初めてのクエスト選び 後編
ギルドマスターのライアーはSランクのクエスト『パラディンボーン討伐』を説明し始めた。
「昔、勇者様によって倒された悪しき宗教ゼスレス教所属の聖騎士、人間最強とまで言われた男、カーライルと呼ばれた男が勇者様に負けた死後、凶悪な教皇イーヤヘルドの呪いによってカーライルはスケルトンとして蘇ったのです!」
灰土は緑癒に思念を送った。
『緑癒様、この話は俺と緑癒様のあの悪夢に出て来た人の話なんじゃないか』
『えぇ、悪しきと言われるのは気に食わないですね。悪しき方はあの勇者なのに』
「そして、彼はパラディンボーンとなり、彼が亡くなった場所に通るものを襲うようになったのです」
「その〜、パラディンボーン〜って強いの〜?」
「そりゃあもう、強いですとも、過去に勇者様がパラディンボーンの討伐に挑みましたが、倒すことができずに彼をその場所に封印することが出来たと伝承されています。そして、その封印が弱まり、民間人を襲う事件が起きましてね。それで、国が全ギルドに討伐依頼をしたのですが、名だたるSランク冒険者でさえも歯が立たず、数100年間このクエストは未達成のままなのですよ」
「ハッハー! そんな強いやつなら俺様の相手に不足なしだな!」
「氷月、分かった。メタルリザードとパラディンボーンを受けることにする。だが、薬草採取もやるぞ」
「草取りはいらんだろ!」
「ダメだ、表向きは薬草採取を受けた形にしたい」
「灰土さん! ありがとうございます! そうそう、灰土さん達のパーティー名は何て言うのですか?」
「パーティー名? なんだそれは?」
「冒険者がパーティーを組む時にギルドに申請をするのですけど、その時にそのパーティーの名前を決めて貰っているのですよ。ですから、是非ともここでパーティー名を決めて貰って、パラディンボーン討伐時に大々的に灰土さん達パーティーを全ギルドに広めたいのです!」
「パーティー名、ハッハー! 氷月と3人の家来なんてどうだ!」
「はぁ〜? 家来になった覚えないんだけどな〜。そうだな〜。紫龍なんてどう〜? カッコよくない〜」
「ナギハクルなんてどうでしょう」
『緑癒、それはどう言う意味でナギハクルになったんだ?』
『主人様はいずれここに来ると言うことを知らしめたいなと思いましてね。凪は来る、ナギハクルですね』
『主人様を〜使われちゃ〜、賛成するしかないな〜』
『妻は来るか、ハッハー! 良いなそれ! ナギハクルで俺様はいいぞ!』
「緑癒のパーティー名にしよう。俺達はこれから、冒険者パーティー、ナギハクルだ!」
「ナギハクルですか? まぁ、皆さんが満場一致しているのであれば、良いのですが、ナギハクルで登録しておきますね。今日はどのクエストに行きますか?」
「パラディンボーン、メタルリザードの群は情報が少なすぎるからな、討伐は藍介に頼んで情報を仕入れた後となるな」
「ギルドの情報だけでは信用ならないと?」
「まぁ、嘘をつくような奴を信用なんか出来んからな」
「そんなことを言わずに、私だって貴方達が嘘をついているぐらい分かっているのですよ」
その瞬間、氷月はライアーの首を掴んだ。
「ハッハー!やはりだな! お前、妻の力が効いてないな」
「氷月!? 一体何をしているだ!」
「今すぐにライアーさんを離してあげてください!」
「氷月〜、首を掴むのはやり過ぎだよ〜」
氷月に首を掴まれているのにライアーは笑っていた。
「おい、お前は笑っている場合じゃないだろ」
「まぁ、氷月さん落ち着いてください。いや、様をつけた方が宜しいですね。この世に3体しかいないとされる魔石精霊の氷月様」
「俺様のステータスを覗いたな」
「はい、覗くも何も、私は生まれた時からずっと、全ての者のステータスを見る事が出来るのですよ。だから、私はこの力でSランク冒険者となり、そして、ギルドマスターまで登り詰めたのです」
「嘘〜!? 俺達のステータス勝手に見られてたって事〜!?」
「これは、まずいな。彼を殺すしか、無さそうだな」
「いけません! 彼を殺すのは反対です。ギルドマスターの地位を持つ者を殺した場合、面倒ごとになるのは目に見えてますよ」
「だが、俺達の存在を知る者は殺すべきだと俺は思う」
「もうそろそろ離してもらっても宜しいでしょうか。私は貴方達の本来の種族を公表するつもりはありません。そもそも、私は藍介さんと面識があり、私の眼によって彼が虫人だと知っています」
「それなら〜、藍介を呼ぶしか〜無いんじゃない〜」
「そうだな、紫水、黄結姫様を通じて藍介様を呼び出してくれ」
「了解〜」
紫水は黄結姫経由で藍介を呼んだ。
「白桜ちゃんを連れてこっちに来るって〜」
「その間、俺様がこいつの監視を行えば良いな!」
「そうだな、まさか、こんなに早くバレるとはな」
「せめて、首を掴むのはやめてもらえませんか?」
「藍介が来るまではそのままだ!」
「私は貴方達の敵ではないですよ」
ライアーは藍介が来るまで氷月に首を掴まれた続けてたのでした。
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