獣は一度魔王城へ帰る
イデアは温泉施設へ入ると凪をすぐさま見つけて土と砂まみれの姿のまま彼女に抱きつこうとした。
「なぁぁぁぁああああぎぃぃいいいいさぁぁああん! 酷い目にあいましたー!!! 私の傷付いた心を癒してください!!!」
「ちょっと! 土まみれじゃない! ん? 砂も付いてるわね? って、抱きしめようとしないで!」
「凪さん聞いてくださいよ! ここへ来る途中歩いていたら急に落とし穴に落ちてしまい抜け出そうとしたのですよ。そしたら、土が降って来るわ、岩が横腹に当たって痛かったわ、土を固めて登ろうとすると急に砂に変わるわで、大変だったのですよ!」
「よく抜け出せたわね」
「凪さん!!! この疲れ切った体と心を貴方で癒してください!!!」
「抱きつく前にお風呂入ってきなさい!」
「嫌です! 凪さんが一緒に入ってくれないと嫌です」
「分かった、一緒に入ってあげるから行くわよ!」
凪は次の策を進める為にイデアとお風呂に入る決心をした。
「あれ!? え! 凪さんが私とお風呂に入ってくれる?」
「嫌なら私は外で待ってるわよ」
「いえ! 一緒に入りましょう! 嫌なことがありましたが、凪さんのおかげで全てちゃらです!」
イデアは一緒に入れる喜びで穴に落ちて良かったと心の中で思ったのでした。
凪とイデアがから少しほど前、風呂場では、紫水、灰土、緑癒が次の策の準備をしていた。
「灰土〜、岩の一撃ナイスじゃん〜、それに〜、土を砂に変えられるなんて〜、俺は〜、知らなかったな〜」
「空を飛ばれたら時間稼ぎが出来ないからな。イデアさんには可哀想な事をしたな」
「いえ、あれぐらいが丁度いいですよ! 私だったらあの岩を何発を喰らわしてやりたいですね!」
「緑癒様、どうしてそんなにイデアさんにあたりが強いんですかね?」
「それはですね! 僕と主人様のいつもの時間が削られたからですよ! 僕のお尻を主人様が触ってくれる時間がご飯の時間よりも大切な時間なのです! その時間を削られたら聖人の僕でさえ、ムカつくに決まってるじゃないですか」
「聖人って〜、変人の間違えなんじゃない〜」
「ほら、そんな事を言ってないで次の準備済ませるぞ」
「はーい」
1時間かけて灰土と緑癒の手伝いによって、紫水は巨大なお湯の球体を作り出した。
そして、現在、凪は肩紐がない水着を着てタオルで水着を隠し、イデアと一緒に男湯へ入っていった。
イデアはと言うと、彼女のタオル姿にしか目が行かずに目の前の巨大なお湯の球体を見ていなかった。
「凪さん、素敵!とっても美しいです」
「よし! 紫水! イデアさんを綺麗にしてあげてね!」
「了解〜! それじゃあ〜、イデアじゃあね〜!」
「あぶぅはぁっ!?」
紫水はイデアにお湯の球体をぶつけて、そのまま温泉施設から押し流し、そして洞窟、森、そして、魔王城までイデアはお湯に流され続けたのでした。
「紫水、魔王城に着くまでどのぐらいかかるの?」
「全魔力使ったから〜、3時間で着くと思うよ〜」
「あんな勢いで流されたんじゃ、当分は帰って来ないんじゃないか?」
「紫水やりましたね!」
流されたイデアはと言うと、タオル一枚だけの姿で魔王城に着地する時、何故かオビリオンがイデアの服を準備して待っていたのでした。
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