巨人の少年の恋 中編
一緒にお風呂に入った次の日、ラトムが目を覚ますと、柔らかな草の上でアが隣で眠っていた。
ラトムは昨日の出来事を思い出し、夢じゃなかったのだと実感した。
「僕は、熱い水の中に入れられて、それで、悪魔の体を見ちゃって」
心臓がギュッと痛くなり、鼓動も早くなった。
「あら、坊やおはよう」
「悪魔!僕に近付くな!」
「酷いわね、昨日は私の腕の中でスヤスヤ寝ちゃってたのに、起きた早々そんなことに言われるなんて、私傷つくわ」
アは嘘泣きをした。
「いや、僕に呪いをかけた、悪魔が悪い。けど、その、泣かないで」
「嘘だよーん! そんな事で私が泣くはずないじゃない!」
「僕を騙したんだな!」
「よし、昨日のお肉も少し残っているから朝ごはん作るわね」
アは起き上がり、昨日残った鹿肉をまた焼き始めた。
朝食を食べ終え、アはラトムに魔力の使い方を本格的に教えることにした。
湖の背にアはラトムの頭に右手を置いていた。
「坊や、まず最初に自分自身の魔力を感じ取る練習をしましょう」
「どうして、僕の頭に手を置くんだ?」
「自分の魔力を感じ取ることが出来ないのは、一度も魔力というものを認識してこなかった事が原因なのよ。だから、私の手を通じて坊やに魔力を流し込むから目を瞑って感じてみて」
ラトムは目を瞑り、アは彼に魔力を流した。
ラトムは暖かな陽射しの中にいるような感覚がした。そして、ゆっくりと頭から温かい光が下へ流れている事を感じ取った。
「この温かい光が魔力なのか」
「そう感じるのね。そしたら、坊やの中にある温かい光を探してみて」
「僕の中にある温かな光」
ラトムは自分の内に秘められた魔力を探す為、集中した。
そして、自分の魔力を見つけた瞬間、辺りが燃え始めた。
「坊やの魔力は火属性ね」
辺りが熱いと感じたラトムは目を開けると、周りが燃えていることに驚いた。
「うわっ! 焼け死にたくない!」
「このぐらいは大丈夫よ」
アは湖の水を操り火を消火した。
「どう、坊や魔力を初めて感じた感想は」
「死ぬかと思った」
「あれぐらいじゃ死なないわよ。そもそも、自分の魔力だから焼け死ぬことはないわよ。他には何か感じなかったかしら?」
「僕の光は悪魔のよりも赤かった」
「悪魔じゃなくてアよ! そうね、これからは私のことを師匠と呼びなさい」
「師匠? 僕は悪魔に師匠なんて言いたくない」
「教えてあげているんだから師匠でしょ! はい、これ決定事項だから、これからは師匠と呼ぶように」
「嫌だ! 僕は悪魔って呼び続けてやる!!!」
こうして、アはラトムの魔法の師匠となり、ラトムに魔法を教え始めたのでした。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。