獣と少女の別れ
「イデアとディアは5年もの間共に森で生活をしておった。ある日、ディアの妹が1人で森へやってきたのじゃ」
ディアは5年間で美しい女性となり、イデアはそんな彼女の事が好きなっていた。だが、妹が話した事は彼女との別れを意味していた。
「お願いします! 村を救ってください!」
「流行病、カクネル草があれば助けてあげられるわ!」
「ディア村へ行くの? 薄情な奴らを助ける義理なんてないんじゃない?」
「イデア、お願い、私は村の人達を助けたいの」
「ディアが行かなくてもいいじゃん。ほら、その草持って行っていいから、早く村へ帰りな」
イデアはカクネル草を引っこ抜き、ディアの妹の前に置いた。
「お姉ちゃん、お願い、お父さんが、もう」
「イデア、ごめんなさい。私は村へ帰るわ」
「嫌だよ。ディアもこの森で暮らすのが楽しいって言っただろ、僕を一人にするの」
「村を助けたらここへ戻るわ。イデア、私を信じて」
「嫌だ!!! 僕を置いて行くなんて、ディアなんか大嫌いだ!!!」
イデアは森の奥へと走り去ってしまった。
そして、イデアは頭を冷やしディアがいた所へ戻ると、彼女は妹と共に村へ帰ってたのじゃ。
「ディア、なんていなくて済々するね!僕は元々1人でも生きていけるんだ! あんな弱い奴を世話しなくて済むなんて楽できていいじゃん!」
イデアは最初は彼女がいない事に強がっていた。が、徐々にディアがいない寂しさに襲われた。
「ディア、もう3ヶ月も待ってるよ。いつになったら帰ってくるの。よし、僕があの草沢山持って行ってあげれば、村の弱い人達を早く治して、ディアとまた一緒に森で暮らせられる。よね?」
イデアはディアが作った布に沢山の草を詰めて、村へ向かった。
だが、その村は何者かに襲われた後であった。
「あれ? 村で何かあったの?」
イデアは村が半壊している事に気付き、項垂れている人間の男に話しかけた。
「ねぇ、この村にディアがいると思うんだけど、どこにいるか知らない? それに、嗅いだ事のない匂いがそこらじゅうにあるんだけど、村に何か起こったの?」
男は頭をあげ、イデアを見た時、涙を流し出した。
「あぁ、神獣様、神獣様だ。お願いです。ディアを私の娘ディアを助けてください」
「ん? ディアを助けてってどう言う事?」
「それは、3日前、この村は巨人族に襲われ、女と子供を全員巨人族が攫っていったんです。男達は巨人族と戦い、そして、死に、私は、体が弱く使い物にならないと言われ、何も出来なかったのです」
「3日前、この匂いを追えばディアがいる。分かった、僕に任せて!」
イデアは嗅ぎ慣れない匂いを頼りにディアを助けに向かった。だが、匂いは腐敗臭へと変わり、イデアが見たのは、人間の死体が山積みにされた丘であった。
「え、ディア!!!」
イデアはその凄惨たる光景を見て、思考が一度停止したが、ディアを見つけようと死体の山を掻き出した。
「ディア! ディア!ディア!!!」
そして、イデアはディアの頭部だけを見つけ出した。
「あぁ、あああああ!!!! ディア! どうして、そんな、なんで、僕、ディアを助けにきたのに、僕、ディアに謝りたかったのに、ディア! ディア!!!」
イデアは初めて愛を知り、そして、初めて絶望を知った。
三日三晩彼女の亡骸を抱き抱えながら泣き続け、その悲しみは次第に巨人族への憎しみへと変わっていったのじゃ。
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