サンザイの新たな仕事 前編
ブロマイド販売も終わり、お疲れ様パーティーを終えた蜘蛛達は次のブロマイド制作の為にモデルは誰を起用するか、売上金をどのように使うのかと白桜と青雷は話し合いをしていた。
「売上金の4分の1を使って市場にある全ての布を買い漁りなさい」
「ねぇちゃんどうして布を買うの?」
「あのね。こっちの金貨では人間の国じゃ使えないのよ。だから、魔族領の布は人間の国からしたら珍しいのよ。それを使ってあたしは服を作り、藍介様に言ってあたしの服を人間の国で販売するのよ」
「それならねぇちゃんの配下の糸を使った服を売ればいいんじゃない?」
「あれはダメよ。耐久力が高く過ぎて人間の国で販売するのがもったいない。あたし達の糸を使った布は主人様とあたし達以外には着させたくないわね」
「そうなんだ。じゃあ売上金を使って大量の布を買うってことだね」
「そうね。うーん、誰にお願いすればいいかしらね?」
「そう言う時はサンザイに頼もうよ」
「サンザイなら良い脅し方があるわよ」
「脅すってねぇちゃん怖いこと言わないでよ。まっ! サンザイ呼んでみるね」
青雷は思念伝達を使いサンザイを呼び出した。
あっしは白桜様配下のサンザイと言いやす。あっしは、妻と子供達のために日々、真面目に仕事に励んでいるのでやんす。
片目に傷がある蜘蛛は青雷に呼ばれラックルの部屋に向かっていた。その間にサンザイは、ブロマイド販売の時に令嬢達とちょっとした取引をしていたことがバレたのではないかと、ビクビクしながら恐る恐る部屋に入った。
「失礼するでやんす。青雷様、あっしを呼び出してどうしたでやんすか?」
「やっときたねサンザイ。ねぇちゃんがサンザイに新しい仕事をお願いしたいんだって」
「青雷ちょっとだけ部屋から出てもらえる?」
「ん? 良いけど? どうしてなの?」
「サンザイと2人きりで話したいことがあってね」
「分かった。それじゃあ、僕外で待ってるね」
青雷は席を外すと、サンザイは白桜に土下座をした。
「白桜様申し訳ございませんでやんす! あっし、金に目が眩み令嬢達にカメラが撮ったイデアおじちゃんの盗撮写真を販売してたでやんす!!!」
白桜に怒られる前にサンザイは全てを話せば少しだね罰が軽くなるのではないかと考えていた。
「へぇー、知らなかったわ。そんな事をしていたのね。サンザイ。へぇー、それじゃあ、その蓄えた金を使って市場に行きありったけの布を5日以内に買いなさい」
「えっ!? そ、そんなぁ。あっしの取り分はないでやんすか!」
「無しよ。勝手に商売を始めるなんてサンザイは良い身分なのね。貴方の子供達はあたしの為に必死に働いていると言うのに当の父親はあたしを騙して勝手に非売品を売る始末。そうね。父親が行った事だからいつもよりも多く糸を出してもらおうかしらね」
「やめてほしいでやんす! あっしが悪かったでやすんから子供達だけは罰しないでくだせぇ!」
「どうしようかな」
白桜は歩き始め、サンザイの子供達が働く白桜の蜘蛛族の製糸工場(主人様の家の真上の蜘蛛の巣)へ向かった。
そこでは沢山の蜘蛛達が日々糸を吐き、布を作っていた。
「あ! 白桜様だ! 白桜様!あっち沢山糸だせたでやんす!」
「僕も沢山だしたでやんすよ!」
「俺の方が沢山でやんす!」
子蜘蛛達は白桜を見るなり糸を沢山出せたと自慢していた。
「ふっ、あたしほどじゃないわね。あたし並みに糸が出せるように日々鍛錬に励みなさい」
「はーいでやんす!」
「もっと頑張るでやんす!」
サンザイは子供達が働く姿を見ると心を痛めた。
「子供達には仕事などせずにのびのび遊んでほしいでやんす! あっしはどうなってもいいでやんすから、子供達にこれ以上糸を出させないでほしいでやんす! 」
「サンザイ、何を言っているの。あの子達があたしに頼み込んできたからここで働かせているのよ」
「ぐぅ、それでも子供を働かせるなんて酷いでやんす!」
「酷い? あたしはあの子達の意思を汲んであげただけよ。それにしても、あの子達は健気にあたしに尽くしてくれるのに対し、父親は勝手に商品を売る始末。どう落とし前をつけてもらおうかしらね? 父親の不始末を子供達に押し付けるのもできるけど、サンザイ、土下座だけで済ませようとした浅はかさを悔いなさい」
「本当に御免なさいでやんす!!! 子供達には罪がないでやんす!」
「それじゃあ、サンザイに渡す給料は無し、非売品を売った利益だけで市場にある布全て買ってきなさい」
「それは、無理でやんす! せめて当初のあっしに渡す筈だった金が無ければ全ての布を買うのは不可能でやんす!」
「サンザイ、貴方はあたしの言う事を聞く以外に選択肢が無いのよ。分かったなら今すぐに布を買いに行きなさい。あっ、5日以内に揃えられなかったら、その時はこの子達がどうなるか分かるわよね?」
「分かったでやんすから、子供達に手を出さないでくだせぇ!」
「それは貴方の働きしたいよ。ほら、大切な1日があと半日で終わるわよ。早くしないと」
「今すぐに布を買いに行くでやんす!」
サンザイは慌てて外へ飛び出した。
「ここまで脅せば変なことはもうしないわね」
「白桜様、また何か父ちゃんがしでかしたでやんすか?」
「まぁ、前の時ほど悪いことはしてないわよ」
「それなら、いいか、父ちゃん頭良いのにいつも悪いことばかり考えちゃうんでやんす」
「不思議でやんすねー」
その後、白桜は青雷にことの経緯を話したのであった。
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