魔道具宝飾店『スミスエレガント』 後半
「おや、藍介様、今日も魔石を売りに来たのでしょうか? お売りしていただいた魔石は魔道具技師の方が買っていってくださったのですが、あの、よろしければ、藍介様はまだ魔石があるのでしたら、うちの方で他の魔石も買い取らせていただけないでしょうか。もちろん、藍介様の言い値で買い取らせてもらいます」
「その提案は嬉しい限りです。ですが、今日はアメジストとサファイアを売りに来ました」
「今日は宝石なのですね。それでは、奥の部屋にどうぞ」
スミスは店の応接室に藍介を招くと、その部屋に机を挟んでソファーが置かれていて、向かい合うようにソファーに座った。
「アンナ、お茶のご用意を」
「かしこまりました」
1人のメイドがお茶の準備のために部屋から退出した。
「それで、今日の商品はなんでしょうか!!! 藍介様が持ってくる商品は品質が高く、査定するのが楽しくて、藍介様が来てくださるのを首を長くして待っているのですよ」
「それでしたら、今日は魔石ではないのでガッカリさせてしまうかもしれませんね」
「いえ! 宝石も嬉しい限りです! 是非とも拝見したいです」
「それでは、こちらです」
藍介は懐から手のひらサイズのアメジストとサファイアを取り出した。
「なんと! エレガント!!! エレガント過ぎる!」
「それで、この2つの宝石はいくらぐらいになりますかね?」
「お待ちください」
スミスはルーペと同じ役割をする魔道具をポッケから取り出すと、アメジストとサファイアの状態を確認をした。
そして、アンナと呼ばれたメイドがお茶を出した。黄結姫は商談とか良く分からないので、そういう事は藍介に任せて、お茶を飲んでフカフカのソファーでゆっくりと寛いでいた。その主人と同じソファーで座っている黄結姫を見たメイドは、彼女は何故メイドなのに寛いでいるのか疑問に思ったが、アンナは彼女には何も言わずに部屋から退出した。
「エレガント! エレガント!!! 藍介様、こちらを私の店に本当にお売りしてくれるのですか!」
「はい、ちょっと溜まったお金が欲しくて故郷から持ってきた宝石を手放すのは少し寂しくなりますが、スミスさんの店であれば、2つの宝石をより美しく世に出してくれると思います」
「かしこまりました。藍介様にこれほど信頼されているとは嬉しい限りです。ですが、一つだけお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ええ、いいですとも」
「藍介様の故郷はどちらなのでしょうか? これほどの宝石が取れる鉱山は3つほどしか浮かばず。でも、そこの鉱山は貴族の方がもう所有済みなので、これほどの宝石を貴族が黙って見過ごす訳がないのですよ」
「スミスさんは口外しないと誓ってくれますか?」
「そういうと、これは、盗品なのですか?」
「いいえ、違います。これは私の故郷で取れた宝石ですが、特殊な場所にある為あまり私の故郷の場所を言いたくないのですよ。だから、スミスさんが知りたいのでしたら、口外しないとこの契約書にサインをお願いしたいのです」
藍介は腕時計から一枚の紙を取り出した。
「私は商人としてお客様の情報を漏らすことなど絶対に致しません! 契約書にサインさせていただきます。それと、ずっと、気になっていたのですが、その魔道具にはもしかして、アイテムボックスの機能があるのですか?」
「えぇ、妻が私に作ってくれた物です」
「藍介様の奥様もエレガントな魔道具技師なのですね!」
スミスは藍介から貰った契約書を一通り読み、サインを書いた。
「ありがとうございます。それでは、この時を持ってスミスさんも私の協力者ということになりましたね。それでは、スミスさんにお話をしましょう」
藍介はお昼になるギリギリまでスミスに自身の事を話した。
「さっきの話を口外した場合貴方は死んでしまいますので、誰にも話さないでくださいね。それでは、私はこの後予定があるので失礼します。それと、アメジストは貴方にプレゼントにします。さっき提示されたサファイアで売らせていただきますね」
「あっ、はい! それでしたら、サファイアは金貨15枚と銀貨35枚でよろしいでしょうか」
「よろしくお願いします」
「かしこまりました。すぐにご用意をさせていただきます」
そして、藍介が店から出てテンサーの元へ向かった。
スミスは店を従業員に任せ、1人自室に向かった。
「まさか、藍介様が、禁足地出身だとは思いもしませんてました。あそこに村など無いと思っていたのに、藍介様はSランク冒険者レベルの魔力量。あの地で暮らす者たちは強い者いや、強くないと生きていけない環境だという事。藍介様のメイドも相当な力を感じました。なのになぜ、私の鑑定眼には通常の人間と同じステータスしか見れないのか疑問に考えていましたが、まさかの、ステータスを偽造するなんて、ふふふ、はははは!!! 藍介様とはもっと仲良くならないといけませんね。私のこの店のため、いいえ、私が貴族どもよりも巨万の富を得るためにも!」
スミスは藍介からのプレゼントで貰ったアメジストを棚に飾り、保護魔法をかけた。
ブックマーク、評価いただけると嬉しいです。