巨人の少年と綺麗な石 後編
巨人の少年ラトムは湖に飛び込み中央にある綺麗な巨大な石を触った。
「私の体に勝手に触れないでよ」
「本当に石が喋ってる!?」
「だがら、石じゃなくて魔石よ!」
「綺麗な石の事を魔石と言うんだな。アはとっても大きくて美しい魔石だね!」
「当然よ! 私のこの世界で唯一の存在魔石精霊なんですもの! 美しさにおいて私に勝てる者などいないわ!」
「僕は助けてくれた君の事が知りたくなった。君は何故、空から降ってきたんだ?」
「この森全体に水を与える為よ。あと、運動不足気味だったから少しだけ運動しようかなってね。ねぇ、病み上がりなんだから長く水の中にいない方がいいわよ」
アは自身の体の一部を使いラトムに足場を作ってあげた。
「ありがとう」
「それで、坊やはどうして砂嵐の中一人で倒れていたの?」
「それは、楽園に行けば争いを止められると思って」
「楽園ねぇ、その楽園に行けばどのようにして争いを止められると考えていたの?」
「大人達が話していたんだ、楽園に行けば魔法というものを教えてくれる精霊がいるって、その魔法は何でも願いを叶えてくれるって」
「魔法はそんな便利なものじゃないけど、そうねぇ、大人が言っている精霊は私ね。貴方が産まれる前に一度だけ巨人族の男がここにやってきたのよ。それで、彼に魔力の使い方を教えてあげたのよ」
「それって、もしかして、ダーマインじゃないか!」
「そんな名前だったかしらね? あまり詳しく覚えてないわね。彼に魔力の使い方を一日だけ教えて、彼は森から出て行ってしまったから」
「どうして、あんな奴に魔法を教えたんだ!!! あいつは、あいつは、魔法を使って僕の仲間を何人も殺しているんだ!」
「そうなの、そんなこと言われても、私は魔力の使い方しか教えてないわ。その後は独学で魔法を学んだんじゃないかしらね」
「僕にその魔力の使い方を教えてくれ!」
「ちょっと、口の聞き方が悪いんじゃない? 普通、人に頼み事をするときにはお願いしますと言うはずでしょ」
「殺戮者に魔法を教えた方が悪いだろ!」
「あのね、一日だけで人を判断する事なんて出来ないわよ。はぁー、それなら、魔法を教えてあげるけど条件を付けるわ」
「条件ってなんだ!」
「急に可愛くなくなったわね。条件とは、私の言うことを全て聞く事よ。もし、私の言う事が出来なかったら、何も教えずに砂嵐の中に放り込んであげる」
「そんな、全てなんて、ダーマインと同じで魔力の使い方を教えてくれれば良い。後は僕が何とかする!」
「はぁー、坊や魔力は私よりかは低いけど生物にとっては最上位の魔力量なのよ。その自覚はあるかしら?」
「僕には魔力があるのか?」
「まずはそこからかぁ。仕方ないわね。貴方に一つ魔法をかけてあげる」
「え?」
アはラトムの足元に使った魔石から魔法陣を発動させると、ラトムの体はみるみる縮んで行き、人間の12歳程度の少年と変わらない背丈となっていた。
「こ、こ、これはどう言う事なんだ!!!!」
「巨人は身体が恵まれているから身体を封印させて貰ったわ。力はそうね。元々の100分の1ぐらいしか出せないわよ」
「えー!!!!! なんで、僕をこんな姿に!!!」
「いや、だって、元の姿のまま魔法を発動されちゃうと森が消えてなくなる可能性があるからね。それに、坊やは小さい方が可愛いわね」
「精霊じゃない! こいつは悪魔だ!」
「ん? 悪魔? 一体それは誰から聞いたの!」
「悪魔はダーマインが扱う恐ろしい精霊っておじいちゃんが言っていた」
「悪魔かぁ、悪魔がこの地上に干渉している? 一体どうやって? シンカ様に直接話ができたら楽なんだけど、私じゃ力不足だし」
「やはり、アは悪魔なんだな!」
「あのね、私は魔石精霊! それに、悪魔は契約によって働く、勤勉な種族とも言えるわね。まぁ、基本的にその契約内容が悪い事ばかりだけどさ」
「それなら、悪魔!僕と契約をしろ!」
「悪魔じゃないわよ! 人の話を聞かない奴には痛い思いしないと気付かないようね」
巨大な魔石は中心部に魔力を集め、そこから、光の球を作る出し、ラトムの前に光の球が降り立った。
「眩しい!」
光の球は球体から姿を変え人間の女性の姿へと変化した。
そして、ラトムにとって今まで見たことのない美女が目の前に現れたのでした。
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