巨人の少年の恋 前編
ラトムは人の姿なったアを見て彼女に見惚れていた。
アは大昔に旅をした時に着てきた麻で出来た服を着た。
「私をジロジロ見てどうしたのよ?」
アは彼の顔を見つめ返した。
ラトムは顔が真っ赤になり大きな声で叫んだ。
「悪魔め!!! 僕に、僕に、呪いをかけたな!!!」
「はぁ? 呪いなんてかけるわけ無いじゃない。そもそも! 私は悪魔じゃなくて魔石精霊!」
「僕の心臓を返せ!!!」
「だから、何もとってないって、心臓なんて坊やの体の中にちゃんとあるでしょ」
ラトムは胸に手を当てて心臓を確認した。すると、鼓動は死ぬ程早く動き、彼女にも聞こえるんじゃないと言うぐらいバクバクと音をあげていた。
「僕の心臓に何をしたんだ!」
「何もしてないってば、ほら、坊や、私に魔法を教わりたいんでしょ。それなら、最初に私の言う事を聞かないとね」
「僕の心臓を呪ったくせに言う事をきけなんて卑怯だぞ!」
「はいはい、もういいわそれで、じゃあ、坊やの心臓を返してあげる代わりに私の言う事を聞きなさい」
「やっぱり僕の心臓を奪ったんだな! 卑怯な悪魔だ!」
「坊やは今までの旅で疲れたと思うから、今日はご飯を食べて体を洗って寝るわよ」
「へぇ? 支度は僕がやるって事だな」
「いいえ、今日は特別に私が用意してあげるわよ」
ラトムは腹が減っていたのを思い出した時、腹はもう限界とばかりにお腹を鳴らせた。そのせいで余計にラトムは顔が真っ赤になった。
「ほら、体は正直なのよ。果物食べれるかしら? 巨人ならお肉か、そう言えば、木の幹を齧った鹿が居たわね。よし、今日の晩御飯は鹿のお肉よ!」
「僕は行かないぞ!」
「この果物でも食べて待っててね」
アは大きく実った赤い果実を五つラトムに渡し、一人森へ入って行った。
「悪魔がいなくなったら、心臓が落ち着いた。僕、どうしちゃったんだよ」
ラトムはその場で座り赤い果実を齧った。
「んんん!!! 甘くて美味しい!!!」
そして、陽が落ち始めた頃にアは帰ってきた。
ラトムは疲れていたのかその場で眠っていた。
「あら、こんな所で寝ちゃって相当疲れてたのね。ご飯作るから待っててね」
アは木を虐めていた鹿を捌き、近くに生えていた草を使って臭みを消し、肉を木に刺して焼き始めた。
肉の香ばしい香りによってラトムは目を覚ました。
「おはよう、お肉焼けたわよ」
「肉!!!」
ラトムの眼中には肉しかなく、鹿肉に齧り付いた。
「肉! 肉! うっ、うぅうう、美味しい」
ラトムは泣きながら肉を食べた。
「ほら、そんなに慌てて食べないの。はい、お水でも飲んで少し落ち着きなさい」
アはラトムに木製のコップに入った水を渡し、ラトムは一気に水を飲み干した。
一心不乱に肉を貪るラトムを見て、アは彼の頭を撫で始めた。その間もラトムは全神経を肉へやっていた為撫でられていることさえ分かっていなかった。
「髪がゴワゴワね。後できちんと汚れを洗い流さないとね」
ラトムは鹿肉を全て食べ切った時、アは湖に自身の体を使って小さな囲いを作り、その水を魔法を使って温めていた。
「お湯の準備できたわよ。さぁ、一緒に入っちゃいましょ」
「へぇっ?」
ラトムはお腹いっぱいで幸せな気持ちになっている中、アは彼のボロボロの服を強制的に脱がせ、暴れる彼をお湯に入れさせた。
「くそぉ! 悪魔め! 僕をどうする気なんだ!」
「それは、一緒に体を洗う為よ」
アは着ていた服を脱ぎ捨ててラトムと一緒に露天風呂を楽しみ始めた。
「なっ! なんで、服を脱ぐんだ!」
「お湯に入るからよ。温まったら髪と体を洗いましょうか」
「悪魔め! こ、こっ、こっちに来るな!」
「どうしたのよ? ほほぉーん、もしかして、坊や、女の体を見たことがないのかな?」
「違う! お、女の体なんて、沢山、見たことある!」
「そう、それなら一緒に入ってもいいわよね」
「なっ!? 僕に近付くなよ!」
ラトムは風呂から出ようとした為、アは彼を抱きしめて拘束した。
「はなせ!!!!!」
ラトムは柔らかなアの体に触れて頭の中が真っ白となり、身体中が真っ赤になっていた。
「まだ少ししか入ってないでしょ。もう少し温まりなさい」
抵抗しても無駄だと判断したラトムは仕方なく、アに抱きついた。
彼女の胸に顔を埋めると、どんどんと眠くなり、ラトムはそのまま寝落ちしてしまった。
「あら、寝ちゃったの? 起こしちゃうのも可哀想よね」
アは彼を眠らせたまま髪と体を洗い、彼の為に家を建て、彼と共に一緒に寝たのでした。
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