獣と少女 前編
フローゼラーはアビーサと夕食を食べた後、花茶に会いに行った。
「ここが花茶が暮らしている家! 風情があって落ちつきがあっていいのじゃ!」
ライネルは玄関先に人の気配を感じ、警戒しながら扉を開けた。
「って、フローゼラー様じゃねぇか」
ライネルは警戒を解いた。
「ここは花茶の家と聞いていたが、何故、ライネルがいるのじゃ?」
「花茶がアの話の続きが気になるって言うんで、俺がイデア様の昔話をしにきたんですよ」
「おー! ライネルも災厄のラトムの話を知っているのじゃな!」
「そりゃあ、定番のお伽話ですからね」
「ふむ、ならわしが話すのじゃ!」
「ライネルお兄ちゃん! お伽話早く聞きたい! あれ? フローちゃんだ! どうぞ!どうぞ! 上がって!」
「お言葉に甘えるのじゃ」
そして、フローゼラーは花茶の家に上がり、花茶とライネルに終焉の獣の話を始めた。
「イデ坊が、まだ名前もなく1人寂しく森で暮らしていた時の話なのじゃ」
獣が住む森は他の森とは比べ物にならないぐらい、森全体に魔力が高く、珍しい薬草が生い茂り、当時、世界で1番美しいとされていた森であった。
獣は日々退屈をしていた。そんな中、とある人間の少女が父親の病を治すべく、1人森へ入っていった。
「カクネル草は確か、ここら辺に無い! うそ! これ以上奥に行ったら化け物に出会っちゃう。どうしよう」
少女は前見つけていた場所に薬草がなくなっていた。少女は意を決して森の奥へ入っていった。
「あっ! あった! これよ!これ!」
そして、少女は薬草を見つけ喜びの束の間、森の化け物にであってしまった。
化け物の頭は骨を被り、5つの眼を持ち、毛深く、4足歩行の狼に似ていた。
「きゃー!!!!!」
「煩いな、少しは静かにしなよ」
「化け物が喋ったー!!!!」
「化け物って僕はね、まぁ、化け物か」
「ぎゃぁぁぁぁぁあああ!!!!」
少女は今までに出したことのない声で叫び続けた。
「ねぇ、君はこの森に何をしにきたの?」
「え? その、父が病を患い、カクネル草をとりにきました」
「へぇー、そうなんだ。確か、君達は人間って言うんだよね。病に罹るとか弱い種族なんだ」
「勝手にカクネル草をとってごめんなさい。今すぐに帰るので許してください!」
「許すも何も僕には関係ないんだけどな? それじゃあ、許してあげる代わりに、僕の暇つぶしになってよ」
「暇つぶしですか?」
「そう、僕いつも一人で暇なんだよね。狩をしなくても魔力だけで生きていけるし、何もする事なくて暇なんだ」
「そうなんですね」
「うん、だから、今日は帰っていいけど、明日から僕の暇つぶしに付き合ってね」
「は、はい! ありがとうございました!」
少女は村まで全力で走り続けた。
そして、次の日、獣は彼女を待ったが、彼女は森へ来なかった。次の日も、次の日も、10日間待っても来なかったので、獣は彼女に会いに村へ向かいました。
村は木の塀に囲まれ、男達は槍を構え、村を守っていた。
「ここが、村って所か、僕に嘘ついたんだから、全部壊してもいいよね」
獣は嘘をつかれたことに少しだけ怒っていたので、村を壊す事にした。
「化け物だ! 化け物がきたぞ!!!」
村にいた男達は獣に向かって槍を構えた。
「僕とあんな小さな枝で戦おうとするなんて、人間って馬鹿なんだな」
村の男達と一触即発となった時、1人の女性の声が聞こえた。
「待ってください!!! あの子は悪い子じゃないんです!!!」
少女は獣の前まで走った。
「わざわざ迎えにきてくれてありがとう。遅れちゃってごめんなさい!」
「僕に嘘をついたんだから、死ぬ覚悟は出来ているって事でいいんだね」
「待ってください!森に行きたくても、父の看病があっていけなかったんです!」
「そう、それじゃあ、僕の暇つぶしに付き合ってくれる?」
「はい! 今すぐに準備するので待っていてください」
「うん、分かった。早く準備してね」
少女は家族に別れを告げ、獣と共に森へ向かったのじゃ。
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