獣、土に埋まる
凪は昨日の夜に決まったイデア追い出し作戦を実行することにした。
凪が朝目覚めるとイデアが抱きついているので、それを剥がすのに1時間かけ、イデアを強制的に仕事に行かせ、イデアが仕事部屋から出られる昼の時間までに緑癒の案である土に埋める作戦の準備をしなくてはいけなかった。そして、緑癒と灰土と話し合いの結果、温泉施設へ向かう道中に落とし穴を作りそこにイデアを誘い込む作戦となった。
「さぁ、灰土! 思いっきりやっちゃって!」
「毒責めがダメなら土に埋めるのもダメなんじゃ」
「灰土さん何言っているのですか! あんなやつ! 一度土に帰った方がいいのですよ!」
「はぁー、分かりました。今回だけですからね」
灰土は自身のスキルで土を移動させて穴を掘り、灰土以外にはわからないほど精巧な落とし穴を作った。
「ねぇ、本当に目の前に落とし穴があるの?」
「えぇ、3歩ほど前に出たら穴に落ちてしまいますから気をつけてください」
「わかったわ」
「これで、イケメンも土に帰るってことになりますね!」
「緑癒様、クティスは土に帰さなくて良いのですか?」
「クティスはきちんと仕事をしていましたのでお仕置きは無しですね。それよりも、主人様にベタベタと触れているイデアさんに灰土さんの鉄槌を下してください!」
「鉄槌って、俺は落とし穴に落とすのですが」
「それじゃあ、私はイデアさんを連れてくるわね!」
凪は氷月に思念を送った。
『氷月! クティスのことは任せたわよ!』
『おー!妻よ! 俺様に任せろ!今俺様は獣とアビーサと銀次でオセロ対決をしているからな!当分の間、獣は先を外せられないからな!』
『了解、オセロ楽しいそうね。今度混ぜてもらおうかしら』
『今度妻もオセロで遊ぼうじゃないか!』
『そうしようかしらね。それじゃ、任せたわよ』
『おう!』
凪は氷月との思念を切り、イデアが仕事をしている部屋へ行き錠前を取り外して部屋の中へ入った。すると、珍しく真剣な顔をしたイデアが仕事をしていた。
イデアは凪が部屋に入ってきたのを見ると、すぐに顔は緩み、凪の側へ駆け寄った。
「凪さん! 凪さんが私の仕事中に会いにきてくれるなんて、なんて素晴らしい日なのでしょう! 凪さんが会いにきてくれてとっても嬉しいです!」
凪は少し罪悪感にかられたが心を鬼にしてイデアを温泉施設に誘い込む事を決心した。
「イデアさん仕事ばかりで、疲れたと思うから温泉施設でマッサージ機を試してほしいなって」
「マッサージ機? それを使えば、疲れが取れるのですか?」
「取れると思うわよ。効果は人によって違うと思うけど」
「凪さんと一緒にマッサージ機を試すと言う事ですね。かしこまりました! すぐに支度しますね!」
「私は先に温泉に行くわね」
凪は先に温泉施設へと向かい、身支度をしているイデアはと言うと。
「凪さんと温泉!もしかしたら、凪さんと一緒に温泉に浸かれる可能性も! 凪さんがとうとう私の愛に応えてくれたと言うわけですね!」
イデアはルンルン気分で温泉施設へと1人で向かっていた。
「凪さんとお風呂〜。凪さんとお風呂〜」
そして、上機嫌のイデアは一瞬にして灰土が作った落とし穴に落ちた。
「ぐへぇ!!!! なんですかこれは!!!! せっかく髪を整えたと言うのに、土まみれじゃないですか!」
次の瞬間、イデアが穴の中にいると言うのに、上から土が降ってきた。
「ちょっ! 私がいるのに土を落とさないでください!」
それでも、どんどんと土が降ってきていた。
「やめ! やめてください! もう、こうなったら」
イデアは空を飛んで穴から抜け出そうとした時、右横から四角い岩が突然現れ、イデアの横腹に当たり、イデアは墜落した。
「痛すぎますって! もうどうして、はっ! この力は灰土さんの力なのでは? 灰土さん! こんな酷い事を私にするんですか!!!」
その間も土が降り、腰まで土が埋まってきていた。
「まぁ、土ならば、固めて登れば穴から脱出できそうですね」
イデアは土を固めて穴から脱出しようとしたら、土がサラサラの砂へ代わり体が下へ下へと埋まっていってしまった。
「これは! 死んじゃいますって! 灰土さーん! 何か私が悪いことしたなら謝りますからやめてくださーい」
イデアは灰土に謝り助けを求めだが、応答は無く、イデアは土に埋まった。
土に埋まったイデアは2時間程かけて穴から脱出して、温泉施設へと向かったのでした。
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