計画は順調に進む
「その、藍介様、掃除機を私はまだ見ていませんが、見せてもらうことはできますか?」
「はい、いいですよ」
私は腕時計から木製の掃除機を取り出した。
「木でできいるとは! ちょっと、使ってみても?」
「どうぞ、どうぞ。そこのボタンを押せば動きますよ」
スミスさんは子供のようにはしゃぎながら掃除機で床の埃を吸わせ始めた。
「エレガント! エレガント! こんなにも埃が無くなるとは!」
「主人様の家にあったやつも使いやすかったんですよね。あと、自動で動く掃除機もあると主人様に聞きました」
「それだ! 貴族達に販売するのは自動掃除機にすればいいのか! 黄結! ナイスです!」
私は黄結姫さんに向かってグッと親指をたてました。
「お役に立ててよかったです! 主人様にお役に立てたことを報告しなきゃ!」
「自動? それって、僕が触らなくても勝手に動いて掃除してくれるって事なの?」
「そうですとも。まだ、自動掃除機は作ったことがありませんが、主人様なら作れますし、それを量産するには、その構造を紐解かないといけませんが。私1人だと時間が掛かりますが、魔道具技師の天才テンサーさんがいます。それに、店に関してはスミスさんが管理してもらえれば、魔道具制作に集中できるようになりますよ」
「はい、私であれば店をエレガントに運営することができます。今からでも店に戻り、合併手続きを進めたいですね」
「その前に、私がやりたいことを擦り合わせるためにもう一度、全て話させていただきますね」
私はもう一度計画の全てを2人に話し、私達は本格的に行動を始めました。
私は魔道具技師の資格とテンサーさんと一緒に主人様が作って送ってくれた自動掃除機を分解して構造を把握、そして、製作図を作成作業をして、スミスさんは合併手続きとテンサーさんが掴んだ禁足地の所有権を持つ貴族との交渉をお願いしました。
そして、私は2ヶ月後、見事魔道具技師を合格しました。1次試験の筆記試験は満点、2次試験も自動掃除機で余裕で合格し、3次の面接では、いや、そもそも、資格取得なのにどうして面接なんかあるのかよく分からないのですが、簡単に合格をして、テンサーさん以来の天才が現れたと魔道具技師の界隈で有名となりました。
その間に、資金調達のために主人様に灰土さんの宝石を送ってもらい。スミスさんとテンサーさんの宝石職人の手によって美しい宝飾品に加工し、スミスさんと私が貴族達に販売し、資金調達は順調で進み、スラム街買う資金にはまだ足りませんが、それでも、この勢いなら半年で目標金額まで達成する事ができそうです。
そして、私はスミスさんと2人でとある子爵家に向かって馬車で移動していました。
「黄結さんは連れてこなかったのですね」
「彼女を連れていくと貴族の男が面倒な事を言ってきますからね。それに、令嬢相手なら、女性が側にいない方が簡単に事が進みますから」
「今じゃ、私よりも藍介様の方が人気が高いですからね」
「そんな事ないですって、そもそも、私には心を決めた方がいるのですから、有象無象に言い寄られても私の心は無! ですからね。せっかく、結婚指輪はめているのに全く効力が無いなんて驚きましたよ」
私は私の髪の色と同じのサファイアが嵌め込まれた指輪を触った。
「貴族達は不倫が流行ってますから、仕方ないのだと思いますよ」
「不倫ですか、私を不倫相手にしようとするのはやめてもらいたいものですね。そのせいで、この前テンサーさんが血の涙を流し私を呪ってやるとか言って襲いかかってきましたからね」
「藍介様、急に有名になると良からぬ輩が貴方に近づこうしてきます。藍介様なら大丈夫かと思いますが、絶対に弱みを見せてはいけませんよ。私も一度そのせいで男爵の令嬢と婚姻されかけて大変でしたから」
「はい、私があんな奴らに弱みなんて見せませんよ。はぁー、モテるのも面倒なものですね」
「そうです。女性関係ほど面倒な事はないですからね。まだ、面倒なクレーム対応の方が気が楽です」
「そうですね。でも、確かこの前のクレームでは令嬢がスミスさんの子を妊娠したから店を寄越せって喚き散らした子爵家がいましたっけ?」
「彼女の体に一度も触れていないのにこんな言われようをされて屈辱でした。でも、一番可哀想なのはあの女の嘘を鵜呑みにしてしまった父親ですね」
「あれは、可哀想でした。娘を溺愛していたのに、その娘に騙されていたとは、親として傷付きますよね」
すると、御者がもうそろそろ目的地に着くと話してくれました。
「もうそろそろですね。ケレス子爵婦人はアメジストが好きでして、今回もアメジストを使った宝飾品を購入予定です。彼女の娘のソフィア嬢は藍介様狙いですね」
「やめてくださいよ。余計行くのが気が重くなるじゃないですか」
「藍介様のその美貌で令嬢達にバンバン宝飾品を売りつけてくださいね」
「くそぉ、どうして一度も見たことのない人に指名されるのが不思議でなりませんよ!」
「たしか、私の調べでは、藍介様がコレアン伯爵のパーティーに参加した事をきっかけに令嬢たちの人気が急上昇しましたね」
「はぁー優しくするんじゃなかったです」
「藍介様、嘆くのは後にして、仕事を始めますよ」
「分かってますとも、それじゃあ、荒稼ぎさせていただきますか! でも、子爵ですから、それほど高い利益を生み出せるかは疑問ですね」
「この家は大丈夫です。金貨100枚の利益は必ず出せますよ」
「はぁ、まぁ、頑張ります」
私とスミスさんは馬車から降り、ケレス子爵の屋敷へ足を踏み入れたのでした。
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