ラヒートの処罰
魔王とオビリオンは温泉施設にある大広間で取っ組み合いの喧嘩をしていた。
「だから! そんなんじゃいつになっても決まらないだろ!」
オビリオンは魔王の顔面を思いっきり殴った。
「俺は! ラヒートがそんな酷い罰を受けるのは反対だ!」
魔王もオビリオンの顔面に拳のお見舞いした。
「酷いって、魔王城にいる方が彼女にとっては辛いことだ。それなら、主人さんに頼んでラヒートをここで働かせてもらった方がいい罰じゃないか!」
「俺はラヒートを絶対に守るんだ! ここにいたら守ってあげられないじゃないか!」
「彼女を身を案じるならこそだ! ここなら主人さんに勝てるものはいないし、長の方達も我等八翼に並ぶ実力者。彼等に守ってもらった方が安全に決まっている!」
「でも! 俺はラヒートの側から離れたくない! ラヒート! 君も俺の側から離れたくないだろ!」
遠くで魔王様とオビリオンの喧嘩をラヒートは心配そうに見つめていた。
「魔王様、私は罰を受けなくてはいけません。なので、ここで働けと言われるのでしたらその罰をお受けいたします」
ラヒートの隣で2人の喧嘩を傍観していたカーラーは2人の喧嘩に呆れていた。
「ほら、もうラヒートは腹決めてるのに離れる覚悟をしてないのは魔王様じゃないか」
「なら! 主人さんに聞いてみようじゃないか! 彼女ならラヒートを守れるのは俺だって言ってくれるはずさ!」
「望むところです! 主人様に会いに行きましょう!」
オビリオンと魔王は最初は歩いて温泉施設から出たが、徐々に足早となり、気付けば主人様の家まで競争になっていた。そして、最初に辿り着いたのは、途中参加の青雷であった。
庭で勝敗に納得のいかない魔王とオビリオンはまた口論していた。
「勝った! 僕の勝ちだね!」
「おい! 青雷は途中参加だから無効だ!」
「青雷君が無効なら、俺が1番に着きましたね」
「んなわけないだろ! 俺が5歩! 早く着いた!」
「いえいえ、魔王様は俺の3歩後に着いたので、俺が勝ちです」
「煩いなぁ〜。もう少し〜、静かにできないの〜。寝ている人が〜、近くにいるのに〜、よく〜、大声で喧嘩できるよね〜。魔王軍って〜、常識知らずの人達が多いのかな〜」
庭で自分の布団で寝ていた紫水が2人の喧嘩のせいで目を覚ました。
「こんな庭で布団を敷いて寝ている奴に常識知らずとは言われたくない!」
「煩いわね!!! 人の家の庭で喧嘩しないでよ!」
主人様もまた2人の口論が煩かったので庭に顔を出した。
「すみません。主人さんに聞きたいことがあってきたんだ」
「聞きたいことねぇ。その前にラヒートさんの処罰は決まったの?」
「それについて聞きたいんだ」
「じゃあ、内容を教えてちょうだい」
「主人さんは、ラヒートを守れるのは誰だと思う」
「ラヒートさんを守れるのは誰? そうね。魔王さんじゃないかしらね」
「よっしゃあ!!! ほら、言っただろ! 主人さんは俺がラヒートを守った方がいいって」
「いえ、説明不足なので俺が全て説明します」
オビリオンは事の経緯を全て主人様に話した。
「うん、それなら、私がラヒートさんを匿ってあげるわ。そうね、罰としてうちの家事でもお願いしようかしらね」
「それは良い罰ですね。本来なら死刑か終身刑となりますので魔王様、彼女の提案を飲むべきです」
「嫌だ、ラヒートの側から離れるの嫌だぁぁあ!!! やっと、やっと、ラヒートと愛し合えるのに、俺達の仲を引き裂くなんてあんまりだぁぁあ!!!」
「魔王さん、彼女を傷つけた元凶を見つけ出しすことが貴方がやるべき事なのよ。ラヒートさんはもう覚悟を決めているのだから、魔王さん今の姿を胸を張って堂々と彼女に見せることができるわけ」
「でも、ラヒート」
遅れてやってきたラヒートは魔王の情けない姿を見て自分の責任だと感じた。
「魔蟲の洞窟の主人様! 私は妖精族のラヒート! 貴方の元で働かせてください! 私は既に覚悟は出来ています!」
「ら、ラヒート。そんな、俺はまた君のいない時を過ごさなきゃいけないのか」
「魔王様、本当なら私はこの場で殺されてもおかしくないです。でも、皆さんはこんな私に死ぬ以外での罰を考えていた。ならば! 私は魔蟲の洞窟の主人様に仕えます!」
「ラヒート、君の思いは分かった。主人さん。いえ、凪様、ラヒートをよろしくお願いします」
「いいわよ。家事のやり方はチェルーシルさんに教わってね。ラヒートさん、これから、よろしくね」
主人様は手を前に出した。
「はい! 誠心誠意働かせていただきます!」
ラヒートは主人様の手を握った。
「ふぅ、これで一件落着ですね。それでは、俺は妻と子供達と残りの休暇を楽しませていただくので失礼します」
「あたしもミーライが心配だから帰らせてもらうわね」
「ラヒートさん一応間取り説明するからあがってもらえないかな?」
「はい! よろしくお願いします!」
ラヒートは主人様の家にあがった。
一人取り残された魔王は何もない自分に寂しさを覚え、それを感じ取った紫水は魔王に話しかけた。
「え〜と〜。俺と一緒にお昼寝してみる〜?」
「うん」
魔王は紫水の布団に入り込み、魔王は寂しさを紛らわす為に紫水と一緒にお昼寝をするのでした。