長達の旅立ち
とうとう長達が人間の国へ行く事ととなった。それは、唐突に決まり、女性陣はやる気に満ち溢れ、男性陣は、紫水が大暴れ、灰土が抑えつけたが、胃にかなりのダメージを負っていた。
魔蟲の森で長達の門出を祝いパーティーが開かれていた。
灰土は胃の調子が悪いのを緑癒に尋ねていた。
「緑癒様、この頃、胃がキリキリするのですが、俺は何かの病気にかかっているでしょうか?」
「僕の医神の眼ですと、ストレスが原因みたいですね」
「ストレス? ですか?」
「はい、例えば、さっきまで暴れてた紫水を止めるときや、チームでの戦闘訓練中に勝手に前へ突き進む氷月さんだったり、冒険者になる為の訓練がかなりストレスだったのではないですかね。一応、僕の鱗粉を胃の辺りに振りかけますので様子見ですかね」
「緑癒様、ありがとうございます」
「いえいえ、リーダーの灰土さんには頑張ってもらわなければいけませんからね」
「主人様にリーダーを任された以上、俺は全身全霊で頑張ります!」
その頃、紫水は主人様の説教を受けていた。
「ごめんなさい〜。でも〜、でも〜、俺は〜、主人様の側から離れるのが嫌なんだ〜!!!」
「それでも、結魂した時に約束したでしょ。約束を破る人は私は嫌いよ」
「そんな〜。それなら〜、藍介の仕事手伝い終わったら〜、主人様と〜、ムフフなことしたいな〜」
「ムフフなことって何やるのよ?」
「それはね〜、それはね〜。もう〜、考えただけでニヤけちゃうよ〜」
「紫水! 私に何をやらせる気なのよ!!! 変なことだったら私やらないからね!」
「主人様が〜、俺と〜ムフフな事してくれるって約束してくれたら〜、俺〜、頑張って〜行きたくもない人間の国へ行くよ〜」
「分かったわよ。藍介の仕事の手伝いが終わったらムフフな事やってあげるから、頑張りなさい!」
「やった〜!!! 主人様と〜、ふぇえええーえ」
紫水はムフフな事を考え顔が常にニヤけていた。
白桜は紅姫と一緒に最終チェックをしていた。
「お母様、お弁当!」
「オッケー!」
紅姫はパンパンに詰め込まれたリュックの中からお弁当を取り出した。その後も確認を続けて準備は完了した。
「お母様! あたし達の服を売って、売って、ブロマイドも売れるようなら売って売って売って! お金を稼ぎまくるわよ!!!!」
「おー! 白桜がこんなに楽しそうにしているなんて、私も楽しくなってきましたわ!」
「お母様があたしの服のモデルなら余裕で藍介様の売上を簡単に越えられるわ!」
「でも、私皆さんよりも背丈が大きいのだけど、私は人間の国へ入れるかしら?」
紅姫が自身の体の大きさから人間の国へ入れるか悩んでいると、そこにアがやって来た。
「紅姫さん少しだけ縮みたいの?」
「ア様! 私に話しかけてくれるなんてとっても嬉しいですわ! はい、この背丈だと人間に恐れられるかもって思ってしまって」
「それなら、私が紅姫さんを縮めてあげるわね」
「本当ですか! よろしくお願いします!」
「ちょっと待った!!!! 縮ませるのはいいけど、身長は180センチ以上でお願いします!」
「分かったわやってみるわね」
アは手のひらから魔石を作り出し、紅姫の腹の辺りに魔石を軽く押し付けた。すると、ゆっくりと紅姫の体は縮まり、人間の女性にしては高いぐらいの背丈となった。
「ア様! ありがとうございます!」
「久しぶりにこの魔法使えたから、こちらこそありがとう」
すると、パタパタと走ってくる音が聞こえた。
「あ! いたー! アお姉ちゃん! 花茶も行くんだよ!」
「え? 花茶ちゃんも人間の国へ行くの?」
「うん! ライネルお兄ちゃんとネルガルお兄ちゃんも一緒だよ!」
「どうして魔族の2人がついて行くわけ!?」
「それはね」
当初、花茶は洞窟へ待機となっていたが、花茶も藍介の元へ行きたがっていた。なので、主人様が考えた結果、藍介に花茶に護衛を付けることを提案した。そして、護衛は誰がやる? となった際、ライネルとネルガルを花茶の奴隷兼護衛として連れて行かせることとなった。
「まさか、俺達が人間の国へ行くなんてな」
「だな、花茶ちゃんの護衛って言われた時、俺めっちゃ驚いたからな。サーフィンは任務が終わるまでお預けかぁ」
「ネルガルは羽目を外し過ぎなんだよ」
そして、パーティーも終盤となり、主人様は一人一人にとある物を贈った。
長達とライネルとネルガルは横一列に並んだ。
「氷月にこの大剣を」
氷月には刀身が氷付いた大剣を渡した。
「おー!!! カッコいいじゃないか! 妻よありがとう!」
「灰土にはこの盾と剣を」
灰土には大楯と魔石が持ち手に埋め込まれた剣をプレゼントした。
「ありがとうございます! 大切に使わせていただきます!!!」
「紫水にはこの杖を」
紫水には水色の大きな魔石が取り付けられ金属で造られた杖を渡した。
「ありがとう〜! 主人様〜! 大好き〜!」
紫水が主人様に飛びかかろうとした時、灰土は紫水を止めた。
「やめろよ〜! 主人様に感謝のハグをするんだ〜!」
「今はダメだ!」
そんな中、主人様は何事もなかったような素振りで緑癒に贈り物を渡した。
「緑癒にも杖ね」
緑癒の木製の杖には蚕が彫られていた。
「ありがとうございます! 凪教を布教して参ります!」
「紅姫には鉄扇よ!」
紅姫の鉄扇は持ち手に赤い魔石が埋め込まれ、開くと蜘蛛の巣模様が描かれていた。
「ありがとうございます! この重さちょうど良いですわ」
「白桜には手袋ね」
「ありがとうございます! これで敵をぶん殴ればいいんですね!」
「違うわよ。手の先から糸を出せるようになっているのよ」
白桜に渡した真っ白な手袋には指先から白桜が使える糸が出るように魔法が組み込まれていた。
「後で練習してみます!」
「花茶! 花茶には何くれるの!!!」
「花茶にはこのマイクよ!」
マイクの持ち手には緑色の魔石が埋め込まれ、花柄のマイクであった。
「えー!!!! 花茶もっとかっこいい武器がいい!」
「アさんのリクエストだから仕方ないのよ」
急にアが叫んだ。
「花茶ちゃん! 可愛いわよ!!!!」
「仕方がないかぁ」
花茶は渋々マイクを受け取った。
ネルガルとライネルは新しい武器に胸を膨らませていた。
「俺たちには何をくれるんだ!」
「楽しみだぜ!」
「2人にはこれよ」
主人様から2人に贈られたのは、赤い魔石が埋め込まれた首輪であった。
「首輪? 俺の喉を助ける魔法でも付与されてんのか?」
「いや、それだったら俺には必要ないんじゃ」
「違うわよ。これは、奴隷が付ける首輪よ」
「まじかよ。俺達の武器は?」
「無しに決まっているじゃない。そもそも、一個ずつもってるでしょ」
「そうだけどよぉ。この流れでこれはないぜぇ!!!」
「俺もかっこいい槍が欲しい!」
「かっこいいグローブが欲しい!」
「ダメよ! 新しい武器が欲しいのならちゃんと花茶を護衛するのよ!」
「主人様違うよ! 花茶が2人を守ってあげるの!」
「ほら、花茶にこんなこと言われているのよ、キチンと仕事して来なさい」
「はぁーい」
「はーい」
2人は首輪を付けた。
そして、長達とライネルとネルガルは人間の国へ向かったのでした。
500話という事で次回から新たな章となります!
人間の国での長達の活躍や、居なくなった後の洞窟での出来事、新たな長誕生?など、これからも楽しいと思える話を書きたいと思います。が、人間の国のお話はいつもとは違う、シリアスな展開、残虐な行為を書く可能性があります。
すみませんが、1週間ほど投稿をおやすみをします。次回投稿は3月15日となります。(別にモンスターを狩に行きたいとかじゃないですよ。ちょっと、人間の国編では、かなり書くのがしんどくなるので、その分の心の休憩なのです!)
そして、次回投稿からは月・水・土曜日の週3投稿となります。
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