シェーフの試練
氷月の試練を紅姫が突破し、次はシェーフが試練を与える番となった。
『マランが成功する試練にしなきゃね。そうなると、マランの優しさをアピールできれば、紅姫さんの好感度アップよ! そうと決まれば!』
シェーフは1羽の鳥の眷属を呼び出した。
『シェーフ様、我を呼んでどうしましたか? 戦争でも始まるのでしょうか?』
『ストーム違うわよ。これから貴方には』
『えっ!? 嵐の化身たる我をそのような事で呼び出したのですか!?』
『はい、呼ばれたからにはやるのよ』
ストームと呼ばれた鳥の姿の精霊は嫌々ながらもシェーフの命令を実行に移した。
その頃、マランと紅姫は湖から離れ東の花畑に向かっていた。
「紅姫さん、俺は真剣です! 俺と結婚してください!」
「マランさんはそれしか話すことが出来ないのですか? 私はデートを楽しみたいだけなのに」
「愛の告白もデートなのです! さぁ! 俺と結婚を!」
「今は結婚は考えていませんからごめんなさい」
紅姫は何度もマランの告白を振っていた。
「そんな、俺には紅姫さんしかいません!」
「あの、それでしたら、友達からでよろしいでしょうか? 私を知るそして、マランさんの事を知るにも友達からでお願いします」
「分かりました。結婚は諦めます。ですが、俺と友達ではなく恋人になって欲しいです!」
「私これ以上どうしたらいいでしょうか。はぁー、主人様はこのような状況だったのですね。私少しだけぶん殴りたくなってきましたわ」
紅姫はボソッと呟いた。
「紅姫さんどうしましたか! もしかして! 俺と結婚を前提にお付き合いをしてくれるのですか!」
「はぁー、友達からでお願いします」
「紅姫さん! 俺紅姫さんの為ならなんでもします! だから、俺と恋人に!」
森の中で常にマランは紅姫に言い寄り、紅姫はデートを楽しみたいのにマランに邪魔をされていた。
その時、空から一羽の緑色の鳥が落ちてきた。
「うわっ! なんだ!」
「あら、この子死にかけているわね? 食べて弔ってあげないと」
紅姫は羽が傷ついた鳥を捕まえようとした時、マランが先に鳥を抱き抱えた。
「紅姫さん、こいつは精霊ですよ。食べたらお腹壊しちゃいますよ!」
「でも、死にかけているのでしたら弔う為に食べてあげるべきですわ」
「精霊なので、こいつの傷なら俺が治せますから食べようとしないでください」
「そう? 焼いて食べたら美味しそうとおもったのだけど」
紅姫の発言に傷ついた鳥はビクッと動いた。
「ほら、こいつまだ生きてますよ。そんじゃ、俺の魔力をあげるから今すぐここから逃げろよな」
マランは抱き抱えた鳥に魔力を与えた。すると、傷ついた羽が無くなり、精霊の鳥は飛び立った。
「あら、美味しそうでしたのに」
「ふぅー、食べられたくなければもう落っこちるなよ!」
そして、マランはシェーフに与えられた試練を成功したのであった。
ストームはシェーフの元に戻ると、マランの魔力をそのままシェーフに返した。
『我はもう演技などしたくない』
『ストームちゃんありがとう。迫真の演技だったわね!』
『ちゃん付けで呼ぶでない! 我はオスであるぞ!』
『ストームちゃんって呼んでもいいじゃない』
「おいおい、あんなのがハラハラドキドキの試練なのか? 全くハラハラドキドキしないじゃないか。いや、ハラハラドキドキしたのが、お前の眷属の方だな!」
『もしや、貴方様は魔石精霊様でお間違いないでしょうか?』
「そうだとも! 俺様こそが! この世に3体しかいない魔石精霊の1体! 氷月である!」
『魔石精霊様に出会えるとは感激です。あの、我の主とはどのような関係なのでしょうか?』
「今こいつとあそこにいる2人のデートに試練を与える勝負をしていてな! 」
『勝負をしていたのですね。はて、我の力を使えば嵐を呼び出すことができるのに、何故、主は我にか弱い鳥の真似をさせたのですか?』
『嵐なんて呼び出したら周りにいる生物が可哀想でしょ。試練を与えるのは2人だけよ。それに、危険な思いはして欲しくないのよ。だから、私は心を動かす試練を用意したのよ』
「心を動かすなんて、紅姫はこやつを食べたがっていたぞ」
『あの時の彼女は我を焼いて食べようとしましたからね。心ではなく食欲は動いたのではないですか?』
『うーん、弱った動物を救ってマランの優しさをアピールできたとは思うんだけど、ストームちゃんの演技が弱かったのかな?』
『我は完璧な演技をお見せしました。氷月様が言うハラハラドキドキは我が体験しましたよ。少しだけ主の契約者に心を開きかけましたね。特に我を食べようとする女から我を守ってくれた時は嬉しかったですとも!』
「それだと、俺様とシェーフの一つ目の試練は失敗というわけだな」
『次は勝つわよ!』
「次勝つのは俺様だ!」
『我もお手伝いします』
そうして、3体の精霊はマランと紅姫のデートを成功させる為に新たな試練を与えら準備を始めたのでした。
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