獣の結魂式 中編
魔王一向が洞窟についた頃、結魂式の主役のイデアとクティスはと言うと。
「どうして泥だけなのですか! クティス! 全身を綺麗にしなくては式に参加できませんよ!」
「ガウグルガウガウガァ!(凪ならいいけどイデアとは入りたくない!)」
「なに言っているのですが! そもそも、どうして泥だらけに?」
「ガウ、ガウグルガグガウガ! ガウガ、ガウディ、ガウエスト!(それはね、凪のプレゼントをとってたからだよ! 僕頑張った!!!)」
クティスは綺麗な石を咥えていた。
「プレゼントをとりに行くのは構いません。が! その姿じゃ式に参加させられませんよ!」
「ガウガァ?(参加ダメなの?)」
「ダメです。さぁ! 式まであと2時間ちょっとクティス! 仮面に戻るか、体を洗いに行くかどっちかです!」
「ガウガルルガ!(仮面に戻りたくない!)」
「それなら、体を洗いに行きますよ。私の準備もまだだと言うのに、これじゃあギリギリじゃないですか」
イデアは嫌がるクティスの尻尾を引っ張りお風呂場まで連れて行き、最速でクティスの体を綺麗に洗った。
「ガウガァ(早く終わった)」
「ふぅ、普段も静かならこんなに楽だと言うのに、今度からはお風呂場で暴れないでくださいね」
「ガウガァ(今だけだよ)」
「これからもですよ! もう、凪さんが入れてくれるとは限らないのですからね。まぁ、これからは、私が凪さんと一緒にクティスの体を洗うこともあるかもしれませんが」
「ガウガ! ガウグルガウガ!(イデア! 僕を使ってよからぬ事を企んでるな!)」
「凪さんとの新婚生活を考えていた所です。凪さんと二人でお風呂、体の流し合い、そして、ベッドイン! 完璧ですね! あと、1時間半残ってますから、その間に私のイケメン度を上げなくては!」
「ガウガァ(浮かれすぎぃ)」
結魂式開始1時間前となり教会には参列者の人だかりが出来ていた。
青雷は首元に蝶ネクタイを付け、ラックルは正装に着替えていた。
「うわぁ! 虫さん達が多いですね」
「そりゃあ、主人様の結魂式だもん皆んな参加したがるよ」
「イデアさんも結婚かぁ、僕も結婚したいなぁ」
「ラックル君結魂したいの?」
「そりゃあ、僕だって大人だからね。兄さん夫婦をみると、羨ましいなって。そうだ! この前のブロマイド結構売れてたから、僕だって有名人! それなら、可愛い令嬢達とお見合いしてみようかな」
「へぇー、ラックル君はどんな子が好きなの?」
「美人な人が好きです!」
「直球だね。だから、リリアーナに騙されるんだよ」
「そこは置いておいて、白桜ちゃんとお見合いできないかな?」
「ねぇちゃんは絶対にやめときな、そもそも、ねぇちゃん結魂してるよ」
「えっ!? 誰とですか!?」
「主人様!」
「女性同士でも結婚っていいのですか?」
「うん! 魂を結ぶだけだし、性別とかは関係ないよ」
「あれ? 僕が想像していた結婚と青雷君が話している結婚って違いそう?」
「ん? どうしたのラックル君?」
ラックルと青雷が話している中、教会の扉が開き参列者は決められた椅子に座り始めた。
「こくじょー! こくじょ!!! きのう、はなちたのに、どこにいるの!」
「ミーライ、式が終わったら黒常に会いに行きましょう」
「そうだな。その方がゆっくり黒常と遊べるぞ」
「はーい」
ミーライはママの話をきちんと聞き静かに椅子に座った。
オビリオン一家はと言うと、子供達が暴れに暴れ、オビリオンもまたその子供達が可愛くて甘やかしてしまっていた。
「あなた! きちんと注意してください!」
「子供達が可愛くて、注意なんてできないよぉ」
「もう! あなたが1番浮かれててどうするのですか! こら! イデア様の大切な式なのですから、静かにしなさい! 静かに出来なかった子には、後で、ママアタックをしますよ!」
ママアタックとは、子供達が暴れに暴れどうしようも無くなった時、オビリオンの妻は祖先の姿となり子供達に乗りかかるという恐ろしい攻撃なのである。ただし、祖先の姿に戻った時には、子供達は彼女の恐ろしい姿を見ただけで静かになるので、子供達には、乗り掛かった事はまだ一度もなく、この攻撃を受けたのはオビリオンと魔王の2人だけであった。
「おい! 子供達! ママが怒っている!静かに座らないとおやつ抜きになっちゃうぞ!」
「おやつ抜きはやだ!!」
暴れ回っていた子供達は静かに椅子に座った。
「ふぅー、ママアタックを回避できた」
「あなたも攻撃対象なのわかりましたか」
「そりゃあ、睨まれたら分かるわな」
イデアの屋敷メイド達は凪の元へ行き、彼女の支度を手伝っていた。
「凪様かわいい! でも! お化粧は私に任せてください!」
「もう、これでいいわよ」
「それじゃあ、ダメ! サファイ達に任せて!」
「おっ! サファイもやる気じゃん! そんじゃ、私は厨房の手伝いにでも行こうかな」
「あたいもそっちぃに行こうかなぁ。美味しいもの沢山ありそう」
「じゃ、あたしとターレは厨房手伝ってくる」
メテラールトとターレは厨房へと向かった。
「それでは、凪様、大人しくしていてくださいね」
残ったメイド達は凪をより美しく可愛くするために尽力したのでした。
そして、ついに、凪とイデア&クティスの結魂式が開催されたのでした。
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