アビーサは逃げる
アビーサは普段通りに銀次にボードゲームで戦っていた。
「今回は銀次! 金色丸! オセロをするぞ!」
「オラ、今度は負けない!」
オセロ盤を切り株の上に置いた時、アビーサは何かを感じ取った。
「ん? まさかな、いや、まさか!?」
「アビーサさんどうしたのですか?」
「いやな、知り合いの魔力が近くにあるとおもってのぉ」
「知り合いですか? それでしたら、確か、フローゼラーさんと言う魔王軍の方が遊びに来ているみたいですよ」
「なんじゃと!? あの子がここに!? まずい、非常にまずい! 何としてでもあの子に会わないようにしなければ!」
「何がまずいんだ?」
「あの子は真面目なのじゃよ。本当に真面目でな、少しばかり仕事を休んでいただけでめちゃくちゃ怒らんじゃよ。今の事がバレたら酷い目にあうのは確定! すまぬが、わしは逃げる!」
「いや、逃げると余計面倒な目にあうのでは、あー、アビーサさん足早いですね」
「もう、見えなくなっただ」
すると、10分後にネルガルとフローゼラーが二人の元へやってきた。
銀次はアビーサが逃げた方向を彼女に話した。
「そんな事じゃろうと思っておったのじゃ! もう! 教会の件絶対に何も考えて無さそうなのじゃ! ネル坊! 絶対に怠け者を捕まえるのじゃ!!!」
「魔王様の師匠を捕まえるのですか?」
「そうじゃ、捕まえてとっちめるのじゃ!!!」
こうして、フローゼラーはネルガル、銀次、金色丸と一緒にアビーサを捜索した。
「なぜじゃ! 銀次と金色丸までもがあの子の味方に!? 今ここを出ると、わし、死ぬかも知れぬな」
アビーサは木に登り、下を確認しながら木から木へ飛び移っていた。
「あー! アビーサ様いただ!!!!」
「金色丸!? くそぉ!」
アビーサは全力で逃げた。
「あっ! そっちに向かっただ!」
「でかしたのじゃ! この怠け者がぁぁあ!!! 大人しくお縄につけーなのじゃー!!!!!」
アビーサが金色丸に驚き、逃げた場所には事前に準備していた魔法陣が貼られていた。
「なに!? そんな、馬鹿な!」
「何が馬鹿なのじゃ? アビーサ、いいや、お爺様、門を守らず何をしているのじゃ?」
「フローちゃん! いや、それがのぉ。この頃寂しくて、つい、のぉ。青雷からルービックキューブと言うやつを貰ってのぉ。それを作ったのが洞窟の主人と聞いて遊びにきたのじゃ」
「それで、何日ここにいるのじゃ?」
「あー、そう言えば、アビーサ様結構長くいるよな?」
「銀次覚えてるだ?」
「うーん、2ヶ月ぐらい? いや、それ以上か?」
「ほーん、そんなに遊んで重要な使命を放棄していると、そうじゃな、きつい一撃を喰らわないと反省し無さそうじゃな!」
「フローちゃん待って!」
フローゼラーから巨大な魔法陣が出現した。
「やめて! それだけはやめて!!!」
「またないのじゃ! 絶対零度な・の・じゃ!!!!」
魔法陣は消え去り、アビーサの足元が凍りつき、次第にアビーサの体を凍らせ始めた。
「ぎゃにぁぁあああ!!!!」
「ほら、ごめんなさいしないと、全身氷に埋め尽くされちゃうのじゃよ。逃げてごめんなさいと、遊び続けてごめんなさいと言うのじゃ」
「ご、ごめんなさい」
「ん? 声が小さいのじゃ? 何か言ったのかじゃ?」
「逃げてごめんなさい! 遊んでてごめんなさい」
「ふーん、やっぱり逃げてたし、遊んでおったのじゃな! 後で沢山パシリにするから覚悟するのじゃぞ!」
「ごめんなさい」
フローゼラーはアビーサにかけた絶対零度を解除した。
「オラ、初めて拷問を見ただ!」
「ありゃ、可哀想に。普通の人ならもう足は使い物にならなくなるな」
「まさか、お孫さんがいたとは驚いたのぉ」
3人は絶対にフローゼラーを怒らせないことを心の中で誓ったのでした。
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