魔法は便利でも万能ではない
主人様と花茶は無事に逃げれたので安心しました。
紫水は主人様が離れるのを確認すると暴れている芋虫の拘束を解きました。
「ねぇ〜、俺さ〜さっきも聞いたけど〜、何で〜護衛失格なの〜?」
芋虫は暴れるのをやめて、紫水の問いに答えた。
「お前にはこの毒道は危険ではないよな」
「うん〜、そうだね〜」
「それなら、そこにいる藍介様の場合はどうだ」
「藍介は〜、魔法使って耐性上げてるから大丈夫だよ〜」
「藍介様、貴方の魔法はどのぐらい持ちますか?」
「そうですね、私の魔法ですと普通は5時間ほど持ちますが、この毒道の場合は普通の魔法効果時間が少し短くなりそうですね。うーん、長くいれても2時間ほどですかね」
「普段より効果時間が短くなる場所に主人様を連れてきたという事は、主人様を危険に晒しているという事ですよね」
「貴方の言う通りですね」
「主人様にとって危険なのは〜、芋虫が急に暴れたせいじゃん」
「俺が暴れたのはここから主人様を遠ざける為だ。そもそも、俺は主人様を傷付けていない。主人様の護衛になった者が危機管理が出来ていないなんて護衛失格だな」
「何で護衛失格って何度も言うんだよ〜。俺〜傷付くんだけど〜」
「護衛たる者、守る対象の行きたい場所が危険だった場合、止めるべきだろ」
「え〜、違うよ〜。行きたいと言ったなら〜連れて行ってあげて〜危険から守ってあげるのが護衛だよ〜」
「その危険から守りきれなかった場合どうするんだ」
「守り切れるよ〜。俺〜強いんだし〜。それに今回は藍介もいるんだからさ〜。心配しすぎなんだよ〜」
「心配し過ぎか、もし、主人様が毒に侵された場合を想定しているか?」
「だから、魔法が〜」
「魔法は便利であるが、万能じゃないんだぞ」
「なんだよそれ〜」
「それなら、魔法で耐性を上げたとしてもその耐性を上回る毒があったなら紫水はどうする」
「それは〜、毒になったら緑癒にお願いして直してもらう〜」
「間に合わなかったらどうだ」
「ん〜? どういうこと?」
「間に合わなかったら主人様は死ぬんだぞ」
「毒になってもすぐ死ぬって限らないし〜、どうしてそんな怖い事考えてるんだよ」
「怖いからこそ考えるべきだ。俺はお前にとって心配性なのかもしれないが、護衛は最悪の事態を考えながら行動しないといけないと俺は考えている」
「最悪の事態‥‥」
「お前は何も考えず、魔法があれば大丈夫だと浅はかな考えで主人様を危険に晒したことに気付がないんだな」
「そんなこと、ない」
「主人様を守りきれなかったら主人様は死ぬんだぞ」
芋虫さんはやはり、主人様のことを考えてのことだったのですね。私は、主人様がしたいと思う事を全てを叶えて差し上げたい。そんな考えを持ってしまったが故に、危険だとわかっていてもこの道に連れてきてしまった。これは、芋虫さんが怒るのも無理ないですね。
私は魔法を過信し過ぎていました。そのせいで、私は主人様を危険に晒してしまったことを反省しないといけません。
「そもそも、俺に会いたかったら紫水が先に俺に会いに来て話してくれさえしてくれれば、安全な場所で会うことだって出来たじゃないか、わざわざ危険な場所で会う必要なかっただろ」
「うん、そうだね。ごめんなさい」
「すみません」
芋虫さんのいう通り。どうして、考え付かなかったんだ。私のバカバカ。
「俺が怒った理由分かりましたか」
「うん」
「はい」
「次回もし、俺に会うときはここ以外の場所でお願いします。藍介様、すみませんが少し話をしたいのでお時間を頂いてもよろしいですか?」
「えぇ、私は大丈夫ですよ」
「俺〜、帰る。主人様に謝ってくる」
「分かりました。花茶に帰りが遅くなると伝えてもらってもよろしいですか」
「うん、わかった〜。伝えておくね〜。その、芋虫〜。さっきは本当にごめんなさい。でも〜、俺〜。芋虫に主人様を会わせたかったんだ。主人様に会えたら喜んでもらえると思ったんだ」
「その気持ちはとても嬉しいが、時と場所を考えて欲しかった。主人様に会うなら体を洗っておきたかった」
「ごめん」
「もう謝るのはやめろ。ほら、主人様の護衛なら主人様の側に居ないといけないだろ、さっさと帰れ」
「うん。それじゃあまた」
紫水は足早に主人様の家へと帰って行った。
私はというと芋虫さんの背中に乗せて貰い、芋虫さんの住処にお邪魔することになりました。
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