獣と少女 後編
人間の少女は獣の背に乗り、森へ向かった。
「いやぁぁぁあ!!! 死んじゃう! しんじゃっ!」
「あぁー、舌噛んじゃったね。痛そう」
獣は全速力で走りながらも少女の反応を面白がっていた。
無事に森に着いた少女と獣は獣の寝床へ行き、お喋りをはじめた。
「村を出る時元気そうにしていた男が君の父なんでしょ? 元気になったって事なのかな?」
「はい! 薬草のお陰で元気になったんです」
「そうかぁ、ねぇ、なんか面白い話してよ」
「お、面白い話ですか。そうですね。その前に私の自己紹介しますね!」
「自己紹介?」
「私の名前はディア! 父と妹の3人家族です! 普段は畑の仕事を手伝ってます」
「ディアって言うんだね」
「はい! 獣さんの名前はなんて言うのですか?」
「僕? 僕には名前なんてないよ。そうだ! いい事思いついた! ディアに僕の名前付けてもらおう!」
「えぇ!!? わ、私が獣さんの名前を考えるのですか!?」
「うん、カッコいい名前じゃなかったらやり直し、僕が満足するまで名前を考えつづけてね」
「えーーー、と、名前、獣さんの名前、それなら、ポチってどうですか!」
「嫌だ」
「それなら、メンボウ!」
「嫌だ」
「メッチャッパ!」
「やだ」
「パックーンパク」
「なにそれ?」
「クーラング」
「微妙」
こうして、少女ディアは獣の名前を考え続ける事3日間が経った。
「ダメだー! 私じゃカッコいい名前考え付かないよ!!!!」
「頑張れ」
獣は尻尾を優しくディアの体に当てた。
「モフモフ、獣さんの尻尾最高に気持ちいい」
ディアは3日間獣と行動していたが、森での生活も悪くなく、寧ろ村での生活よりも森での生活が好きになってきていた。
「そうだ! 私の名前を少し変えて考えてみようかな! ディア、ディア、アイデ!」
「アイデはどう!」
「微妙」
「デアイ!」
「嫌だ」
「イデア」
「ん? もう一回さっきの名前言ってみて」
「デアイ!」
「違う! その次!」
「イデア」
「それだ! その名前カッコいいじゃん! よし! 今日から僕の名前はイデア!」
「やっと終わった!!!! 長かった」
「お疲れ様、今日は川に行って魚でも取りに行こうか」
「今日はお魚祭りだ!!!!」
「食べられる分だけだからね」
獣の名前が決まり、イデアとディアは仲良く川へ魚を取りに向かったのでした。
フローゼラーは少女と獣の馴れ初めまでを話した。
「と、言うふうにじゃ。イデ坊は人間の少女が名前をつけてくれたな、イデ坊はその少女ディアを気に入ったのじゃよ。じゃが、そんな平和で楽しい時期はすぐに過ぎ去ったのじゃ」
「おー! イデアおじちゃんの名前の由来って人間の少女が考えたんだね!」
「俺は名前の所は知らなかったな。俺が知ってるお伽話は、仲良くなった人間の少女が巨人に殺されて、イデア様が激怒したって話だからな」
「まぁ、概ねそんな感じなのじゃが、そんな簡単に住む話じゃないのじゃよ。当時は巨人が陸を制し、次は海をも征服しようとしていた時であったのじゃ。そのせいでわしは人魚、魚人を束ねるのに奔走していたのぉ」
「フローゼラー様って何歳なんですか?」
「ライネル、女性に歳を聞くもんじゃないのじゃ!」
「そうだよ! フローちゃんは花茶と同じぐらいだよ!」
「いや、それは無理があるだろ」
「無理じゃないのじゃ! わしはピチピチの14歳なのじゃ!」
「花茶もピチピチの14歳だよ!」
「若い奴はピチピチなんて言わないんだよ!」
「よし、次に行くのじゃ。次の話はのぉ。なかなか辛い話になるのじゃ」
「辛い話になるの?」
「これからは俺が知っているお伽話になるんだな」
「そうなのじゃ、まぁライネルが知っているのは子供に読み聞かせる為に表現を簡略化したものじゃが、これから話すのは本人から聞いた体験談となるのじゃ」
「ワクワク!」
フローゼラーはイデアのその後の話を語り出したのでした。
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