冷静になった二人
2人の喧嘩を止めようと髪を作った黄結姫さん、黄結姫さんの美しい黄色の髪によって全身を拘束されたスミスさんとテンサーさんと傍観していた私。そして、ガメツイさんはあんだけ罵り合いをしたのですから喉も乾くのでお茶でも持ってきますと台所へ向かいっていた。
「ママどうして、僕まで拘束するの!」
「これは、一体!」
「2人とも喧嘩するのはいいですが、貶し合うのは違います。主人様でしたら、このように2人を止めると思うので、少し苦しいと思いますが、反省するまでこの状態ですからね」
スミスさんは拘束を緩めようと動いたが、逆に自分の髪の拘束力が強くなった。
「くっ、少し動くと服が、破れる」
テンサーさんは涙目というか、彼女に許されようと嘘泣きをしていました。
「ごめんなさーい! ママ喧嘩してごめんなさーい」
「そもそも、スミス様、子供相手に酷いことを言うのはダメですよ。それに、テンサー様もテンサー様です。相手が怒ると分かっていながら彼を煽りましたね。言っちゃいけないことぐらい分かるでしょ」
「まぁーまぁーごめんなさい」
「私に謝るのでは無く、スミス様に暴言を言ったことを謝りなさい! スミス様もテンサー様が嫌がることを言ったのですから、謝ってください!」
2人は黄結姫の説教を受け、渋々謝ったのでした。
2人が拘束から解放され、やっと当初の話し合いを始めることにしました。
「それでは、色々とありましたが、これからの計画の話し合いをしていきたいと思います」
「藍介、僕はコイツが参加するのは反対だ」
「テンサー様はそれしか言えないのですかね」
「なんだと!」
「私は藍介様から道中少しだけお話を聴きましたが、なんて、エレガントな計画! 私も一枚噛ませてもらいたいと思いました。それに、私がいれば店を急成長させる事も簡単、そして、私は私の店スミスエレガントとテンサー様の店、アイデニアと合併を希望します」
「ちょっ! 僕の店は渡さないぞ!」
「アイデニアの強みはテンサー様の魔道具技師としての知名度に寄るものであり、エレガントな魔道具を製造、販売をしていますが、テンサー様が作った魔道具の希少性の高さから、貴族さえも簡単には手を出せない価格になっています」
「そりゃあ、当然さ、魔石の高騰によって価格が上がるのは当然だろ。まぁ、君なら僕の店に入った時から僕の作品が飾られていないのは分かってるんじゃないかな」
「えぇ、私はあなたに嫌われてからというもの店に入ることも出来ませんでしたからね。私が訪れた時は貴方様の作品が棚に並べられ、それは、もう、エレガントな光景でした。が、今は、弟子達の魔道具を自身が作った魔道具だと偽り販売するのはどうかと思うのですかね。それに、貴方様は商人は向いてません。商人とは信頼が重要なのです。なのに、先ほど申し上げましたが、自身の作品と偽り他人の作品を高値で売るのは商人として失格ですね」
「そんなことないさ、商人とは狡猾であるべきさ、信頼なんて簡単に崩れてしまう。それにね、僕の作品のファンとか言って僕の印の付いた弟子たちの作品を褒めるような馬鹿達なんかに、僕の作品を買わせるわけないだろ。騙される方が悪いんだよ。それに、そのおかげで僕の弟子の懐が潤うんだからいいだろ。今じゃ魔石の高騰に苦しまされている駆け出しの魔道具技師達が大勢いる。そして、貴族達は生活を豊かにする為の魔道具を高価な鑑賞品として買い漁り、知名度がなく無名の技師だが、僕にはないアイデアを元に作った作品を評価すらしない。そんなの不公平じゃないか」
「だから、って騙すのはどうかと」
「いいんだよ。魔道具の性能は魔力消費が僕が作った魔道具よりも早く消費されるだけで、僕の作品であっても魔力切れを起こすんだから。違いは少し早く魔力が無くなるだけなんだから。そもそも、あいつらは買って満足して棚に並べるだけさ。使うのはごく一部の魔道具の価値を知ってるいる者だけさ」
「あの、テンサーさんはどうして貴族の方は魔道具を使わないと断言するのですか? 折角高値で買った魔道具なら使うのが普通ではないですか?」
「何言ってるんだ、あいつらはただの収集するだけで使おうとしない。貴族は使う必要がないからさだって、屋敷には使用人が沢山いる。そいつらが掃除をして、料理をして、生活に必要な全てを任せている。だから、貴族には魔道具を使って生活を楽にしようとはしないんだ」
「もったいないですね」
「あと、それだ。もったいない。僕の作品は高いさ、そりゃあ、僕の作品を安く売るなんて、僕にはできない。だけど、そのせいで、希少性が上がり使うのはもったいない。それなら、客人に自慢するための装飾品という発想になるんだよね」
「高すぎるが故の末路と言った所ですが、だから、テンサーさんの印を付けて売っていると言うわけですね」
「そういう事、しかも、貴族が騙されたことを知っても、誰も騙されたことを話そうとはしないからね。だって、お高いプライドが傷ついちゃうもん。それに、僕が君たちを試したと言えばいいだけさ。僕にはそれだけの権力、そして、知名度もあるからね」
「うーん。話には聞いていましたが、改めて聴くと私がこれから販売する掃除機が通用するか心配になってきましたね。この魔道具は使って貰ってこそ真価をはっきしますから。貴族の方達にはもっと、こう、使ってみたいと思わせるアイデアを足さなければ、主人様に後で聞いてみますか。それで、スミスさんの提案である合併ですが、アイデニアの方にスミスエレガントが吸収合併される方向でよろしいですか?」
「え? 僕の店じゃなくて、スミスエレガントが、無くなるのか?」
「それで、構いません。知名度的にアイデニアの方が上ですし、藍介様の魔道具を安く、広い世帯に売るためにも、私の人脈を使えば、支店をあらゆる町に増やすことができます。それに、従業員の質では私の店の方が遥かに上ですからね!」
「まぁ、それは、一理あるな」
「失礼します。お話に熱中するのはよろしいですが、少しだけ休憩してもよろしいのではないでしょうか。丁度クッキーを焼いたので皆さんで召し上がってください」
ガメツイさんの美味しいクッキーを食べ、少しだけ私達は休憩をしたのでした。
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