人間の国へ!
長達は魔蟲の森から出て藍介のいる人間の国の王都タユタナへ向かっていた。
主人様から馬車を2台貰い、馬はいないので紫水は水を操り水馬で馬車を引いてもらっていた。
先頭の馬車の中には紫水、灰土、緑癒、氷月、後方の馬車には花茶、紅姫、白桜でネルガルとライネルは水馬の手綱を交代で握っていた。
「紫水魔力をここで使っても大丈夫なのですか?」
緑癒は長旅になるので紫水の魔力不足を心配した。
「このぐらい余裕だよ〜、花茶ちゃん達の馬車はネルガルと交代だし〜、主人様と〜結魂した時から〜、俺の魔力〜めっちゃ多くなったから〜、余裕〜余裕〜」
「水の馬よりも俺様の魔石の馬の方がかっこいいぞ!!!」
当初は氷月が馬を作ると言い出したが、魔石で出来た馬を引き連れて人間の国へ行くのは危険行為。なので、紫水が担当する事となった。
「主人様のおかげでお尻へのダメージは軽減出来てますが、ずっと座り続けるとお尻が痛くなってきますね」
「本当それだけ辛いよね〜」
「そうか? 俺様は尻は痛くないぞ! むしろ外を走ってみたいな!」
水馬の手綱を握っていた灰土は辺りを警戒しながら藍介から贈られた地図を頼りに進んでいた。
「氷月! 外を走るのは禁止だからな! 迷子になることが目に見えている。紫水! 緑癒! 氷月から目を逸らすなよ!」
「分かってるって〜」
「俺様は迷子などにはならんぞ!」
「僕には見えています。氷月さんが馬車から降りた瞬間、迷子になると」
「怖いこと言わないでよ〜」
そして、夕陽が沈み辺りが暗くなったので馬車を止めて野宿する事となった。
「これが! 外! ハッハー! 素晴らしいじゃないか!!! 俺様はもう! 自由なんだ!!!」
氷月は馬車から飛び降り、何処かに走り去ってしまった。
「おい! 紫水! 氷月を捕まえろ!!!」
「僕はご飯の準備してますね。お二人とも頑張ってくださーい」
緑癒は紅姫とライネルの3人で夕飯の準備を始め、花茶と白桜、ネルガルは辺りの警戒していた。
「ありゃ当分帰って来そうにないな」
「花茶も追いかけっこ行きたい!」
「花茶! 今日はスープ作るから味見を頼む!」
ライネルは今にも走り出しそうな花茶に味見を使って引き留めた。
「ライネル!ナイスね!」
「おうよ! 花茶、もうちょい味濃い方がいいか?」
花茶はスープの味見をした。
「美味しい! うーん、そうだね、もう少し濃くてもいいかも」
「了解」
料理班は順調に調理が進み、氷月追跡班はと言うと。
「ねぇ〜、あいつどこに行ったと思う〜?」
「俺は空から探すから紫水は地上を頼む」
「え〜、俺寝ていたいよぉ〜」
「主人様に氷月のおもり任されているだろ、主人様を失望させる気なのか!」
「いや〜、そんなことはしないけどさ〜。氷月も〜、やっと外に出られて〜、嬉しいんじゃない〜」
「そうかもしれないが、それでも皆から離れるのはダメだ! 何かあってからじゃ遅いからな」
「いや〜、氷月強いから〜、何かあるって言っても返り討ちにしそうじゃん〜」
「もしかしたら、人間と遭遇していた場合、面倒だとは思わないのか」
「あ〜、頑張って探すよぉ〜」
灰土は空から氷月を探し、紫水は水を犬の姿へ変化させて辺りを探させた。
氷月は荒野を走り、自由を実感していた。
「これが、自由! ダンジョンに縛られない開放感! 妻には申し訳ないが、最高に気持ちいいな!」
すると、氷月の前に大きな水色を帯びた銀色のトカゲが現れた。
「おー! 妻からのプレゼントを試す時だな! 行くぞ!」
氷月は大きなトカゲの首を切り落とした。
「なんだ、弱いじゃないか」
「いた!!!!! 氷月様!!! 勝手に行動しないでください!!!」
「灰土じゃないか! 丁度今晩のおかず見つけたぞ!」
「おかずってトカゲですか」
「そうだ! 皮は鉱物でできているから食べれんが、肉はなかなか旨そうだぞ!」
「あ〜!いた〜! って、そのトカゲどうしたの〜?」
紫水も合流して3人はトカゲを馬車まで持ち帰った。
ライネルとネルガルはそのトカゲを見て驚いていた。
「おいおい! マジかよ! メタルリザードじゃねぇか!」
「ライネル、メタルリザードじゃない。 こいつは、ミスリルリザードだ!」
「マジかよ」
「その、メタルリザードとミスリルリザードは何か違うのですか?」
「メタルリザードの主食が鉱石でなそいつがいるってことは、鉄が大量に取れる場所があるって事になるから貴重な存在なんだよ。ましてや、皮膚が鉄出て来ているからまともな攻撃じゃ刃が立たないが魔法攻撃なら有効。でも、ミスリルになると話が違ってくる。ミスリルって言うのは魔力抵抗が強く、鉄よりも強度がある事から武器や防具に使われるんだが、希少すぎてミスリル武器や防具なんて滅多に見れない品物なんだ」
「ネルガル物知りだね〜」
「常識だろ! もしかしてだけど、これをやったのは氷月さんか?」
「そうだとも! 妻からもらったこの剣! 大氷斬! の試し切りがしたかったからな!」
「もう、名前決めてるんですね。にしても、切れ味やばいな」
「だが、消化不良だな、俺様はもっと楽しめると思ったんだが、一撃で終わってしまった」
「それならよぉ。氷月さんには大剣を使ってミスリルリザードを解体してもらって、その肉をタレに漬けておくか」
「それって、もしかして、トカゲさんのお肉の唐揚げ作るの!」
花茶の顔はキラキラと輝き始めた。
「今日じゃねぇからな」
花茶の2本のアホ毛がシュンと垂れ下がった。
「はぁーい。食べたかったなぁ」
「今日より明日の方が美味くなるから我慢しろよな」
「はぁーい! 明日はトカゲさんの唐揚げだ!!!」
その後、氷月と灰土は緑癒の指揮の元、ミスリルリザードの解体を行い、肉はライネルは持って来ていたタレに肉を入れてタッパに小分けにして、灰土のバックの中にミスリルリザードの皮を収納したのであった。
そして、10日間の馬車に揺られ、藍介と黄結姫が最初に足を運んだワラン村に辿り着いたのであった。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。