹿な貴族も流石にこれ以上襲ってきたりはしなくなりますからね」
「Sランク冒険者と戦いたい貴族なんていませんからね」
「で、貴方が復讐したいメルバン家なのですか、やっと尻尾を掴めたのですよ」
「本当ですか!? ギルドマスターとなった私でさえもメルバン家の情報を掴む事が出来ずにいたのに、どうやって」
「それは、私には小さな協力者が沢山いますからね」
「では、取引として、メルバン家の情報を条件に、これから来る藍介さんの仲間をSランクと認定する事でよろしいですか」
「えぇ、もちろん。あー、もし、灰土さん達が怒った場合は私を呼んでくださいね」
こうして、藍介とライアーは取引を行ったのであった。
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