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4層目の芋虫

 俺は4層目の毒道に住んでいる芋虫。

名前はないから自分を芋虫と名乗っている。

正直、自分は芋虫だなんて本当は名乗りたくない。

だが、俺の姿を表す言葉はこれしかない。だから、話すことのできる者に芋虫と呼んでくれと頼んでいる。


 精霊リリアーナが居なくなり、代わりとして新しい主人様が来たが、彼女は人間、そして、精霊に変えられてしまい、この洞窟の主人になった訳なのだが、それは、あまりにも可哀想だ。元いた世界には親子供がいただろうに、同種が存在しない場所に連れてこられたのだ、1人寂しい思いをしているのではないだろうか。

 俺も同種がいなくて寂しい思いをしたことがある。今はそれ程寂しいと感じないが、彼女の感じる寂しさは少し、わかる気がする。


 俺と主人様には共通点がある。そう、同種が存在しないということだ。それは、種を繁栄させなくてはいけない。生命の根本的な根源を俺と主人様にはできない。

俺は主人様が俺と同じ存在なのだと考えた時から、主人様を観察し始めた。


 長達は本当に羨ましい。

長達は主人様と会話ができる。

何でここまで羨ましいと感じているのか俺にはわからない。

よく話しかけてくる紫色のムカデは紫水と主人様から名を貰い。長ではない、俺には名を貰えない。

他の長達も名を貰っていた。


 俺は長になるため力をつける為に毒道で修行をしているが、一向に成虫になれる気配がない。

俺のレベルは種族80レベル、個体18レベル。

どうすればいいんだ、レベルの上限は種族、個体の2つのレベルの合計99レベル。

俺はあと、1レベルしか上げることしかできない。

どうしてなんだ、俺は他のもの達より強く賢い。

なのに、どうして成虫になれないんだ。

俺は蝶と呼ばれる蛾と近い姿が成虫だと昔に賢いゴキブリから聞いたことがある。それを目指して成虫になる手前の蛹になる為に努力しているのに蛹にすらなれていない。


 俺は言葉を理解している。だから、主人様ならこの俺の状況を知ってくれたら助けてくれるのではないかと考え、遠くから主人様に話かけてみたが、主人様は気付いてくれない。


 俺の姿を見せようと考えたこともある。

だけど、幼虫の弱い姿の俺を見せたくなかった。

でも、会いたかった。

俺の思っていることは矛盾している。

でも、彼女に会いたい。

会いたいんだ。

その想いを紫水に伝えてしまった。

それが、今回主人様が来た原因だろう。

俺の我儘のせいで、主人様を危険に晒してしまった。

守るべき、主人様をだ。


 毒道はその名の通り、この洞窟内で最も危険な場所であり長達でさえ好んでこの道を通らない程、猛毒の道なんだ。

なのにだ、紫水は毒耐性が強い。

毒耐性がない者の感情がわからないでいる。

魔法を使って耐性を上げたとしても限度がある。

それなのに、俺が主人様に会いたいと言ったから主人様を連れてきただぁ? ふざけてやがる。


 紫水が「俺は主人様の護衛になったんだよ〜」と自慢してきた時よりも俺は激怒した。


 怒る理由はわかるよな。

護衛がなんで、護衛対象を危険な目に合わしてるんだよ。

逆だろ、守らないといけない方が行きたいと言っても止めに入るのが護衛の務めだろ。


 主人様に嫌われてもいい。

この危険な場所から主人様を遠ざけなければならない。


 俺は紫水への怒りを糧に暴れた。

暴れたとしても主人様を守る為に毒の原因を糸を使い排除した。主人様達には暴れているようにしか見えないと思うがそれでもいい。無事に帰ってくれさえしてくれれば。

その結果、主人様はこの場所から逃げてくれた。

だが、主人様の背中が遠くなるにつれ、俺の心が苦しくなった。

こんなに苦しい思いをしたのは生まれて初めてのことだった。

苦しい、主人様に嫌われてしまった。

苦しい、もう、主人様に会えない。

苦しい、あぁ、主人様が見えなくなってしまった。

苦しい、苦しい、苦しい。


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