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異世界の人間、サヘル 前編

 「ラヒート!? ラヒート大丈夫か! 緑癒さん!」


 イデアとオビリオンは警戒態勢となり、魔王の後ろに現れた白衣の男を睨んだ。


「おやおや! まさか、生きていたとは! あんなに改造されて元に戻る事なんて出来なくなった筈なのに!キヒッ! あー、貴方の力ですか」


 白衣の男は緑癒を見つめた。


 魔王は白衣の男を魔法で拘束した。


「えぇいいですとも! 今は貴方達に拘束されましょう!」


「お前がサヘルだな! ラヒートに何をしたんだ!」


「キヒッ、それはですね、身体のパーツ全てをリリアーナ様に変えてあげたのですよ。なのに、元の醜い姿に戻ってますよね。なんて素晴らしい治癒能力!」


 魔王はラヒートを抱き抱えサヘルから距離を取った。


「オビリオン、ラヒートを頼む、俺はこいつを殺す」


「キヒッ、魔王様直々に殺されるなんて光栄ですね。さぁ、魔王様、私をどのように殺すのですか? 興味がありますね」


 魔王がサヘルを殴りかかろとした時、イデアは魔王を止めた。


「おい! イデアなんで止めるんだよ」


「魔王様、この男の本体はここにはいません。攻撃しても無駄ですよ」


「はぁ? 俺が魔法で拘束しただろ」


「いいえ、あの男は拘束されている振りをしているだけです」


 すると、サヘルの魔王の拘束魔法をかけられた体が拘束魔法をすり抜けた。


「おやおやおや! まさか、バレてしまうとは! 終焉の獣はとても賢いようですね! そうです。是非とも私の所で貴方の不死性について研究したのですが、どうでしょうか、私の研究室に貴方だけならご招待してあげますよ」


「結構です。私は妻と結魂したばかり、新婚なのですよ! なのに、妻から離れる事なんてしたくないですからね!」


「妻、あー、そこにいる魔石を操る人間の事ですか、貴方も貴方で、私の同郷の可能性もある人ですから、そうです。貴方、元の世界に帰りたいと思いませんか? 私も何ですよ、私も元の世界に戻るために日々研究に励んでいるのですよ」


「ふーん、それなら、どうしてラヒートさんを改造したり、ゴウライさんの記憶を消したりしているわけ」


「おや、おやおや、鬼の男の記憶を消したですか、私がやったと決めつけないで欲しいです。私がやったと言う証拠はあるのですか?」


「ありますとも、彼の記憶が消されるまでの記憶を体験しましたからね」


「おや! そんな事が可能なのですか! 記憶の体験、すなわち、神の領域の魔法! やはり、貴方でしたが、世界の図書館のスキル保有者は! 醜い妖精を殺さずに生かしてよかった! これほどまでに有意義なことはありませんよ! ここの所ですね、リリアーナ様の美容の研究ばかりで、退屈していた所ですし、私に聞きたいことがあれば何でも質問してください! 私は全て! 善意で行っているので、隠し事などありません!」


「それでしたら、貴方は今何処にいるのですか?」


 イデアは彼に聞いた。


「私の研究室はタルタロスと呼ばれる奈落の神を殺して作られた監獄にあるのですよ。そこに行くためには、リリアーナ様が保有する監獄、魅惑の監獄を見つけ出さなければなりません。あっ! 魅惑の監獄とはリリアーナ様がそのダンジョンの主人として就任なさった為、魅惑と言う監獄に付けるとは似つかわしい名前となったのですよ。元々は、確か、何だっけな? 私としたことが忘れてしまいましたね。何と言うことだ! 忘却とはすなわち研究者にとって恐ろしい現象! あー!何と恐ろしい、忘れるなんて恐ろしい!」


 情緒不安定なサヘルの話を聞き、全員困惑していた。


 緑癒は凪に思念を送った。


『主人様、この様な男の話を聞かなくてもよろしいのではないですか? 彼の言っている事は全て嘘なのかも知れませんよ』


『私だって、嘘だと思いたいけど、ラヒートさんが言っていた事と同じ内容でしょ、嘘は言っていないけど、全てを話しているわけじゃない。が、正しいのかも知れないわ』


『このままこの男と話すのですか?』


『リリアーナに関する情報を聞き出せるチャンス、嘘だとしても情報が全くない状態なのだから、何か聞き出せるかも知れないわ』


「おやおや、なんて寂しい事をするのですか、私もその会話に入らせてくださいよ。私は善を重んじる人間なのですから」


「善を重んじると言っておいて、人の体を改造するのは悪なのじゃないかしら」


「そうでしょうか、彼にとって一番無くしたい記憶を消してあげたのに私が悪だと決めつけられなはいささか不愉快ですね」


 すると、サヘルから聞いたことのある女性の声が聞こえた。


「サヘル! サヘル! 今回の美容液いいじゃない! これを千本作りなさい!」


「あっ、ちょっ、リリアーナ様、今いい所なのですから、邪魔をしないでください」


「邪魔しない代わりに2千本作りなさいよ」


「増えた!? はい、かしこまりました」


 サヘルは気を取り直して、話を続けようとした。

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― 新着の感想 ―
自分は安全な所で笑いながら観ているんですね。マッドな研究者も理知的な研究者も同じことをするのが悪の研究者。で、同じドジを踏みまくる(笑) この風景、昔のゲームに似たのが在ったな~。悪魔を仲魔にする時…
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