モテる男は大嫌いさ!
私はテンサーさんの店に着くと、ガメツイさんがテンサーさんの工房まで案内してくれました。
そして、黄結姫は私の隣でお茶を飲むことに専念してもらい。テンサーさんと話し合いが始まったのでした。
テンサーさん私と黄結姫、そして、私の妻として主人様の戸籍を取得し、禁足地を買い取る準備も終えていました。
「テンサーさん凄いですね。たった7日しかたっていないのに、ここまで事が進むなんて考えていませんでした」
「僕は天才だからね! それに、僕の顔は広いんだぞ! 優秀な僕をもっと褒めてくれ! 僕は褒めると伸びるタイプなんだ」
「禁足地を買収するにはかなりの金が必要になると思うのですが、その資金は何処から捻出するのですか?」
「それは、簡単さ、僕のコレクションを一個だけ国に売ればいいたけさ、僕は君の為に大切なコレクションを売りに出すんだから、僕を楽しませてくれ!」
「ありがとうございます。その分こちらは、魔石を無償で提供させていだたきます」
「ふぇ!? えっ!? いや、無償で提供って本当に言ってるの?」
「はい、ここまでしてもらったのですから、そのぐらいはしないと示しがつきませんからね」
「それなら、君の奥さんの魔石を貰えるんなら嬉しいな。それで、僕の話はこのぐらいだけど、藍介は僕に何か話すことはある?」
「えぇ、新たな仲間増やしたいと考え、スミスエレガントの店主、スミスさんにも私の身の上話をして無理やり味方になって貰いました」
「うわっ、最悪、手を組むんだったらもっと他の奴がいなかったの?」
「おや? スミスさんをご存知なのですか?」
「そりゃあ、僕の店と同等の店だからね。知っていて当然さ、それに、僕はあいつが気に食わないんだ」
「どうして、気に食わないのですか? テンサーさんなら彼の商才を高く評価していると思うのですか」
「そこは、僕よりも天才、というより、彼の努力を評価しているさ、でもね。僕には許さない事があるんだ」
「それは、なんでしょうか?」
「あいつ、物凄くモテるだろ」
「モテる?」
「あー!そうさ! あいつはあのムカつく顔で女に優しく声をかけるだけでバンバン商品を売ることがでるんだぞ! 羨ましい! ましてや、貴族のパーティー引っ張りだこじゃないか! それで、貴族の令嬢とあんなことやこんなことの噂がでたり、してさ、羨ましい! いや、羨ましくないさ、あいつは目利きだけは優れているが、手先は不器用だからね! 僕みたいに素晴らしい魔道具を制作することは出来ないし、あいつ! 女にモテるくせに、私にはまだ一生を共に過ごす女性が現れていないのです。って、言ってもう36なのに童貞なんだぞ!!! あいつアソコついてないじゃないか!」
「後半はただの悪口じゃないですか。勝手に人のデリケートな部分を暴露するのはどうかと思います。どうして、彼を評価しているのに彼を嫌っているのですかね?」
「さっきの話聞いてた? 僕はね、あのイケメン面が大っ嫌いなんだよ! 僕はね、女にモテる奴はみんな嫌いなんだ!」
「それでしたら、藍介さんもここへくる途中の村の女性から告白をされていましたよ。えーと、ざっと、10人ぐらいに告白されていましたね。ガメツイさん、前のクッキーも美味しかったですけど、今日のクッキーも美味しいですね」
黙ってお茶を飲んでいた黄結姫はテンサーにとっての特大の地雷を見事に踏み抜いたのであった。
「なっ! 黄結! この流れでそれを言うのはダメですって!」
「なぁぁぁんだどぉぉおおおお!!! 藍介もアイツみたいに女にモテるんだ! 妻がいるのにモテていいよな! くそっ、僕だってもっと身長があれば、女性にモテる事だって出来たのに、くそっ、僕はいつになったらモテるんだ!!!」
テンサーはソファーに置いてあるクッションに顔を埋め泣き出していた。
「坊ちゃん、いえ、坊ちゃま、女性にモテずに寂しい気持ちもわかりますが、いずれ坊ちゃまにも最愛の女性が現れる筈です。ですから、お気を落とさず、もう、いい歳なんですから子供みたいに泣かないでください。泣きたいのなら、男は漢らしく、豪快に泣けばいいのです」
「ガメツイさん、励まそうとしているのは分かるのですが、逆効果だと」
「子供だって!!! 僕だって、この姿のせいで女性から可愛らしいわね、とか、この服着てみてと女性服を渡された時の僕の気持ち分からないだろ! 僕はね! 騎士みたいなカッコいい男になりたかったのさ!!!」
テンサーはクッションをガメツイに投げた。
「おや、逆効果でしたね」
ガメツイはクッションをキャッチするとソファーに戻した。
「もう、僕は誰とも口を聞きたくないから帰った! 帰った! ガメツイも奥さんの元へ帰っちゃえ!」
「坊ちゃま、そんな事を仰らず」
「ふんだ! 今日はもうお開き! さぁ! 帰った! 帰った!」
テンサーはガメツイと藍介を部屋の外へ追い出した。が、黄結姫はまだお茶を楽しんでいたので、彼女が飲み終わるまで部屋から追い出すのを待つことにした。
「あら、あら、テンサー様そんなに怒ってどうしたのですか?」
「だって、僕、カッコよくないし、どうせ! モテたことないもん!!!」
テンサーはソファーに置かれていたクッションに顔を押し付けてソファーに寝転がった。
黄結姫はお茶を飲み終えると、テンサーの頭を撫でてあげた。
「私はよく地面に突起物や小さな石が無いのに転んでしまうのですよね。そのせいで、私が歩く度に息子が転ばないかと心配をかけさせちゃって、母親として申し訳ないと思っちゃうのですよ。それに、私、メイドとして働こうとメイドとしての心得を教わったのですが、皿洗いがどうも苦手で、お皿を割り続けて主人様にお皿100枚無いとお皿が使いたい時に使えないわと言われたり、この長い髪が絡まって動けなくなったりして、私周りの人に迷惑をかけちゃっているんです」
「黄結の話が真実なら、黄結はメイド向いてないんじゃないの」
「えぇ、向いてないと私でも分かっているんです。でも、誰かの為にお仕事をしたい。だから、身の回りのお世話をできる仕事。メイドになりたいのです」
「それで、黄結は僕に何が言いたいのさ!」
「いえ、私の話を一度もしなかったなと思いまして、藍介様の惚気話を聞くのもいいですが、テンサー様には私達の仲間として、私の事を知っておいて欲しいと考えました」
「ふん! 黄結の話しもう少しだけ聞いてあげるから、頭撫でるの止めないで」
「えぇ、いいですよ。ふふふ、私の息子はですね。とっても賢くて」
黄結姫はテンサーのフワフワの髪を撫で、自分の話を聞かせたのでした。
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