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灰土の焦り

 灰土は日々筋力鍛錬を行っている。そして、普段と変わらずその日も灰土は一人で鍛錬を行っていた。


「主人様をお守りするには、俺が強くならなければ!」


 灰土は独り言を呟きながら、森の外周を全力疾走していた。そして、ふと、自分だけライバル達との差が浮かんだ。


「そういえば、俺は主人様とキスをしたことは一度もないよな」


「紫水、緑癒様はラヒートさんを助ける際主人様の魔力が必要でキスを。藍介様は花茶ちゃんがキスしたことあるよ言っていたし、イデアさんとも主人様はキスをしたと。待てよ、俺だけキスしたことないじゃないか!!!!」


 灰土は衝撃的な事実に直面し、脚を止めた。


「どうすれば、俺は主人様とキスができるんだ?」


 急に心が焦り出し居ても立っても居られなくなり、灰土は魔力の羽を羽ばたかせ主人様の家に飛んで行った。


 庭へ着き灰土は主人様に会おうとしたが、灰土は一旦冷静になって考えた。


「待てよ。俺は何をしているんだ。鍛錬の途中ではないか。でも、主人様とキスをしてみたい。だが、どうやれば主人様とキスが出来るんだ?」


「灰土〜。俺〜、聞いちゃった〜。灰土も〜、主人様とキス〜♡ がしたいんだね〜」


 庭で寝ていた紫水が灰土の独り言を聞いてしまった。


「寄りにもよって一番面倒なやつに聞かれてしまったな」


「一番面倒って俺の事〜? 仕方ないな〜。一度もキスをしたことのない〜、灰土に〜、一度だけチャンスをあげるよ〜。今日だけ〜、主人様に灰土がキスしても〜、俺は暴れないであげるね〜」


「今日だけって明日キスした場合どうなるんだ」


「俺は怒りに任せて〜、暴れる〜」


「だから、紫水が一番面倒なんだよな」


「まっ〜、灰土がんばってね〜。俺は八度寝するね〜」


「寝すぎだぞ! この前みたいに鍛錬をしなければせっかく体力が付いたのに意味がなくなるぞ!」


「すぴ〜」


「はぁ。もう寝たか。まぁ、いい! 俺は今日主人様とキスをするぞ!」


 灰土は決心を固め、主人様に会うことにした。


 灰土は庭から居間にあがり、主人様を探し始めた。


 主人様は台所で昼食の準備をしていた。


「今日のお昼は焼き魚で決まりね!」


 灰土は主人様に話しかけようとしたが、なんで話を切り出せばいいのか分からなかった。


「あの、主人様!」


 灰土は緊張のあまり声が裏返ってしまっていた。


「ぷっ、どうしたよ灰土」


 裏返った声が面白かったのか主人様は笑っていた。


「いえ、あの、その、今日は天気がいいですね!」


 何も話題が浮かばず何故か洞窟の中だというのに、天気の話を振ってしまった。


「えーと、私は外を見に行ってないから天気がどうなのかは分からないわ。ごめんなさいね」


「いえ、申し訳ございません! 俺は」


 灰土は主人様の唇を見て、灰土は赤面した。


「灰土、どうしたの? いつもの灰土らしくないわね? あっ! もしかして、紫水になんか言われた?」


 主人様が灰土の顔を覗き込み、灰土と目が合った瞬間、灰土は顔を隠してしまった。


「いや、その、紫水には何も、言われてま、せん!」


「絶対に紫水になんか言われたのね。確か、紫水は庭で寝ているはず。紫水! 灰土に何言ったの!!!」


 主人様は紫水を起こしに庭へ向かった。


「あっ、紫水は関係、ない!」


 灰土は主人様の後を追ったが、主人様は紫水を起こしとっちめていた。


「ふぁああ〜。俺は何もしてないって〜。主人様〜、誤解してるよ〜。俺は〜ここでお昼寝してただけだよ〜」


「この前、灰土の訓練のお返しをしたいとか言ってたじゃない! さぁ! 灰土に変なことを言ったんでしょ! 観念して吐きなさい!」


「主人様〜。俺は本当に今日は何もしてないってば〜」


「今日は? それじゃあ、他の日は何かする予定があったのよね? 紫水、悪いことをしたら、黄結姫の代わりに紫水を怒らないとね」


「ひぇええええええ〜。俺は何もしてないってば〜」


「主人様! 紫水は何も悪くないです!」


 灰土は主人様から紫水を助けた。


「じゃあ、なんで灰土の挙動がおかしいのよ」


「それは〜、本人の口から聞いた方がいいと思うよ〜。それじゃあ〜、ふぁ〜あ〜あ〜。俺は〜もう一回寝る〜」


「おい、紫水、九度寝はどうかと思うぞ!」


「すぴ〜」


 紫水は友達のために気を効かして眠りについた。


「また寝たか」


「で、灰土は私になんのようなの?」


「それは、あ、あ」


 灰土は緊張して身体中から嫌な汗をかきはじめた。


 顔が真っ赤になった灰土を見て主人様は悟った。


「灰土、そうよね。あなた1人だけいつも大変なことを任せっきりにさせちゃって、休ませてあげてなかったわね」


 主人様は灰土の額に手を当てた。


 灰土の体は急なボディタッチによって固まってしまった。


「やっぱりね。灰土! 布団敷くから横になりなさい!」


「あ、あ、あ、あば、あば、ば、ふ、と、ん、よこ、あ、ばぁ、ばあ、ばはばぁ!?!?!?」


 灰土の頭の中には主人様との交尾を考え、余計顔が真っ赤になり、主人様の手を引かれながら、恐る恐る布団に横になった。


 まずい、まさか、主人様が、俺と、交尾をしたいとは!!! キスよりも、その先へ進んでしまうなんて、俺はどうすればいいんだ! その、交尾は何をすれば、主人様には俺との交尾を喜んでもらいたい。だが、俺はまだ一度もそういうことを経験したことがない。いや、本能に任せれば、出来る! 主人様を押し潰さないようにしなければ、主人様に負担にならないように、力加減をして、あ、あ、主人様と交尾! 紫水、すまないな。俺はキスよりも先へ進ませてもらう?


 主人様は灰土に布団を被せ、灰土の額に濡れタオルをのせた。そして、白い棒を灰土の脇に挟んだ。


「あの、主人様、これは一体?」


「灰土疲れちゃったのよね。少しだけじっとしていて」


「はい」


 すると、ピピピッと脇から音が鳴ると主人様は灰土の傍に挟んだ白い棒を取り出した。


「38度2分やっぱり、熱があるじゃない。灰土、今日はここでゆっくりしているのよ」


「熱? 俺は元気ですか」


「何言っているのよ。体温計で測ったんだから熱があるのよ。今日一日灰土はここで休んでなさい! 私はお昼ご飯まで作ってくるから寝ててね」


 主人様が部屋から出ようとしたので、灰土は追いかけようとした。


「あの、俺との」


「休んでなさい!」


 そして、灰土は一日、主人様に介抱されたのでした。その次の日、灰土は紫水に笑われ、笑われた腹いせに紫水を強制的に布団から連れ出し、森を走らせたのでした。


「なぁんでぇ〜。俺〜、何もしてないじゃん〜!!!」

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― 新着の感想 ―
誰でもそういう場面になるとテンパってしまうんですよね(笑) 次のチャンスはあるのかな? ……このムカデさん、「三年寝太郎」になるの?
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