マラン、紅姫と闘う 準備編
矢文を送り10日後、マランは魔蟲の洞窟に向かう為にシェーフの力で空を飛んでいた。
「シェーフ! きちんと俺の手紙送ってくれたんだよな!」
マランは薔薇の花束を散らさないように大切に抱えていた。
『送ったって言ってるじゃない。あれ? なんか、あそこ辺ね? マランあれはなんだと思う?』
マランはシェーフが指差す方向を見た。
シェーフが指差した方向には魔蟲の森の荒野にリング場が建設されていた。が、マランにはそれがどのような施設なのかは分かっていなかった。
「シェーフ、近くで見てみるか?」
『なんか、面白そうだしいいわね!』
シェーフはリング場に進路を変更した。
2人はリング場に着くと、蜘蛛達がマランを取り囲み一斉に糸を発射してマランを拘束した。
「急に何するんだよ!」
「ツカマエタ、ツカマエタ、ショウブ、ショウブ」
「母様に教えなきゃ!」
「主人様にも伝えないとね」
「こいつ、こんな装備で母様に勝てるのかな?」
「精霊も手伝うんじゃない?」
蜘蛛達はそれぞれ話あっていた。そして、マランを横に転ばせ、蜘蛛達はマランの体の下に入り込みマランを何処かへ運び始めた。
『マラン、蜘蛛ちゃん達を攻撃したら紅姫さんに嫌われちゃうわよ』
「分かってるって! なぁ、俺は紅姫さんに用があるんだ。だから、離してくれぇぇええええ!!!」
そして、マランは控え室へと運ばれ、主人様に説明を受けた。
「えーと、その服と薔薇の花束って、もしかしてだけど、マランさん紅姫に結婚を申し込みに来たの?」
「そうなんですよ! 俺、紅姫さんに恋文を送ったと思うんですけど、これは一体どういう状況なんですか!」
「恋文、いや、それがね、紅姫から見せてもらった手紙だと今から貴方を倒しに行きます。マランよりって書かれていたのよ。それを見た紅姫が、これは! 果たし状だ!ってなっちゃって、マランさんと戦う為にこのリング場を作ったのよね」
「俺、紅姫さんと戦うなんて出来ないですよ! 好きな人を攻撃するなんて出来ないです!」
「いやぁ、多分、紅姫はマランさんと戦うのが楽しみで仕方ないみたいでね。もし、マランさんが戦わないってなったら、相当紅姫落ち込むと思うわ」
「俺は彼女を悲しませたくないです」
「それなら、戦うしかないのよ。それに、私はマランさんがこんな手紙送ってくるわけないって思ったから、紅姫にある提案をしたのよ」
「提案ですか?」
「そう、この勝負に勝ったら負けた人を1日言うことを聞かせるってどうって」
「それって、俺が勝てば紅姫さんと一日中イチャイチャしても良いってことですか!?」
「そうよ。でも、マランさんが負けてたとしても、紅姫なら変なことを命令するとは思わないし、多分、お茶会の準備の手伝いとか、外の世界のお話を聴きたいって言ってたわね」
「それじゃあ、俺は勝っても負けても、紅姫さんと一緒にいれるってことですよね!」
「そう言うこと、私は貴方にチャンスを与えたかったのよ。玉砕するのは目に見えてるけど、告白するチャンスすらないのは可哀想だからね」
「あれ? 玉砕って俺が振られるってことですか」
「それじゃあ、明日試合楽しみにしているわ。戦い方は灰土に任せてるから、彼から聞いてね」
「ちょっ、俺がなんで振られる前提! なんですか」
主人さんは部屋から出て行ってしまった。しばらくすると、食事を持った灰土が部屋に入ってきた。
「主人様、彼がまだ拘束されたままじゃないか。マランさん、暴れないでくれよ」
灰土は腕力だけで子蜘蛛達の糸を引きちぎった。
「灰土さんですよね。ありがとうございます」
「そんな事より、マランさんは本当に紅姫様と闘うんだよな? うーん、少しだけ体を触るぞ」
「男に触られたくないです!」
マランは拒絶したが、灰土はマランの筋肉を触った。
「おい、こんな筋肉じゃ紅姫様の一撃即死だぞ。緑癒様がいるから死んでも生き返れるが、これでは、会場を楽しませることは出来ないな」
「会場を楽しませるってどういう?」
「紅姫様はな、この頃パーティーを開いても同じ事ばかりでつまらないと悩んでいたみたいなんだ。俺の所にも来て、何か面白い催し物が無いか聞いてきた時があってな、それで、俺は人間は戦士と戦士を戦わせてそれを観戦する事をしていると言う話を藍介様から聞いたと話したんだ」
「それで、今回俺の手紙が何故か果たし状になっていて、こうなったと」
「そう言う事だな。主人様から聞いたと思うが、今回の戦い方について俺が説明担当になった。でも、その前に腹が減っているだろう。ライネルが作ってくれた唐揚げ弁当だ。藍介様の唐揚げにはまだ及ばないが、なかなか美味いぞ」
「ありがとうございます」
マランは唐揚げ弁当を食べ、食べ終わったあと灰土の説明を受けたのであった。
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