サンザイ新たな仕事 後編
ラックルの部屋を飛び出したサンザイは自分が働いた蓄えを全て使い布を買う事を決心した。
「子供達の為の貯蓄を使わざる得ないでやんす!あっし馬鹿正直に言わなきゃよかったでやんす」
サンザイは市場に着くと布を買おうとしたが、店の店主に蜘蛛には売れないと言われてしまった。
「そこをどうにかお願いでやんす!」
「蜘蛛の魔物が布を欲しがるなんて変な話しじゃないか、すまないが、俺の店ではお前さんに売れないな」
「そんなぁ、布を買わなきゃ子供達が、子供達が」
「さぁ、帰った帰った」
サンザイは市場で布を扱う店を全て回ったが、蜘蛛には売れないと言われ続けていた。
「くそぉ、ブロマイド販売の時は普通に接してくれていたのに、どうして1人だけの時はこんなに冷たいでやんすか!」
サンザイは市場の中にある公園で1人、夕暮れを眺めながらコーヒー片手に一息をついていた。
「どうしたら布を買えるでやんすか、金はまぁ、足りそうでやんすけど、買えなきゃ意味ないでやんす」
すると、1人の羊の人獣がサンザイに話しかけてきた。
「おやおや? これは、青雷君のとこの蜘蛛じゃないですかね?」
「メルトさん!普段とは違う服装でやんすね?」
メルトは普段のメイド姿ではなく、青色のワンピースと白い帽子を被っていた。
「今日は仕事お休みなんですよ。まぁ、そのせいで親にお見合いしてこいって言われてその帰りなんだけど。君はここで何をしているの?」
「それが」
サンザイはメルトに全てを話した。
「勝手にイデア様の盗撮写真うっちゃダメだよ。怒られるのが当然だね」
「そうでやんすね。あの時のあっしは金を貯めることばかり考えてたでやんすから、反省しているでやんすよ」
「で、布が買えなくてコーヒーは買えたと」
「えぇ、うまいコーヒー店の店主があっしらがコーヒー好きだと分かると良くコーヒーを無償で淹れてくれるでやんす」
「あ、あそこの店主さん虫好きで有名だからね」
「そういえばメルトさんはお見合いどうだったでやんすか? 良い相手を見つけられたでやんすか?」
「それがね、相手は魔人族の二男だったんだけど、私よりも稼ぎがないから断ったのよ。そしたら、人獣こどぎが俺を見下したなとか何かで襲ってきたからグーパンを一撃お見舞いして逃げてきたの」
「殴られて当然でやんすね」
「でしょ、私よりも稼ぎが無いって貴族のくせに何やってたのって話じゃ無い? まぁ、そのせいで実家に帰れなくなっちゃったのよね」
「屋敷に帰れば良いだけでは?」
「屋敷なんて今帰るなんて自殺行為よ。イデア様が留守にしているのに、女性がいまだに押し寄せてきてるのよ。屋敷から出る時も大変だったんだからね」
「大変だったでやんすな」
「そうだ、私が布集め協力するから宿代だしてよ」
「えー、あっしの財布がすっからかんになっちゃうでやんすよ」
「布買えなかったら余計白桜ちゃんに怒られるんじゃない? それを考えると私の宿代は必要経費なんじゃ無いかしら?」
「それも、そうでやんすが、まぁ、メルトさんがいれば布を買えるようになれると思うし、こうなったらやけでやんす! あっしが貯めたへそくりをだすでやんす!」
「おー! サンザイかっこいいよ」
「照れるでやんす。それじゃあ、今晩は市場のスイートルームのある宿屋に泊まるでやんす!」
「よっ! サンザイふとっぱら!」
「メルトさん行こうでやんす!」
メルトとサンザイは市場の高級宿屋に泊まり明日の買い出しに向けて英気を養ったのであった。
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