藍介の計画 後編
「黄結さん、よろしければこちらのクッキーも食べてください」
藍介とテンサーが話が盛り上がっている中、ガメツイは自身で作ったクッキーを持ってきて黄結姫に渡していた。
「ガメツイさんありがとうございます」
「ちょっと! 僕のクッキーまであげないでよね!」
藍介はクッキーを食べた。
「ガメツイさんこのクッキー美味しいですね」
「昨晩の藍介さんの唐揚げ美味しかったのでそのお礼をしたかったのです。お口にあって良かったです」
「で! 藍介! 僕をどうやって納得させるんだ」
「簡単に魔道具が作れると分かれば良いのでしょう。それでしたら、この製作図と魔道具を見てください! てーてっれてーてってー!!!」
藍介は自分で効果音をいいながら、腕時計のアイテムボックスから木で出来たスティック掃除機を取り出した。
「なんだそれ?」
「これは、掃除機と言いまして、埃を簡単に吸い込むことが出来る掃除道具なのです!」
「主人様の家にあるのと少し違いますね?」
「これは、私が自作した掃除機ですので、木材を加工して、動力部に魔石を使用していないのですよ」
「それで、どんな風に動くんだ?」
藍介は掃除機のボタンを押すと、掃除機は動き出し、床の埃を吸い上げていった。
「埃が吸われていく!!!」
藍介の掃除機をみたガメツイは自分も触ってみたいとお願いした。
「藍介様、私も少しだけやってみてもよろしいですか?」
「どうぞ、ガメツイさんでしたら、この掃除機の価値がわかると思いますね」
「それでは、使わせていただきます」
ガメツイは藍介から掃除機を借りた。
「木を使っているのに軽いですね! 私はてっきり重たいとばかり考えていました。それでは、と、ほぉ、ほぉ!ほおおおお!!! 埃が消えていく! ですが、藍介様、この埃はどこに消えたのでしょうか?」
「吸い込んだゴミと埃はここで溜まり、多くなったらここのボタンを押すと、掃除機を分離することが出来るので、ほら、ゴミと埃が溜まっているのが分かりますよね」
藍介は掃除機の真ん中にあるボタンを押して掃除機を分離した。
「取り外せるなんて凄いな! どれどれ、どんな魔法陣が描かれているんだ」
テンサーは掃除機に描かれている魔法陣を簡単に見つけ出して魔法陣を観察し始めた。
「ほう、これが、魔力貯蔵の役割をしていて、こっちが、風魔法を利用しているのか、藍介、魔道具技師の資格いまからあげようか?」
「おや、よろしいのですか?」
「この複数の魔法陣を掛け合わせてある時点で通常の試験の合格ラインなのに、手軽さ、便利さを兼ね備えている。金属を使うのでは無く木材を使うことで材料費を抑えられている。しかも、製作図は特許を申請する前だと誰にも見せないのが普通なのに、僕に見せるなんて凄いね。僕には出来ないよ」
「木材加工を工場で行い、魔法陣を描くのは資格を持つ方を雇い入れ、描いてもらえたら大量生産できると考えています。それに、木材が腐らないように保存魔法を掛ければより長く使えますし、動力である魔力を50入れると毎日使うのであれば2ヶ月は使えると思いますね」
「50で1ヶ月か、そうなると、料金は銀貨1枚ってところかな?」
「いいえ、平民が銀貨1枚も出すかというと難しい所だと思うのですよ。だから、魔力供給は魔導士にお願いするのではなく、魔石の魔力を注入する形を取ろうかと考えています。そうすれば、魔力が低い方でも簡単に魔力を入れられるようになりますし、後々店を増やしていくので、魔力補充は店で補充していくようにしたいですね。そしたら、他の魔道具を作ったとしても同じ形で魔力を補充できるとしたら、長く使い続けることができ、魔力を補充料金を安くすれば、継続的に利益を得る仕組みが確立されます。なので、母体数が多い平民に売り、継続的に使って貰えたら、安定した利益を得ることが出来ます。ですから、平民には安く売るのが理想的であり、一方の貴族に関しては、魔石入りの魔道具をあることによって店での来店頻度を下げると共に、2年か3年での魔石交換にすれば、高くても買うと思うのですよね」
「そうだね。それに、魔石入りだったら平民と区別することができるから、貴族は平民の方の魔道具は買いにくくなり、高い方を買わざる得ない状態になるってことだね」
「まぁ、安い方も買ってもらっても別に構いませんが、貴族としてのプライドが邪魔をするでしょう」
「それな、あいつらは自分で作ったことがないのに、自分が作ったかのように自慢する変な奴らだからね」
「貴方も貴族ではないのですかね」
「僕も一応貴族さ、でもね。僕は根っからの魔道具技師ってことさ」
「それじゃあ、私がやりたい事を納得していただけたでしょうか?」
「まぁ、なんとなくわかったよ。これは、売れると僕も思うだけど、先行投資がかなりの額が必要になるね」
「そこですよね。それでしたら、貴族に対してジュエリーを販売してみますか? 宝石でしたら灰土さんの洞窟に大量に転がっていますから」
「宝石ね、石を加工する腕の良い職人は何人か知っているけど、引き込めるかと言うと難しいな」
「見たこともない宝石があった場合その方は私達に協力してくれると思いますか?」
「見たことない宝石ってどんな宝石なんだい?」
藍介は両手で宝石の大きさを教えた。
「確か、妻が持っていた金剛石はこのぐらいかと」
「そんな、大きなダイヤモンドって実在するの?」
「えぇ、灰土さんの糞なのですが、宝石は宝石ですから」
「え? うんちがダイヤモンド? 藍介、今君が言っていることが僕には理解できないんだけど、本当にそんな大きなダイヤモンドがあるのかい? しかも、うんちのダイヤモンド」
「私の仲間が土を主食としていたので、土の中に入っていた鉱石は全部彼の排泄物として地面に転がっているのですよ。宝石が沢山転がり、うんちのはずなのに綺麗なので、その場所は宝石の輝きで綺麗なんですよね」
「そうなんだ、それで、その宝石を持ってくるのかい? 持ってくるのに時間がかかるだろ?」
「いいえ、主人様に送ってもらうので今持って来れますよ」
「送ってもらうって?」
「黄結、すみませんが主人様に繋げてもらってもよろしいですか?」
「かしこまりました」
藍介は思念伝達を黄結姫の祀念結びを使って主人様に説明した。そして、主人様から藍介の腕時計宛に両手埋まるほどの大きな金剛石が送られてきた。
「嘘だろ、その腕輪、もしかして、神が作ったアーティファクトなのかい!?」
「いいえ、主人様が作ってくれましたから、ん、まぁ、アーティファクトには変わらないですね。何故なら、我等の神が主人様なのですからね!」
「なんだろう、君と出会ってから僕の常識が粉々に砕かれていってるよ。面白いからいいんだけどね!」
すると、ガメツイが話に入ってきた。
「あの、もうそろそろ夕食のお時間になるので、仕事のお話はそこまでにしてもらってもよろしいでしょうか? 坊ちゃんも友達が出来て嬉しいと思いますが、食事はきちんととってもらわないと困ります」
「ガメツイは男だけど、僕の母さんみたいだな。名残惜しいけど、今日はこのぐらいでお開きにしようか。そうそう、君の提案僕は賛成することにするから、明日僕は藍介と黄結の分の戸籍を買ってくるよ。あと、君達の大切な土地を不正に買った馬鹿を調べてみとくね」
「テンサーさんありがとうございます。ガメツイさんもクッキーありがとうございました。美味しかったです」
「いえ、こちらこそ話を折ってしまい申し訳ございません」
「それでは、失礼します。もし、私達に連絡をしたい場合はこちらの水晶を使ってください」
「うわっ! これ相当高いのにいいのかい!?」
「主人様から貰ったものなので、出来れば他の人の目には見えない所で保管して欲しいですね」
「了解、こんな素晴らしい魔道具を貰えるなんて嬉しいよ。大切に保管するね。それで、この水晶に魔力を込めれば君と連絡できるんだね?」
「はい、この腕時計に繋がるようにしてあるので、戸籍を買うことができたら連絡をお願いしたいです」
「分かった! それじゃあ、藍介、黄結、これから僕達は共犯者と言うなの仲間だね!」
「なぜ、犯罪者みたいな言い方なのですかね。協力者の間違いじゃないですかね」
「奴隷制度をぶち壊すんだろ、それなら、この国にとって僕達は悪さ! だから、共犯者! こっちの方がしっくりくるからね!」
「わかりました。私はそれでも良いです。それじゃあ、この後のことはよろしくお願いします。それでは、さようなら」
「じゃあね! 早く戸籍を買ってこの水晶使ってみたい!」
藍介と黄結姫はテンサーの店から出て、オンボロ宿屋に帰ったのでした。
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