マランのデートの行方
シェーフと氷月の試練対決は続き、マランと紅姫には色々な事件が起こった。
急に落とし穴にハマり2人で協力して抜け出す試練の際、紅姫がマランをお姫様抱っこをして穴から抜け出した。東の花畑ではチェルーシルにデートの邪魔をされかけ、マランは王子の名前を出して逃げ出すことに成功したりしていた。
「チェルーシルがどうして俺の邪魔をするんだろう?」
「さぁ、彼女のあの目は私達を見ているというより、ハチミツを見ているようでしたね」
「彼女はハチミツが大好物で昔、王子にハチミツをねだった時があったのですが、王子は初めて彼女にお願いをされたので大喜びで国中にある全てのハチミツを彼女にあげたんですよ。そしたら、彼女は3日足らずで全部食べてしまったっていう噂がありましたね」
「チェルーシルさんにとってここは楽園なのですわねね」
「でも、俺達を攻撃する理由はなんだったんでしょうか?」
「さぁ? それよりも、デートと言うのは面白いことが起こって楽しいですわね!」
「紅姫さんが楽しんでくれて俺も嬉しいです。その、紅姫さん友達より恋人になりませんか?」
「友達でお願いしますわ」
紅姫の評価は変わらずであった。
そして、彼らのデートを精霊達以外でも観察している人がいた。
主人様は紫水と一緒に大きな木に登り、双眼鏡で2人を観察していた。
「氷月何やってるのかしらね? マランさんに頼まれてシェーフさんの邪魔をする為に送ったのに、一緒になってデートの邪魔をしているじゃない」
「主人様〜、俺達も森デートだね〜♡ マランの事よりも〜、俺とデート楽しもうよ〜♡」
紫水は主人様に抱きついた。
「デートじゃないわよ! 紫水じゃなくて灰土を呼べばよかったかしらね?」
「なんでぇ〜! 俺の方が〜、灰土よりも強いよ〜」
「いや、空飛びながら観察できるじゃない? 何度も木に登って観るよりもそっちの方が楽かなって」
「空なら俺でも飛べるよ〜。主人様はお空デートをしたいんだね〜。それじゃあ〜、えい〜」
紫水は主人様と自分の周りを水で囲み、水の球を浮かした。
「ほら〜、俺でも空飛べるんだよ〜」
「こんな飛び方があったのね。あっ、マラン達が動き出したわ、紫水、あっち、あっち」
「急な方向転換は難しいな〜」
「ほら頑張る」
「は〜い。ねぇ〜、氷月邪魔ばかりしてるからさ〜、痛い目にあわせとかないといけないんじゃない?」
「アさんにお願いするしかないわね」
「それいいアイデアだね〜! 氷月にはアさんをぶつければ何とかなるよね〜」
主人様と紫水は上空からマランのデートを観察するのであった。
そして、陽が落ち始めて夕方になり、紅姫は洞窟へ帰ろうとしていた。
「急に風の壁に阻まれた時はどうなるかと思いましたが楽しかったですわー! 他にも、落とし穴に落ちたり、波が襲ってきたり、チェルーシルさんが襲ってきたりとスリルがあって楽しかったですわー!」
「紅姫さんに満足してもらえて嬉しいです! あの! もしよかったら俺と恋人に」
「なりませんわー! ふぅー、マランさん、私に楽しいデートを誘ってくれてありがとうございます。貴方の告白にはお応えできませんが、私は貴方のことを友人として好きですわ。友人として!」
紅姫は大切なことなので『友人』を強調した。
「俺の事が好き! う、う、嬉しいです! 俺も紅姫さんの事が大、大、大好きです! これは、もしかして、いや、もしかしてじゃなくて、両思い! 俺との結婚を承諾してくれるのですね!!!」
「エルフの方って人の話を聞かないのかしら?」
紅姫が困っていると、チェルーシルが2人の前に現れた。
「紅姫様、エルフ族は美系揃いなので、特に男の方は好きな女が現れるとその女性と結婚するまで、常に告白をし続けるのですよ。女性も男性と変わりがないのですが、マランの場合は本気で紅姫様を愛してしまっているので、1日でも早く貴方と愛し合いたいという欲望しか頭の中にありませんから、断っても断っても、良い方向に脳内変換されてしまうのですよ」
「チェルーシルさん、そしたら、どうやってお断りすればよろしいのですか?」
「簡単です。逃げるのですよ。好きでもない人に告白をされ常に仕事の邪魔をしてくる男の元で働くよりも、給金が高い遠い所で働くのがベスト。恋愛関係で拗れたエルフはどっちかが国から出て行くので、鬼の国や魚人の国、獣人の国などでもエルフがいるのですよ。あとは、人間の国でもエルフは出稼ぎに出ているみたいですが、藍介様がいるあの国には行きたがらないですね。あそこへ行った瞬間に奴隷にされてしまいますから」
「エルフさん達も大変なのですね」
「ここまで拗れるのは男性が多いですね。元々プライドが高い男が多いので断られるって言うことを知らないんですよ」
「そうなのですね。うーん、でも、マランさんは悪い人じゃないことは分かっていますが、常に恋人だの結婚だの言われと少し、いえ、とてもぶん殴りたくなるのですが、これはどうしたら良いでしょうか?」
「簡単です。ぶん殴れば良いのですよ」
「へ? 俺紅姫さんにまた殴られるの?」
「あと、紅姫さん出来れば、遠くまで飛ばす勢いで殴ったらよろしかと思います」
「分かりましたわ! マランさん、今回のデート楽しかったですけど、私恋人を作ろうとはまだ考えていないので、マランさんの告白は振らせていただきますわ! それでは、遥か遠くへ! 行ってらっしゃいませ!!!」
紅姫は今までにないぐらい拳に全ての魔力を込めて、マランを殴ろうとした。
マランは慌てて魔法で防御した。マランを助ける為にシェーフと氷月、ストームは力を出し合い、マランの防御魔法をより強固にしたが、紅姫のパンチ力によってマランは空高く飛び上がった。
「べぇぇぇにぃぃいいいひめさぁぁーんんんん!!! どうしてぇー!!!!」
シェーフは仕方ないのでこのままマランをエルフの国まで飛ばすことにした。
シェーフは氷月に別れの挨拶をした。
『勝負は引き分けだったけど楽しかったわ。最終的にあのバカが自分で紅姫さんに嫌われにいった感じになったけど、まぁ、いい暇つぶしなってよかったわ! それじゃあ、マランをエルフの国へ帰すから、それじゃあね。また今度勝負しましょう』
「あぁ! いいとも! 俺様と勝負がしたいのであれば、何度だって受けてやるさ! じゃあな!」
シェーフは空を飛んでいるマランの側へ向かった。
『我も行くとしましょう。我も久しぶりにはしゃいでしまいました。たまにはこう言うことで呼ばれるのも良いかもしれませんね』
ストームもシェーフと共に空へ消え去った。
「精霊とも遊ぶのも楽しかったな!」
氷月はその場を後にしようとした時、主人様に見つかった。
「氷月! マランさんのデート邪魔してたでしょ!」
「妻!? 俺様はきちんと氷月のデートを成功させる為に努力していたぞ!」
「いいや〜、風の精霊と一緒になってデートの邪魔をしてたよね〜」
「邪魔ではない! そもそも、マランを手伝ってやったのさ!」
「紅姫から後で聞くわ。楽しくなかったって言ってたたら、どうなるか分かるわね」
「アだけは言わないでくれ! これ以上、裁縫で俺様の時間を奪われたくない!」
「それは、紅姫の返答しだいよ。私達も帰るわよ!」
「は〜い。俺〜、お腹減ったな〜。主人様〜。お水頂戴〜」
「家に着いてから食べなさい。あと、水だけじゃなくてご飯を食べるのよ」
「え〜、水だけでも生きていけるじゃん〜」
「固形物を食べなさい! ほら、氷月も帰るわよ」
「アだけには、言わないでくれぇぇ!!!」
「はいはい、ほら、帰るわよ」
主人様は氷月の手を掴むと、氷月の手を引いて洞窟へ帰り、紅姫にデートの内容を聞き、氷月は裁縫地獄行きは無くなったのでした。
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