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獣の屋敷の侵入者

 ブロマイドが販売された次の日、イデア邸では人間以外の国の令嬢からお見合いの申し込みがひっきりなしに送られ、そして、イデアに一目会いたいとブロマイドをもった女性達がイデア邸に押しかけていた。


「うわぁぁー!!!!! なんで、チェルねぇがいない時にこんなに客が来るんだよ!!!」


 羊の人獣のメルトが屋敷の門を門兵と共に抑えていた。


 門の外にいた兵士は女性陣の迫力に押され女性に囲まれ動けずにいた。


「もう! 門を守るぐらいちゃんとやってよね!」


「メルトさん申し訳ございません!」


 メルトの隣で一緒に門を抑えている熊の獣人と魔人の男2人の計3人で門を抑えていた。


「そもそも、この女性達はどうしてイデア様の屋敷に押し寄せているのですか?」


「あのね。昨日から青雷君がイデア様のブロマイドを販売したみたいでね。めっちゃくちゃ売れに売れてるって話だよ」


「ブロマイド? 何ですかそれは?」


「精巧に作られた絵だよ。ほら、これ」


 メルトはポッケから一枚のイデアのノーマルブロマイドを取り出した。


「これがブロマイドって言うんだって、この姿のイデア様の絵を手に入れられるなんてそりゃ、女性達が喜ぶに決まってるよね」


「こりゃ凄いな。それじゃあ、この女性達はこのブロマイドを買って本人に会いたくなったから押し寄せてきたってわけなのか?」


「そう言う事じゃない? この状況じゃイデア様本人が出てきたら、より一層収集つかなくなりそうだよね」


 そして、屋敷の方からクティスが門の前まで走ってきた。


「ガウウウガウガガルルルガウ!!! (煩いし招待されてないのに勝手に押し寄せてくるなんて教養がないんじゃない!!!)」


「クティス様! もしかして、私達に力添えをしてくれるのですか!」


「ガウグルガ!(僕に任せて!)」


 クティスはジャンプをして門を飛び越え、押し寄せている女性達の最後尾に着地をした。


 クティスは全力の威嚇を女性達に当て、殆どが恐ろしさのあまり失神してしまった。


「ガウ、ガウエスト!(僕頑張った!)」


 クティスは倒れている女性達に見向きもせずまた飛び上がり屋敷の敷地に着地した。


「クティス様ありがとうございます!」


「流石クティス様ですね!」


「ふぇー、疲れたぁ」


 クティスの威嚇によって女性達を撃退したメルト達であったが、その日の夜、イデアにとって恐ろしい事件が起きた。


 イデアはクティスに門周辺の警備を任せ、この騒動の後始末をしていた。


「はぁー、なんで私がこんな目に」


 夜遅くまでイデアは執務室で今回の件を紙にまとめていた。すると、ドアをノックが聞こえた。


「おや? どなたですか?」


 イデアが反応してもドアの奥からは声が聞こえなかった。


「どなたでしょうか?」


 イデアは椅子から立ち上がり、ドアを開くと、そこには誰も居なかった。


「さっきドアをノックする音が聞こえた筈なのですが、もしかして、疲れすぎて幻聴が聞こえてしまったのですかね?」


 イデアはドアを閉めると、机に戻った。


「まさか、ここまで大事になるなんて思いもしませんでしたよ。ですが、凪さんに私のカッコ良さを全て余す事なく伝えられたと思うので、よしと、したい所ですが、私って女性に人気なのはわかっていましたが、ここまでとは思いませんでしたよ」


 イデアは仕事に戻ると、またすぐにドアがノックされた。


「ん? やはりさっきノックしたのですね。誰ですか? 入ってきてください」


 すると、ドアが開き、そこにいたのは、知らない魔人の女性が立っていたのであった。


「貴方は誰ですかね?」


 女性はイデアを見ると、顔を赤らめ、イデアの顔をじっと見つめていた。


「はぁー、不法侵入は犯罪ですよ。今回は見逃すので帰ってください」


「イデア様が私のことを思ってくれた。イデア様が私のことを思ってくれた! イデア様が私を見つめて私の事を思って!!!!」


「メルト! エーデル! 侵入者がいます! 今すぐにつまみ出してください!」


 いつもならメルトかエーデルが走ってきて侵入者を捕縛するのに、今回は誰も反応がなかった。


「そういえばターレが気付かなかったのですかね?」


「小人のメイドなら、眠ってます。イデア様と私との出会いを阻むものは全て眠らせてあげました」


「眠らせた? 面倒ですね。馬車を呼ぶのでお引き取りください」


「私はイデア様の妻になりにきたのです! さぁ! 貴方の冷たく冷え切った心を私が温めて癒してあげます!」


「私は貴方の事を知りませんし、そもそも、知りたいとも思いませんので、あまり私を怒らせないでくれますかね」


 イデア殺気を女性に浴びせた。


 女性は一瞬恐怖したが、何故か頬をより赤らめたのであった。


「イデア様から私へのご褒美。やはり、私が貴方の心を温める運命の相手なのですね!」


「何を言っているんだこの人は、もう、いい。手荒な真似はしたく無かったが仕方ないな」


 イデアは女性のドレスの襟を掴んだ。


 女性はそのまま後ろに転倒し、イデアは床に女性を引き摺りながら門へ向かって歩き始めた。


「痛い! 痛い! やめて!やめて! 私は運命の相手なのよ! どうして、こんな酷いことするの!」


 女性は抵抗していたが、イデアには全く聞いていなかった。


 イデアは屋敷を出て門の外まで女性を引き摺り続けていた。女性は必死に喚いていたが、イデアは黙々と門まで女性を運ぶと、門を開き、女性を投げ飛ばした。


「もし、この門を通ったら次は命がないとおもえ」


 女性はもう一度、門を越えようとすると、屋敷を一周して変な女がいないか確認していたクティスと鉢合わせとなった。


「ガウグルルルガ?(なんでそんなにドレスが汚れているの?)」


「ひぃぃぃ」


 女性はクティスを怖がっていた。


 イデアは投げ飛ばした後帰ろうとしたが、丁度クティスがやってくるのが分かったので、クティスが来るのを待っていた。


「クティス、その女は侵入者です。遠くに運んだいてください」


「ガウ!? ガウグルルガ!(うそ!? 僕が見逃したの!)」


「その通り、見逃していたのですよ」


「ガウガァ〜ガウガグルガ(分かったよ〜遠くに運んでくるね)」


「よろしくお願いします」


 クティスは女性を咥えると魔王城の牢屋へ向かい、女性を牢屋に入れてもらったのであった。


「ガウグルルルガ!(これで安心だね!)」


 クティスは屋敷は戻り、より一層警備を強化したのでした。

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― 新着の感想 ―
こうなるよね~。取り合えず門ごと潰されなくてヨカッタデスネ。 ワンちゃんの監視を搔い潜りお部屋に到達。この能力は凄いですね。スニーキングにスカウトしたら?報酬は「1日デート券」で雇えそうですね(笑)
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