獣と巨人
イデアはディアの頭部を村へ持ち帰りディアの父親に渡した。
父親は泣き崩れ、イデアもまた涙を流した。
「神獣様、どうして、私はこんなに弱いのでしょうか、娘の代わりに私が死ねばよかった」
「代わりに死ぬなんて出来ないよ。僕にできるのは、これぐらい」
イデアはディアの頭部に防御魔法をかけた。
「これは、いったい」
「僕が帰ってくるまでディアを頼むね。それじゃ」
「待ってください! 神獣様!!! 私は娘の仇も自分でとれないなんて、なんて、情けない親だ」
ディアの父親は彼女を抱きしめ、天を仰いだ。
イデアは巨人の匂いを頼りに彼等を探した。
そして、5日が経った時、10体の武装した巨人を見つけた。
巨人の肌は黒く、鎧や武器は金色に光り輝き、それぞれに太陽の模様が彫られてあった。
「あれが、巨人か、デカいけど、僕の方が強い」
イデアは巨人の前に立ち塞がった。
「お前らは何故人間を殺しまわっているんだ!」
リーダー格の巨人が応えた。
「獣が話すなんて珍しい、ラトム様が喜ぶかも知れぬな。こいつは生け取りにしろ」
「おい!僕の話を聞け! 人間を殺しまわる理由を答えろ!!!」
「そんなの決まっている。我等の王にして神、ラトム様のご意向だ。人間なぞ、この世界の毒、そのもの、我等は増え続けた毒を取り除いているだけだ」
「毒だって、お前達のほうが命を粗末に扱う残虐な奴らだ。この世界において、お前達こそ毒そのものだ!」
イデアは巨人の腕目掛けて噛み付いた。そして、巨人は腕に噛み付いてきたイデアを振り払った。
「何故、獣は人間にこだわる。お前のほうこそ、人間を下等な種族だと考えているのではないか」
「僕は最初そう考えていたさ、でも、ディアと暮らして違うってなった。彼等は生きるために必死なんだ」
「それが、森を壊し、川を汚し、他種族の者達の尊厳を踏みいじる行為をしているのが人間だ。お前は人間の所業を全て知っている訳じゃないのだな。ラトム様は世界の全ての種の保存を掲げ、行動しておられる。その中にも人間も含まれているが、それはごく僅かな我等の行動に賛同する者達だけだ。他は皆資源を食い荒らす害でしかない」
「何を言っているのか僕には分からないや。僕が守るべきものは」
イデアは初めて守るべきものを見つけた。
「僕は、人間を守る。僕にこの感情をくれた人間のために!」
「ならば、我等の敵だ」
イデアは10体の巨人と戦い、巨人の攻撃はとても重く、痛く、何度も死にかけた、だが、イデアは巨人の喉を鋭い爪で切り裂き、頭部を噛み砕き、逃げ出した巨人を追いかけ、殺し、辺りは巨人の血で真っ赤に染まった。そして、殺した巨人の心臓を喰い、魔力を蓄えた。
「僕、こんなに強かったんだ。はぁ、はぁ、でも、僕、5回ぐらい死んでないか?」
イデアはその時自分が不死の存在だとは気付いていなかった。
その後、イデアは人間を襲う巨人から人間を守り、その戦いの中で、自身が不死だということを認識したのじゃ。
花茶は気になったことがあったのでフローゼラーに質問をした。
「ねぇ、フローちゃん。心臓を食べたら魔力を貯められるの?」
「そうじゃよ。心臓は生命力と魔力を全身に流すためにとても重要な器官なのじゃ。それを喰らうということはその人の生命力と魔力を喰らう事となるのじゃ。じゃが、それは危険な行為なんてしないほうがよいぞ、もし、力を付けたくて自分より強い魔力の者の心臓を喰らった場合、自分の体が魔力量に耐えきれずに体が爆散してしまうからのぉ!」
「爆散、もしや、藍介さんのアレってそういうことなのか? いや、でも、あれは魔力だけを放出してるよな?」
ライネルはたまに爆発する藍介を思い出したのであった。
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