マラン、紅姫と闘う 決闘前編
リング会場は観客達の活気に満ち溢れていた。
「紅姫様早く出てこないかな」
「ベニヒメサマ! ベニヒメサマ!」
「マラン死ぬなよ!!!」
「マラン生きてー!」
紅姫の登場を待つもの、マランに同情して応援するものなど、観客席にいる虫達はそれぞれの感情の思念を飛ばしていた。
実況席にはDJ蜘蛛と主人様と灰土が座っていた。
「それでは、皆様! お待たせしました! 今回のメインイベント! 紅姫様バーサス! エルフ族のマランの対決です! 実況はこの私、DJ蜘蛛と!」
「解説は俺、灰土で行います」
「それじゃあ、DJ盛り上げて行くわよ!!!」
主人様はその場から立ち上がると、リングへ向かう赤い道から炎が地面から噴出された。
「赤コーナー! 我等の蜘蛛の母! 紅姫!!!」
紅姫は黒いTシャツに赤いボクシングショーツを着て登場した。
「みなさーん! 楽しんでいってくださいね!」
紅姫は余裕の表情で観客に手を振っていた。
「続きまして、青コーナー、エルフ族のマラン!」
マランは紅姫と同じ登場の仕方で炎に驚き、観客の多さに驚いていた。
「マジかよ。こんなにいるのか」
『ふふふ、マラン死なないように頑張りなさいよ』
観客達はまだマランは紅姫と闘ってもいないのに、早くも死ぬなコールが流れた。
「俺は死なないからな!!!!」
紅姫とマランはリングに立った。
「それでは、今回の試合は時間無制限、先に倒れた方が負けとなります。紅姫様は己の肉体でのみで闘ってもらい、マランさんには自身の体を強化する魔法のみ使用を許可しています。魔法での直接攻撃をした場合その場で負けとなりますので、忘れないでくださいね」
「紅姫様相手なら魔法使ってもいいよな」
「ベニヒメサマ、ツヨイ、アイツ、ヒョロヒョロ、ヨワイ」
「魔法だけで大丈夫か? 死ぬんじゃないか?」
「ベニヒメサマ、ツヨイ、マホウ、デモ、カテナイ」
魔法を使用するだけではマランが死ぬのではないかと虫達は考えていた。
「それでは、開始のコングを主人様お願いします!」
「紅姫! マランさん! 頑張ってね! それじゃあ! 試合開始!」
コングが鳴り、紅姫は速攻で仕掛けた。
「私は蝶のように舞!!!」
紅姫はステップを踏んでマランを惑わせた。
「想像以上に速い! 風強化防御!!!」
マランは自身の体に風を纏わせ、防御力を上げた。
「蜂のように刺す!!!」
紅姫は強烈な一撃をマランに叩き込んだ。
マランは両手で紅姫の攻撃を防いだが、彼女のパンチの威力が高く後方へ吹き飛ばされ、リングのロープに当たった。
「いってぇ!!! やべぇ、こんなのモロでくらったら死ぬ! 確実に死ぬ!!!」
「あら? 耐え切りましたわ! それなら、もっと強くてもいいですわね!」
紅姫はマランに防がせるとは考えていなかったので、紅姫は嬉しさのあまり笑っていた。
マランは体勢を立て直し、紅姫に勝つ為の作戦を実行した。それは、紅姫の足を攻撃して転ばせる作戦である。やはり、好きな人を殴ると言う行為が嫌だったマランは転ばせるぐらいならまだ良心が痛まないと考えた結果であった。
「紅姫さん! 次は俺の番です!!!」
「いつでも私の番ですのよ!」
紅姫はマランにまた近付くとフックを入れようとした。
マランは紅姫のフックを交わし、紅姫の足に自身の足を引っ掛けて転ばせようとしたが、紅姫の足はびくともしなかった。
「岩みたいに硬い!!!」
「あら、女性に向かって岩とは失礼な方ですわ!」
紅姫はマランにクロスを打ち、マランは慌てて身を屈めて回避した。
紅姫のクロスの風圧が観客席まで行き、虫達は吹き飛ばされると覚悟した時、ある男の声か高らかに聞こえると共に結界によって観客にいた虫達は助かったのであった。
男はリングに飛び込んだ。
「ふはははは!!! とう! 俺様登場!!! アに捕まっている間にこんな面白い事が行われているとは! 何故、俺様が呼ばれないんだ!」
「あちゃ、氷月の存在忘れてた。氷月! こっちにきなさい!」
「妻よどうした?」
氷月は主人様に呼ばれリングから降りて彼女の元へ向かった。
「観客を守ってくれてありがとう。でも、紅姫の邪魔しちゃダメよ。後であのリング使って遊んでいいから、ここで私と一緒に鑑賞しましょう」
「妻が俺様を誘ってくれているだと! やっと、俺様の魅力に気付いてくれたのだな!!! よし! 俺様と一緒にあの男の勇士を見届けようじゃないか!」
氷月が途中参加したが、主人様の機転により氷月は大人しくなった。
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