洞窟は大混乱 前編
サヘルが現れた時、カマキリ族の生き残りの2人は森で狩を行っていた。
「ゴハン、ゴハン〜」
「ハァーニィーご飯待っててねー!」
小さなカマキリが狩を行い、彼はウサギを捕まえてきた。
「ハァーニィー今日はウサギさんを捕まえたよ」
「ゴハン! ゴハン!」
「皮は俺がもらうから肉はハァーニィーが食べてね」
「ゴハン! ゴハンン!」
大きなカマキリは嬉しそうにウサギ肉を食し、小さなカマキリは皮を食べていた。
「ん? なんだろう? 変な感じがするな」
「ゴ、ハ、ン! ゴハン!」
大きなカマキリは何かを感じ取ったのか急に空を飛んだ。
「あっ、ちょっと待ってハァーニィー! 俺を置いていかないでくれ!!!」
小さなカマキリは慌てて彼女の背中に飛び乗った。
「ハァーニィー急にどうしたんだい?」
「ゴハン! ゴハン!!!」
「えっ!? あの時のハァーニィー達の仇が現れただって!? でも、ハァーニィーはどうしてわかるんだい?」
「ゴハン、ゴハンゴハン、ゴッハン!」
「あの時にあいつの魔力を覚えただって!? ハァーニィー! 凄いね! これで、ハァーニィー達の仇を討てるね!」
「ゴハン!」
「分かってる。気を引き締めないと、あいつを倒すのは一筋縄ではいかないからね」
ハァーニィーと呼ばれる大きなカマキリは魔蟲の洞窟に入った。
「あっ! ちょっと、ハァーニィー! 俺達がここに侵入しちゃ駄目だよ」
「ゴハン! ゴッハンゴハン!」
「そうだとしても、ほら、みんな俺達に驚いてパニックだよ」
それもそのはず、虫達の認識ではカマキリ族は常に腹をすかし目の前のものをすぐに捕食する存在。そんな、カマキリ族の2人が洞窟に侵入したら、洞窟内の虫達は混乱していた。
「うわぁぁあ!!!!! カマキリ族だ! に、に、にげろー!!!!」
ムカデ達は強い毒性を持つ個体もいるが、皆、カマキリの恐ろしさに逃げ惑っていた。
「シスイ、サマ、ドコ、シスイサマ!」
「キユイヒメ、サマ、イナイ、オレ、タチジャ、タタカエナイ」
「く、く、食われるぞぉー!!! 隠れろ!!!」
ハァーニィーは1層目を抜け2層目蚕は皆逃げる事を諦め死を覚悟したが、そのままスルーされ、3層目では、蜘蛛の家(巣)が何軒か破壊されたが、犠牲者はいなかった。そして、4層目、カマキリ夫婦はとうとう主人様の家の前まで辿り着いたのでした。
「ハァーニィー! まさか、ここってアルジィ様のハウスなんじゃないか!」
「ゴハン!」
「本当にアルジィ様のハウスにあいつがいるのかい?」
「ゴハン!」
「それなら、俺達が勝手に仇を取るのはいけないんじゃないかな」
サンザイとメルトは主人様の家に用事があり丁度向かっている道中、カマキリ族に出くわした。
「なぁっ!? なんで、カマキリ族がいるでやんす! メルトさん逃げるでやんすよ!」
「これが、カマキリ族、うん。強そうだね」
「そうでやんす! 洞窟内にましてや、主人様の家まで侵入しているなんて、今すぐに長達に報告するでやんす!」
「うーん、それじゃあ、私は時間稼ぎしといたほうがいい?」
「やめたほうがいいでやんす! 戦うなんて喰われに行くだけでやんすよ!」
「うん、それなら、逃げよう!」
「そうでやんす! 逃げるが勝ちでやんす!」
「あっ、そこの美しい羊の方、俺と少しだけお茶でもしない?」
小さなカマキリが大きなカマキリの背中からひょっこりと身体を出し、メルトにナンパをし始めた。
「サンザイ、私の事美しいだってよ。見る目あるカマキリ族もいるんだね」
「嘘でやんす。そんな、カマキリ族は意思疎通が出来ないで有名でやんすよ」
「やぁ! 小さなスパイダー君、聞きたいことがあるんだが少しいいかい?」
「なんでやんす?」
「白い衣を着た男を見なかったかい?」
「白い衣の男でやんすか? うーん、この前イデアおじちゃんが着ていたような気がしやすけど」
「イデアおじちゃんですか、それは、このような衣でしたか?」
小さなカマキリは大きなカマキリの背から降り、地面に白衣の男の姿を描いた。
「うーん、イデアおじちゃんじゃあないでやんすね」
「お医者さんみたいな服だね」
「医者、ドクターということでしょうか。あいつがドクター? ドクターなら人を救うのが務め、それなら、なぜ、ハァーニィー達が殺されたんだ」
「ゴハン!ゴハン!」
大きなカマキリは小さなカマキリを持ち上げ、主人様の家の塀に身体を乗り上げた。
「あっ! 勝手に主人様の家に入るのはダメでやんすよ!」
「サンザイ、凪様の家に行こう。あの二人悪い虫には見えないよ」
「そうでやんすね」
メルトとサンザイは慌てて主人様の家に向かったのでした。
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