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抗えない誘惑

 俺は走った。

謝らないと、主人様に謝らないと。

あいつに言われた事は正しかった。悔しいけど、俺は言い返すことができなかった。悔しい、俺、主人様の護衛になれて舞い上がってた。たまに歩く所だし、藍介の魔法もあるから大丈夫だって考えてた。主人様と俺は違うのに、そんな簡単な事考えられなかった。悔しい。悔しいよ。


 俺は主人様の家に着いた。

主人様は俺を見つけると優しく頭を撫でてくれた。


「紫水大丈夫だった? 怪我してない? あれ? 藍介は一緒じゃないの?」


「うん、大丈夫。藍介は芋虫の所にいるよ。その、主人様〜、さっきは怖い思いさせてごめんなさい。でも、あいつ普段はいい奴なんだよ。俺が考え無しで危ない道で会わせちゃったのが悪いんだ。だから、あいつのこと嫌いにならないでほしい」


「そうだったのね。私はてっきり無礼な挨拶しちゃったのかなって考えていたのよね。その、初対面なのに馴れ馴れしかったかなって」


「違うよ〜。俺が悪かったの〜。主人様のせいじゃないから〜」


「わかったわ。それなら、明日もう一度芋虫さんに会ってみましょうか」


「本当に! それじゃあ、俺! 芋虫に伝えてくる」


「ちょっと、紫水待って」


 俺は芋虫に伝えに行こうとすると主人様は俺に抱きついてきた。

えっ! 主人様〜♡ どうしたの〜♡

主人様から抱きついてくれるなんて、あまりないからすごく嬉しい〜♡ あ〜、幸せだなぁ〜♡

って! 今は嬉しいけどそれどころじゃない!

芋虫の所に行って主人様が会ってくれることを伝えなきゃ!

でも、主人様に離れてなんて言いたくない、もっと抱きしめてって言いた。いや、ダメだって、あいつに伝えてあげなきゃ。

次は安全な場所で会わせないといけないから、安全な場所を確保して、そう言えばあいつ体を洗いたいって言ってたよな? それなら、俺があいつの体を洗ってあげよう。


「紫水、今日は遅いから明日伝えに行ってあげて」


「でも〜、早めに伝えてあげた方がいいじゃん〜」


「紫水には他にも聞きたいことあるから、そうね。今晩は私と一緒に寝ましょうか」


 主人様と一緒に寝れる。

そんな主人様ずるいよ。

断れないじゃん。

ダメだ! 頑張るんだ、俺!

主人様の誘いを断るんだ。それで、伝えてあげないと。



 俺は主人様の布団を襖から取り出し、布団を敷いて、布団の中に入った。

やっぱり無理だよ。こんな、魅惑的な誘惑、抗えないって。

芋虫ごめんよ。明日の朝早起きしてすぐに伝えに行くから。

本当にごめんよ。


「紫水、布団に入るの早いわね」


「だって〜♡ 主人様が〜、一緒に寝ようって言ってくれたんだよ〜。ねぇ〜、ねぇ〜、俺に〜何聞きたいの〜? 主人様だったら〜なんでも話すよ〜」


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