アビーサの友
フローゼラーはアビーサを捕まえ2人きりで話をしていた。
「この石板を見るのじゃ!」
フローゼラーはサンザイから貰った石板をアビーサに見せた。
「どれ、年代物じゃなぁ。ん? わっはっはっはっはっ!」
石板を読んだアビーサは笑い始めた。
「やはり、何か知ってあるのじゃな!」
「そりゃあのぉ。友人の恋文じゃからな、今更出てきてあいつも可哀想だのぉ。じゃが、この恋文どこにあったのじゃ?」
「ここに来る中の湖の底にあったのじゃ」
「そうか、すまぬが、わしの友人にこれを渡したいのじゃが、恋文を譲ってくれるかのぉ?」
「いいのじゃ! でも、わしが直接その人に届けてあげたいのじゃ!」
「分かった。それじゃあ、豊穣の森へ向かうとしよう」
「その森は何処にあるのじゃ?」
「洞窟を抜けた先にある。わしの友人がそこを管理していてな、アもこの石板を見たら笑うじゃろうな」
「魔石精霊、この世に3体しかいないと言われる精霊、まぁ、4体目も何故かいるのじゃ!」
「彼女は作られた魔石精霊、可哀想な子じゃよ、家族にもならず、ただ独り、孤独を埋めるために人間を守る、彼女にはアの声は聞こえぬからな、悲しい事じゃ」
そして、2人は豊穣の森へ向かった。
「おー! 洞窟を抜けると魔蟲の森とは違う森があるのじゃな!!! ここの魔力は他と違って濃いのじゃ!」
「まぁ、魔石精霊本人がここにおるからな」
2人は魔石精霊アの本体がある湖へ向かった。
「ここまで巨大な魔石初めて見たのじゃ!」
巨大な魔石の方向へ歩くと女性の声とライネル、花茶の声が聞こえてきた。
「はい! 花茶ちゃん! そこでターン! ライネル!魔力操作全く出来てないわよ。やり直し!」
「魔力操るのむずいんだよな」
「かっちゃっ! ターン成功! 花茶サイキョー! あれ? フローちゃんだ! アビーサおじちゃんもいる!」
花茶は布地がピンクで白いフリルがついた衣装を着てダンスの練習をしていた。
ライネルは主人様から貰ったマスクを使いながら魔力操作の訓練を行なっていた。
「花茶! えーと、ら、ライネル! ライネルじゃな! そして、そちらの方が魔石精霊ア様でお間違いないのじゃ」
「あら、可愛い人魚さんね」
「わしの孫のフローゼラーじゃ」
「フローゼラー・ジェリエントと申しますのじゃ」
「お孫さんなのね。初めまして、豊穣の森を管理する魔石精霊、名前をアと言います。フローゼラーちゃんよろしくね」
「よろしくお願いしますなのじゃ!」
「それでな、アよ、孫がこの石板を見つけてくれてな、あいつの手紙を渡す為に来たんじゃよ」
アビーサはアに石板を渡した。
「石板の手紙なんて久しぶりだわ、何何? って、あの馬鹿の手紙じゃない!」
「おい、馬鹿とは可哀想じゃろ」
「あんなに強かったのに獣に負けて勝手に死んだ奴なのよ。 私に何も言わずにあんな事してたなんて、本当に馬鹿な男だったのよ!」
「まぁ、まぁ、アよ。落ち着け、あやつはお主を愛し、使命を果たそうと必死だったのじゃよ」
「あのね、そう言うなら私に言うべきなのよ。なのに、勝手に1人で戦おうとして、結果があれなのよ」
「すまぬが、二人の言っている事が、わしには理解できないのじゃが、少し説明して欲しいのじゃ」
「あー、ごめんなさいね。この石板を書いた人は巨人族の最初にして最後の王ラトムと言えば分かるんじゃないかしら」
「ラトム!? 災厄のラトム!?」
「そうよ。まぁ、彼は昔は良い巨人だったのよ。でも、そうね。彼を変えてしまったのも、私のせいかも知れないわね」
「それなら、アよ。今日はレッスンはその辺にして昔話でもしようじゃないか」
「えー、あの馬鹿の話よりも私は花茶ちゃんのダンスレッスンがしたいわ」
「花茶! 昔話聞いてみたい!」
「俺も巨人の王ラトムのお伽話は知っているが、まさか、本人を知っている人がいるなんて驚いだぜ」
「アよ。お主が話したくないならば、わしが話しても良いか?」
「いいえ、あの馬鹿の話は私が1番知っているから、そうね。久しぶりにあの馬鹿を思い出すのも良いかもね」
こうして、アは遥か昔、巨人族の王と出会った話をするのでした。
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